「はぁー…疲れたぁ…」
長い一日だった。朝からバラエティの収録、昼からは雑誌の取材が立て続けに数本、そして夜はダンスレッスン。
帰りの車内は、さすがのSnow Manも口数が少なく、心地よい疲労感に満ちていた。
「…なぁ、このお菓子うもぉない?」
「こーじ、さっきからそればっかじゃん」
「やってほんまに美味いんやもん!めめも食う?」
向井康二は、いつも通り明るく振る舞っていた。隣に座る目黒蓮に、カラフルなパッケージのグミを差し出す。
しかし、その笑顔はどこかぎこちなく、声のトーンもほんの少しだけ高い。
その小さな違和感を、目黒は見逃さなかった。
(…なんか、あったな)
詮索はしない。康二が自分で話したくなるまで待つのが、目黒なりの優しさだ。
でも、放っておくこともしない。
目黒は「ん」とだけ言ってグミを一つ受け取ると、自分の耳につけていたイヤホンを片方外し、それをすっと康二の耳にはめてやった。
「え?」
突然のことに驚く康二の耳に、ゆったりとした優しいメロディーの洋楽が流れ込んでくる。
「……。」
康二は何も言わず、されるがままになっていた。
目黒は前を向いたまま、運転席に聞こえないくらいの小さな声で呟く。
「無理して騒がなくてもいいだろ」
「…別に、無理なんかしてへんし」
「ふーん。じゃあ、なんで手、震えてんの」
そう言われて、康二は自分の手元に視線を落とした。膝の上で固く握りしめられていた自分の手を目黒の大きな手がそっと包み込む。
温かくて、少しだけカサついた、安心する手。
その瞬間、張り詰めていた何かが、ぷつりと切れた。
「……今日の収録、全然うまく喋れんくて」
ぽつり、ぽつりと康二が話し始める。周りの期待に応えたいのに、空回ってしまったこと。
関西弁のツッコミが、今日は一度もハマらなかったこと。
焦れば焦るほど、何も出てこなくなったこと。
「俺、おらんでもええんちゃうかなって、ちょっと思った」
弱々しく消えていく声。目黒は黙ってそれを聞いていた。そして、康二の話が途切れると、包んでいた手に少しだけ力を込める。
「…康二がいないSnow Manなんて、俺は考えられないけど?」
静かだけど、揺るぎない声。
それは、どんな慰めの言葉よりも、康二の心に深く染み込んだ。
「……めめ、ずるいわぁ」
鼻をすする音が、静かな車内に小さく響く。
「うるさい」
ぶっきらぼうに返しながらも、目黒の手は康二の手を離そうとはしなかった。
窓の外を流れていく夜景が、なんだかいつもより優しく見える。言葉にしなくても伝わる想いが、確かにそこにはあった。
隣から聞こえてくる音楽をBGMに、康二はそっと目黒の肩に頭を預け、ゆっくりと目を閉じた。
コメント
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やぁめめやさし!! こーゆう優しい人がいるスノーマン最高だ!