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💙あーもう!今のとこ、タイミングずれる!
深夜のレッスン室に、渡辺翔太のイライラした声が響いた。鏡に映る自分の姿を睨みつけ、乱暴に前髪をかきあげる。
新しいシングル曲の振り入れ。複雑なフォーメーションと細かいステップが続き、メンバー全員が疲労の色を隠せない。中でも、渡辺は特定のパートでどうしても納得がいかず、焦りが募っていた。
🤍しょっぴー、もう一回やってみよ
💙…ちょっと休憩。もう無理
励ますラウールに短く返すと、渡辺は床にどさりと座り込み、壁に背中を預けてしまった。ピリついた空気に、他のメンバーもどう声をかけていいか分からずにいる。
そんな中、静かに立ち上がったのは宮舘涼太だった。
❤️みんな、少し休憩にしよう。翔太、飲み物でもどう?
いつもと変わらない、落ち着いた声。宮舘は自販機に向かいながら、渡辺にしか聞こえないくらいの声で囁いた。
❤️水でいい?
💙…ん
ぶっきらぼうな返事にも気にした様子はなく、宮舘はすぐに二本のペットボトルを持って戻ってきた。そして、当たり前のように渡辺の隣に腰を下ろす。他のメンバーは、そんな二人にそっとスペースを空けて、ストレッチを始めたり談笑したりしている。
❤️はい。
💙…さんきゅ
冷たいペットボトルを受け取り、渡辺はごくごくと喉を鳴らす。しばらくの沈黙。先に口を開いたのは宮舘だった。
❤️焦ってる?
💙…別に
❤️ふーん。昔っからそうだよね、お前。できないことがあると、すぐ周りが見えなくなる
図星を突かれて、渡辺はバツが悪そうに視線を逸らす。
💙…うるせぇ
❤️でも、最後にはちゃんと乗り越えるのも知ってるよ
宮舘の言葉には、絶対的な信頼が滲んでいた。それは、昨日今日で築かれたものではない。
幼稚園からの長い年月が育んだ、揺るぎない確信。
💙…俺のせいで、みんなに迷惑かけてんじゃん
ぽつりと漏れた本音。それこそが、渡辺のイライラの原因だった。自分の不甲斐なさと、メンバーへの申し訳なさ。素直に言えない気持ちが、トゲのある態度になって現れてしまう。
そんな渡辺の不器用さを、宮舘はとっくにお見通しだ。
❤️誰も迷惑なんて思ってないよ。それより、お前が一人で抱え込む方が、みんな心配するんじゃない?
💙……
❤️大丈夫。翔太ならできるよ。俺が保証する
そう言って、宮舘は渡辺の背中をポンと優しく叩いた。
その温かさに、張り詰めていた糸がふっと緩むのを感じる。
💙…涼太が言うなら、そうかもな
少しだけ素直になれた渡辺は、ペットボトルの残りを一気に飲み干し、すっくと立ち上がった。
💙わりぃ、みんな!もう一回、頭からやらせて!
その声にはもう、焦りも苛立ちもなかった。
鏡の前で再び音楽が流れ出す。さっきまであれほど苦戦していたステップを、渡辺は嘘のように軽やかにこなしていく。
その姿を、宮舘は少しだけ離れた場所から、優しい笑みを浮かべて見守っていた。ツンとデレを繰り返す不器用な幼馴染の隣にいること。それは宮舘にとって、息をするのと同じくらい、当たり前のことだったから。