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パーティの人数は5人一組。これは神が決めたとされる塔に入るための絶対条件で、動かす事は出来ない。神はそこについては厳格なルールを定めている。たまに5人ずつ入って塔内で合流して10人パーティでやろうとかする者たちもいるけど、その瞬間に小部屋でも通路でも構わずモンスターが溢れ出して、多勢に無勢と蹂躙されて全員帰らぬ者になったりする。
中で減る方についてはペナルティはない。これは自然な事だからだ。ただ単純に攻略は厳しくなるし、欠けた1人が死んでたなら、次は補充しなければ塔の扉は開かない。つまり補充が見つかるまで攻略はお預けだ。最悪残り物の数合わせのつぎはぎパーティで挑んで全滅なんてのもよくある話だ。
「フウ? お前まで──そんな有名人連れてきてまで。ハハ、仕込みはすごいけど、冗談にも言っていい事と悪い事がだな」
「え? ケン、まだ話ついてないの? てっきりさっさと切り捨てたかと思ってたのに、遅いよ? 寝てたの? 起きてる? おーい!」
「うっせえな、そんなに言わなくても分かってっから。けどせめて朝飯だけは最後に作らせてやろうとよ」
「まあ、こいつの特技でまともなのなんて料理くらいだもんね。今日はホットサンドか〜。ううん、最後のニトご飯はホットサンドかあ!」
え。なにこのフウの振る舞いは。いつもあんなに僕に優しくしてくれるフウ。僕を誘ってくれたフウ。バフも気持ち程度だけで戦えない僕を後ろに隠れてて、と庇ってくれたフウ。それが今。
「ニト、あんたの赤ちゃんの産毛みたいなバフはもうホントに要らないから! それにわたしたち世界最強のパーティなんだよ、最強最速最先端! みんなの注目の的! それが攻略に詰まってる理由なんて考えなくてもわかんじゃん。これまではなんとか庇ってきたけど、もう無理! だからこの間ナイトクラブでダンスしてる時に出会ったエンちゃんを誘ったんだ。そしたら来てくれるって言うから、もう本当に要らないねってなったんだ!」
「お、おい。フウ……何言って?」
「どうせこのまま行ってもニトなんて死ぬだけだし、そしたら私たちも新しいメンバー探さなきゃ塔に入れないなんてなるんだからっ。今代わりの──っていうか、0.1の代わりが100なんておかしな話だけど、エンちゃんが来てくれるっていうから、死ぬ前に追放してやろうって言ったの。わたしが」
え──、決定的な言葉に僕はついに膝から崩れ落ちた。
嘘だろ? 僕の幼馴染フウ。僕に優しくしてくれるフウ。僕のお嫁さんになってくれるかもしれないフウ。
「聞いてる? ニト〜? おーい? もうあんた要らないから! 毎回マリアがバッファーがダメすぎて負担が──って嘆いてるのにゴメンねゴメンねって謝るのも、ガイが魔物たちのヘイトを集めたいのにこいつを庇うのに忙しくて抜けられるってグチってるのにゴメンねゴメンねって謝るのも、ケンが火力が足りねえ、素の火力だけなんて下位のバフ掛かってる奴にも負けるかもとか言ってるのにゴメンねゴメンねって謝るのももう限界。みんなには付き合わせてて本当にゴメンね⁉︎ でももうエンちゃんが来てくれたから! これからはさらに上に行けるよ!」
「ああ、やっとかって感じだな! まあ、フウが謝る姿を見るのも無くなると思うと気が楽にもなるな」
「そうね。いくらパーティ創設者とは言えそこまで背負わなくていいのにって心苦しい想いもしなくていいのね。ご馳走様。料理だけはいつも美味しかったわ」
「エンさんか。これなら50階のボスの攻撃も凌げるだろう。何より1人にばかり張り付かなくてすむ。全体の手数も増えるだろう」
「あわわ……よ、よろしくお願いします! 重ね掛けは最高で30倍まで出来る様になりました! 私もメイスでミノタウロスを瞬殺するくらいには遣えますので!」
「そうなんだよ! ゴッドハンドエンちゃんはバトルもできるんだから! 分かった? もうニトはさっさと消えるしか役に立たないの! 最後くらいはわたし達のストレスをスゥって消してよ! そしたら最高のバフだよ、本当に! ご飯は美味しいけど、クランハウスにはこれから使用人どんどん入れるし。なんせ使えないバッファーのせいで被害も負担も大きくて持ち帰れる戦利品も少なかったのが、これからはそんな心配もないし、何より上階にいけばもっと良いものが手に入るよ!」
「富も! 名声も! 思うがままだな!」
「ああ、これで俺たちのパーティに穴は無くなった」
「そうね。ニトという大穴を埋めるのは並大抵ではなかったけど、その穴が消えてこんな大物が来てくれたなら──パーティの瞬間火力は30倍どころじゃないわね。マイナスからのプラスだもの」
「は、はい! 期待してて下さいよ! たまに聞く寄生ってのは初めて見ましたけどそこまで酷かったんですね! よくもこんなクソステとクソスキルで居座ってましたね! 穀潰しですか、あなたは! けどわたしが入るからにはこれからは最上階までノンストップです! な、なのでニトさんはフウさんのためにも心置きなく辞めて下さいっ!」
「さあ、分かったならさっさと消える! 消えるぅっ!」