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あまおう
73
ホウ酸
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#らっだぁ
れーん🌸
3,770
青かった。
世界が。
空も。
地面も。
建物も。
全部。
青い光に呑まれていた。
誰も近付けない。
人々は逃げ惑う。
回収部隊も距離を取るしかなかった。
「あれが、青鬼か……」
誰かが呟く。
恐怖を隠せない声だった。
光の中心。
らっだぁは立っていた。
肩を震わせながら。
涙を流しながら。
苦しそうに。
呼吸を乱しながら。
何かと戦っているように。
けれど。
その力は止まらない。
どんどん膨れ上がっていく。
白銀の翼が降り立つ。
あの男だった。
風圧で瓦礫が転がる。
周囲の者たちが頭を下げる。
男は青い光を見上げた。
静かに。
冷静に。
まるで予想通りだと言うように。
「見ただろう」
誰へ向けた言葉か。
それはすぐに分かった。
男の視線の先。
空から降りてきた金色の翼。
きょーさんだった。
息を切らしている。
今にも飛び出しそうな顔をしている。
男は言う。
「これが青鬼だ」
轟音。
建物がまた崩れる。
青い光が弾ける。
男は続ける。
「危険だ」
すべてが正しかった。
「だから渡せと言った」
この男の言うことは。
「お前では守れない」
正論だった。
全部。
全部。
正しかった。
だから。
腹が立った。
「……うるさい」
男が眉を動かす。
「きょー」
「うるさい言うとるやろ」
低い声だった。
何百年も従ってきた部下の声ではなかった。
「危険なんは知っとる」
一歩。
前へ出る。
「守れへんかもしれんのも知っとる」
また一歩。
「全部知っとんねん」
青い光が吹き荒れる。
周囲の部隊が慌てる。
「近付くな!」
「危険です!」
誰かが叫ぶ。
けれど。
止まらない。
きょーさんは歩く。
ただ真っ直ぐ。
らっだぁへ。
✦
痛い。
らっだぁには何も見えていなかった。
青い光。
耳鳴り。
割れる音。
遠くで誰かが叫んでいる。
怖い。
苦しい。
止めたい。
でも止まらない。
身体じゃない。
心が壊れそうだった。
その時。
聞こえた。
「らっだぁ!!」
声。
知っている声。
何度も聞いた声。
大好きな声。
らっだぁが顔を上げる。
青い光の向こう。
金色が見えた。
「きょ……」
言葉にならない。
光が暴れる。
地面が裂ける。
きょーさんの身体が吹き飛ばされる。
壁へ叩き付けられる。
鈍い音。
鮮血が飛び散る。
翼が裂ける。
部隊がざわめく。
男も目を細める。
けれど。
きょーさんは立ち上がった。
ふらつきながら。
血を流しながら。
また歩き出す。
「らっだぁ」
呼ぶ。
「らっだぁ」
また。
「らっだぁ」
何度も。
何度も。
何度も。
らっだぁの瞳が揺れる。
どうして。
どうして来たの。
危ないのに。
傷付くのに。
逃げてよ。
そう思うのに。
心のどこかで。
嬉しかった。
どうしようもなく。
嬉しかった。
だから。
もう隠せなかった。
ずっと。
ずっと。
言えなかった言葉。
喉の奥に閉じ込めていた言葉。
やっと、零れ落ちる。
「……きょーさん」
静かだった。
世界が、止まった。
✦
誰も、動かなかった。
部隊も。
男も。
きょーさんも。
ただ。
目を見開いていた。
今。
聞こえた。
確かに。
聞こえた。
「……らっだぁ」
震える声。
きょーさんは笑った。
泣きそうな顔で。
笑った。
「喋れたんか」
その言葉で。
らっだぁの目から涙が溢れる。
青い光が揺らぐ。
弱くなる。
崩れ始める。
まるで。
長い夢から目覚めるように。
けれど。
終わらなかった。
青鬼の力はあまりにも大きすぎた。
抑えきれない。
消えない。
らっだぁの身体が崩れる。
膝から落ちる。
血が滲む。
皮膚が裂ける。
力そのものが身体を壊していた。
「らっだぁ!」
きょーさんが駆ける。
抱き止める。
その瞬間。
残った光が爆ぜた。
轟音。
閃光。
きょーさんの身体も切り裂かれる。
血が舞う。
翼がさらに裂ける。
二人とも地面へ倒れ込んだ。
静寂。
ようやく。
光が消えた。
✦
瓦礫の中。
きょーさんは震える手を伸ばす。
傷だらけだった。
けれど。
まだ動けた。
掌に光が宿る。
堕天使の力。
修復の力。
淡い光が二人を包む。
裂けた皮膚が塞がる。
血が止まる。
痛みが薄れていく。
代償は重い。
それでも。
迷わなかった。
全部。
らっだぁのために使った。
✦
その様子を。
男は黙って見ていた。
長い沈黙。
やがて。
口を開く。
「もう分かっただろう」
静かな声。
「渡せ」
最終通告だった。
瓦礫の中。
きょーさんはらっだぁを抱えたまま。
ゆっくり顔を上げる。
疲れ切った顔。
血に濡れた翼。
それでも。
答えは変わらなかった。
「嫌や」
男が目を閉じる。
きょーさんは続ける。
「渡したない」
それだけだった。
それだけなのに。
何より強かった。
そして。
男は静かに告げる。
「そうか」
その声には。
初めて。
ほんの少しだけ。
悲しみが混じっていた。
NEXT=♡1000
次回最終話です。
コメント
9件
イヤァァァァァァァァァァァァァァ(感動) なんか…なんかギリギリハピエン行きそうでよかった… マジで幸せに一生過ごしてくれ
何故だか泣けてしまった。 代償ってなんだろう、前にも使ってたけど使う量によっても重さは違うのか気になってしまった。続き待ってます🙏🏻
続きが楽しみ(((o(*゚∀゚*)o)))