テラーノベル
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巨大な水槽の前、私を左右から挟むような二人の視線に、生きた心地がしなかった。青い光に照らされた凌先輩の微笑みと、遥の焦燥。その重苦しい沈黙を破ったのは、部長の成瀬先輩だった。
「……ねえ。3人で並んでると、さすがに取り合いになっちゃって進まないでしょ?」
成瀬先輩は足を止め、少し呆れたような顔で私たちを振り返った。
「午前と午後で、紗南ちゃんと回る人、分けたら? その方がお互い納得いくでしょ」
「分ける? ……何言ってんすか、成瀬先輩」
遥が不満げに眉を寄せると、成瀬先輩は「バチバチされる方が、紗南ちゃんもきついでしょ?」と一蹴した。
「……成瀬の言うことも一理あるな」
凌先輩が、どこか楽しげに目を細めて同期の部長を見た。
「合理的だ。じゃあ、午前中は俺が紗南ちゃんを借りてもいいかな? 遥はまだ足が疲れやすいだろうし、午後の空いてきた時間にゆっくり回った方がいい」
「……っ、そんなの、先に兄貴がズルいことするに決まってんだろ!」
遥が私の袖を強く引く。けれど、成瀬先輩の「紗南がきつい」という正論は、二人にとって無視できないトゲだったようで。
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