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キュルノ
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#学園
キュルノ
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蒼月
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「佐藤、鑑識とキャンパスの防犯カメラ映像、全部押さえろ。講義棟の5階テラスへ通じる廊下、階段、エレベーター……15分前からの映像をコマ送りで洗い直すんだ」「は、はいっ!」
救護室を出た俺は、指示を飛ばしながら講義棟の非常階段を駆け上がっていた。
背後からは、まだ足元がおぼつかないはずの渚が、呼吸を乱しながらも遅れまいとついてくる。
「……渚、無理すんな。お前は下で待ってても——」
「嫌。……現場に行かないと、あの人の『残香』が消えちゃう」
蒼白な顔で、しかしどこまでも冷徹な瞳で俺を見つめ返す渚。
クソッ、三年前と何も変わっちゃいねぇ。この強情さも、土壇場での腹の括り方も。
5階のテラス。
黄色い規制線テープが張り巡らされた現場には、まだ生々しい靴擦れの痕と、手すりに付着したかすかな擦過痕が残っていた。
「……ここだ」
渚が手すりに近づき、そっとその金属の表面に小さな素手をかざす。
触れるか触れないかの距離。その瞬間、渚の肩がぴくっと跳ね、小さな吐息が漏れた。
「……男。身長は175センチ前後……黒いパーカーのフードを被ってた。……落ちていく彼女を見下ろしながら、あいつ……笑ってた」
「笑ってただと……!?」
俺の奥歯がガリッと音を立てた。
突発的な事故でも、パニックになった末の過失でもない。明確な殺意と、狂気を持った殺人だ。
「渚、他に何か見えたか? 服の匂い、持ち物、特徴……どんな些細なことでもいい」
「……高級な甘い香水の匂い。バニラみたいな……ううん、煙草の匂いが混ざった、甘くて重い香水。それと……」
渚がぎゅっと目を閉じ、激しい頭痛に耐えるように額を押さえる。
「……あいつの右耳。シルバーの……スカル(髑髏)のピアスが、二つ並んで揺れてた」
「黒いパーカー、甘い香水、右耳にふたつのスカルピアス……十分だ」
俺は胸ポケットから無線機を引っ張り出した。
「こちら峯岸! 本部、聞こえるか! ホシの特徴が割れた。キャンパス内にまだ潜んでいる可能性が高い! 特長は以下の通りだ——」
無線で手配を打っている最中、階下から野次馬の大学生たちの声が風に乗って聞こえてきた。
『うわ、警察がまた上がっていったよ』
『あの子も一緒じゃん。何なの? 警察にコネでもあるわけ?』
『パパ活おじさんに守られて、事件ごっこ? マジでウケるんだけど』
無神経で、下品な悪意。
俺は無線を打ち切ると、手すり越しに階下を見下ろし、凶悪な笑みを浮かべて見せた。
「……おい佐藤」
階段を駆け上がってきた佐藤が息を弾ませながら「はいッ! 何でしょう先輩!?」と答える。
「キャンパスの出入り口を全部締め切れ。これから学内で『クソ野郎のあぶり出し』を始める。……あいつらが好き勝手言ってる目の前で、本物の悪魔を手錠で繋いで引きずり降ろしてやる」
「了解です! 警務課の応援も呼びます!」
俺は胸ポケットから、火をつけていない煙草を一本引っ張り出し、ガリッと噛み砕いた。
渚の平穏な「普通」を壊し、あいつの身体を再び激痛で苛んだ犯人。
そして、傷ついたあの子を面白半分で嘲笑う世間の無知な雑音。
そのすべてをまとめて叩き潰すために。
「行くぞ、渚。お前の『見たもの』、一文字も無駄にさせねぇからな」
俺の言葉に、渚は小さく、だけど力強く頷いた。
俺たちは血生臭い惨劇の残香を追い、新緑のキャンパスの闇へと足を踏み入れた。
コメント
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第4話、読ませていただきました。事件の緊迫感がすごく伝わってきて、ページをめくる手が止まりませんでした。特に渚が「残香」を辿るシーンは、その能力のリアルさと、彼女自身の痛みが伝わってきてゾッとしました。そして峯岸の「あいつらが好き勝手言ってる目の前で、本物の悪魔を手錠で繋いで引きずり降ろしてやる」という台詞、熱すぎます…! 二人の関係性がどんどん深まっているのが感じられて、次の展開が待ち遠しいです。キュルノさんの描く世界観、一層好きになりました。