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「レオ君!レオ君!」
「•••。」
「見て、かわいいよ!」
「•••。 」
リナが話しかけても黒田は一切反応をしなかった。
白石に気を遣わせたこと、後悔しているのだ。
(なんであの時、白石さんはリナと一緒に行けと言ったのかわからない。俺はまた無理をさせたのか?またやってしまったのか?)
何度も何度も同じことを考えてしまう。
アシカのエサコーナーを見ると、顔を緩ませエサをあげている白石が見えた。
(白石さん、なんで•••。)
「レオ君!ちょっと!」
「おっと。」
リナが黒田の服を引っ張る。顔を見れば拗ねているのが一目瞭然だった。
「あのさ、レオ君!今はリナと居るの!わかる?」
「すまないが、俺の本意ではない。」
そして好意を断り続けているのに、一向に諦める気配のないリナも理解できないでいた。
「•••なんで•••。」
その一言でリナがうつ向いてしまった。
「私の方が•••私の方がレオ君の事、ずっと前から好きなのに、なんで!」
「リナ、ちょっと、落ち着け。」
周りの人の視線が集まる。ヒソヒソする声が聞こえる。それに気づいた時、黒田の手が震える。
「だって、だって!」
(ダメだ、ここで己を見失っては。過去の亡霊など•••もう•••やめてくれ•••。)
「あー!見つけたー!探したよー!」
「げ、鬼塚。」
顔がひきつるリナを無視して、2人の間に鬼塚が入ってきた。
「リナちゃん、お兄ちゃんから聞いたよ。」
「だって!レオ君があの子と一緒に!」
「•••すまない、リナ。やはり違うんだ。俺の半身は、彼女なんだ。」
「なんで!」
「好きなんだ。白石さんの事が。だから、お前の気持ちには応えない。」
そう言って黒田は白石の元に向かった。
リナの体から力が抜けた。
長年の想いはここで終わるのかと、茫然としたまた自然と涙が溢れてくる。
「•••あー、黒田、デリカシー•••。ま、仕方ないか。リナちゃん、これ使いなよ。」
そっとハンカチを渡すもリナは受け取らない。視線はずっと去って行った黒田の方向に向けられていた。
「仕方ない妹ちゃんだなぁ。渡辺には内緒だからな。」
そう言って鬼塚はそっとリナの涙を優しく拭いた。
「白石さん!」
「あ、黒田君•••。ごめん、勝手に移動しちゃって。」
あんな現場を見てしまい、なんとも居たたまれずに人がいない場所に移動したのだ。
息を切らしている、かなり探させたのだろう。
「いえ、俺の方こそ、1人にしてすみません。」
「ううん、私がお願いしたんだから、黒田君のせいじゃない。」
そう言った私の顔を黒田君は悲し気に見つめてくる。
「白石さん、教えて下さい。」
ダメだ、目を合わせられない。
「なんでリナの所に俺を行かせたんですか?今日、楽しみじゃなかった?俺だけだった?」
「違う!」
思ったより大きな声が出てしまい、黒田君も私自身も驚いてしまった。
「違うよ。私も楽しみにしてた、けど•••けど•••。」
怖い、自分の醜い感情を知られる事で黒田君との関係を壊してしまうことが。
「•••けど?」
それでも、もう逃げられない。
(•••私、性格悪いのかな•••。)
黒田君がこんな顔をしているのに、私を探してくれて、私を見つけてくれて、安心している自分がいるのだから。
「あんなの見せつけられたら、私、勝てないなって•••。」
どんなに我慢しても私まで涙が出てきてしまう。
そんな私をそっと黒田君の腕が包む。ふわっと香る黒田君の香りは気付けば私を安心させるものになっている。
「勝ち負けじゃないです。時間じゃ、ないんです。」
「黒田君?」
「改めて言わせて。俺は白石さんが好きなんです。初めてあの場所で会った時から、ずっと。初めて女の人を綺麗だと思ったんです。それに こんな俺でも受け入れてくれる、自分の知らない領域の趣味でも否定しないでいてくれる、そんな優しさも持つあなたが好きなんです。 」
黒田君の腕が震えている。
綺麗だなんて初めて言われた。自分の内面を褒められた事もなかった。
「•••私もだよ。」
「!」
「初めは変な人だと思ったけど、一生懸命だし、黒田君の方が優しいと思う。」
「あ、あの、えっと•••じゃあ•••。」
顔を真っ赤にしてモゴモゴとなにかを呟いている。
「黒田君?」
「•••名前、で•••呼んでくれますか?」
「うん!レオ君。」
「お、俺も•••美香、さん•••。」
お互いにぎこちない呼び合いになってしまったが、これから徐々に慣れていくのだろうと思うとニヤニヤしてしまう。
「変、でしたか?」
「ううん、なんだか、幸せだなって。 」
「俺もです。」
そうしてまた2人で笑い合う。
「リナちゃん、お兄ちゃんの研究区切りついたから迎えに来るって。返事してあげたら? 」
「•••。」
帰り道リナは終始無言だ。
鬼塚はどうしていいかわからず困惑している。それに兄から返事がないと追撃も来ている。
「•••なんで来たのよ、鬼塚。」
「心配性なお兄ちゃんに依頼されたからだよ。それに黒田のチャンスを潰させないようにね。」
「なんで!知ってたじゃない!」
「うん。知ってた。黒田がリナちゃんに恋愛感情がないことも知ってた。 」
「!」
「だから黒田が好きな人が出来たって聞いて、俺は嬉しかったんだ。」
「•••最初から、私の味方なんて•••誰もいないんだ•••。 」
「いや、そうでもないんじゃない?」
鬼塚が立ち止まるとリナも一緒に止まった。
「ほら、来た。」
「え。」
その先には渡辺ともう1人、男の子の姿があった。
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