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今回は 香坂×鳳崎です。

一人称視点は鳳崎です。

(深瀬を失った鳳崎が裏神アジトの屋上にいるシーンです)








俺の名前は鳳崎桔平。

麻薬組織裏神の幹部や。



「…はぁ…」



俺は今屋上に立って、なんも変わりない街の景色を見とる。



「…深瀬…」



深瀬とは、亡くなった俺の相棒や。

同じ幹部であり相棒だった深瀬は、マッドカルテルのファビアンに殺された。俺は死にかけながらも深瀬の仇をとってファビアンを殺したが、まだ俺の心には晴れんものがあった。



「…俺が死んだら…また深瀬に会えるんやろか…」




俺は心のこもってない笑いを浮かべた。こんなん思ったってどうしようもない事はわかっとる。でも、あいつがいない世界が、どうしようもなくおもんないねん…。気がつけば俺の目からは、水が零れよった。




「うっ…うぅ…深瀬…」




その時、屋上の扉がガチャって開いた。振り向いたらそこには裏神の大将、香坂兄やんがおった。俺の顔見て、香坂兄やんはなんか察したんやろう。ゆっくり歩いてきて俺の隣に立った。



香「鳳崎さん、どうしましたか?涙を流すなんて、貴方らしくない。」


いつものように穏やかな笑顔で話しかける。この人はほんまに心ん中が分からへん。



「…別に。目にゴミが入っただけや…。」



香坂兄やんはしばらく黙った後、話し始める。




香「…鳳崎さん、この世界に入ればいつでも誰かが死ぬという覚悟を持たなければなりません。貴方がどれほど深瀬さんと共に時間を過ごし、戦ってきたかは私には分かりませんが、時間というものは待ってくれません。それが裏社会へ足を踏み入れた者の覚悟であり、散っていった者の想いを背負うんです。」




香坂兄やんは淡々と言う。そんくらいわかっとる事やのに、それが今の俺には腹立たしかった。深瀬を失った悲しみも知らんくせに…俺と深瀬がどんだけ一緒に過ごしてきたか知らんくせに…俺の気持ちなんかわからんくせに…!!!!



俺は香坂兄やんの胸ぐらを思い切り掴んだ



「さっきから黙って聞いてりゃ…お前に俺の気持ちなんかわからんくせに!!知ったような口聞くな!!」




「…」



香坂兄やんは無表情でじっと俺を見つめる。




「…そうですね。怒らせてしまったようで申し訳ない。」



いつもと変わらない口調で言ってくる。でもその目の奥には、悲しみが宿っとるように見えた。




そう思った瞬間、香坂兄やんが俺を抱きしめた。




「え…香坂…兄やん…?」



俺を抱きしめた香坂兄やんの目から涙が流れとった。そして気づいた。香坂兄やんも俺と同じ、大事な人を亡くした事を思い出した。

香坂兄やんと同じ元マッドカルテルであり、弟のような存在だったタンタン。そのタンタンはマッドカルテルのジェフ、ダヴィッツに殺された。香坂兄やんにとってタンタンは弟同然であり、タンタンも香坂兄やんの事を慕っとった。忘れとった訳やない。でもこの人は、余りにもそれを感じさせんかった。タンタンの葬儀が終わってからは、いつもと変わらん笑顔で皆に接しよった。



だから分からんかった…香坂兄やんの気持ちが…俺は幹部として近くにおったのに…酷い事言うてもうた…俺は…香坂兄やんを傷つけてしまった…

そう思った瞬間、申し訳なくて、悔しくて涙が溢れる。



俺は嗚咽をはきながら謝罪する。

「すまん…ほんまに…俺、香坂兄やんの気持ち…考えんで…あんたに酷い事言うてもうた…ほんまにすまん…!!!」




香坂兄やんは何も言わず、ただ俺の頭を撫でた。




裏社会は常に死と隣り合わせ

だからといって、仲間の死を受け入れる事は簡単ではない

死というものがどれほど残酷であっても、ここへ足を踏み入れたならばもう後戻りは出来ない

それでも俺は生きる。深瀬が生きたかった分まで生きて、裏社会のテッペンに立ってみせる。俺が深瀬んとこ行った時には、数えきれんくらいの土産話持ってきちゃる。

そう思った瞬間

(鳳崎さん、俺は見とりますよ)

深瀬の声が、聞こえた気がした












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