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翌朝。
まだ少し眠気の残る時間。
玄関を出ると、家の前に勇斗が立っていた。
💛「……えっ!」
🩷「おはよう」
💛「早くない?」
🩷「そう?」
腕時計を見ると、登校時間よりずいぶん早い。
💛「待った?」
🩷「いや、今来たところ」
その言葉が本当かどうかはわからなかった。
ただ、勇斗の髪が少しだけ湿っていることに気づいた。
💛「……朝、涼しいね」
🩷「うん」
並んで歩き出す。
昨日よりも、少しだけ自然に話せる。
💛「勇斗って、いつもこの時間に学校行くの?」
🩷「いや、普段はもう少し遅い」
💛「……じゃあ、俺のために?」
勇斗は一瞬だけ黙った。
それから、何でもないように笑った。
🩷「まあ、転校仕立てだし」
💛「……そっか」
それ以上、聞けなかった。
でも、その答えが少しだけ嬉しかった。
朝の光が、田んぼの水面に反射していた。
二人の影が、並んで伸びていく。
あの夏の始まりは、そんな何でもない朝だった。
それから、勇斗は毎朝、俺を迎えに来るようになった。
最初の数日は、道を覚えるまでのことだと思っていた。
でも、いつまで経っても、勇斗は迎えに来た。
💛「……もう道、覚えたよ?」
🩷「知ってる」
💛「じゃあ、なんで?」
勇斗は少しだけ笑った。
🩷「一緒に行きたいから」
自然と出てきた言葉に一瞬固まる。
その言葉に、俺は何も返せなくなった。
朝の空気が、急に熱くなった気がした。
転校してから一週間。
俺は、すっかり五人で過ごすことに慣れていた。
朝は勇斗と一緒に登校することが増えた。
昼休みは、曽野と塩崎、山中も交えて食事をする。
放課後は、みんなで帰ったり、時には勇斗と二人で寄り道をしたり。
この町での生活は、思っていたよりずっと楽しかった。
❤️「なあなあ!今日、放課後どっか行かね?」
舜太が弁当を食べながら言った。
💙「どこ?」
❤️「川!」
💛「川?」
🩷「ああ、近くにあるんだよ。結構綺麗なところ」
💛「行ってみたい!」
❤️「決まりー!」
💙「お前、勝手に決めるなよ」
🤍「……まあ、俺も行きたいかな」
🩷「じゃあ、みんなで行こう」
その言葉に、舜太が満足そうにうなずいた。
❤️「よし!青春っぽいことしようや!」
💛「何それ(笑)」
❤️「川で遊ぶんやで!?青春といえば川だろ!」
💙「意味わからん」
みんなが笑った。
そのとき、教室の入り口から女子の声が聞こえた。
「佐野くん、ちょっといい?」
勇斗が顔を上げる。
🩷「ん?どうした?」
女子たちが勇斗のもとへ集まってきた。
「今日の放課後、ちょっと話せない?」
「今度の行事、一緒に回らない?」
勇斗は、いつもの優しい笑顔で応じていた。
🩷「ごめん、今日は友達と約束してるんだ」
「そっか、残念!」
女子たちは笑顔で去っていった。
俺は、その様子を何となく眺めていた。
💛「……勇斗って、やっぱり人気なんだね」
俺は思わず勇斗を見た。
勇斗は少し困ったように笑った。
🩷「やめてよ、そういうの」
❤️「いや、事実じゃん!」
🤍「……まあ、否定はできないね」
💛「すごいなぁ……」
勇斗は俺の顔を見て、少しだけ目を細めた。
🩷「仁人は、知らなくていいよ」
💛「え?」
🩷「……なんでもない」
そう言って、勇斗は弁当の続きを食べ始めた。
俺は、その言葉の意味を考えていた。
放課後。
約束どおり、五人で川へ向かった。
川は町の外れにあり、周囲には木々が生い茂っていた。
水は透き通っていて、日差しを受けてきらきらと光っている。
💛「うわ、めっちゃきれい!」
❤️「そうやろ!?」
舜太は靴を脱いで、勢いよく川に入った。
❤️「冷たっ!!」
💙「そりゃそうだろ」
❤️「いや、思ったより冷たい!」
その様子を見て、仁人は笑った。
勇斗は隣にしゃがみ込んで、水面を眺めていた。
🩷「……ここ、好きなんだよね」
💛「そうなの?」
🩷「うん。何も考えなくていいから」
💛「……わかるかも」
二人で川を見つめる。
少し離れたところでは、舜太が太智に水をかけていた。
❤️「太ちゃんー!こっち来いよ!」
💙「やめろって!」
🤍「……二人とも、子どもみたい」
柔太朗が呆れたように笑う。
その声を聞きながら、仁人はふと思った。
この五人でいる時間が、ずっと続けばいいのに。
まだ知り合って一週間なのに。
そんなことを思ってしまうくらい、居心地がよかった。
帰り道。
川で遊んだせいか、舜太は少し疲れていた。
❤️「腹減ったー」
💙「さっきまであんなに騒いでたからだろ」
❤️「それとこれとは別!」
🤍「……帰ったら宿題しないと」
❤️「うわ、現実に戻されたやん、やめて!」
三人が先に歩いていく。
仁人と勇斗は、少し後ろを歩いていた。
💛「……今日、楽しかった」
🩷「よかった」
💛「みんな、いい人だね」
🩷「うん。俺もそう思う」
💛「……勇斗も?」
🩷「え?」
💛「勇斗も、いい人だよ」
勇斗は一瞬、目を丸くした。
そして、少し照れたように笑った。
🩷「……ありがと」
夕日が、勇斗の横顔を照らしていた。
その表情を見て、仁人の胸が少しだけ温かくなった。
その日の夜。
柔太朗は、自室でスマホを眺めていた。
舜太から、グループチャットに写真が送られてきていた。
川で遊んでいるときの写真。
そこには、笑っている仁人と、その隣で仁人を見ている勇斗が写っていた。
❤️「今日の写真!青春!」
💙「仁人、めっちゃ楽しそうやん」
💛「ありがとう!いい写真!」
🤍「……勇斗、仁人のこと見てるね」
送信してから、柔太朗は少し考えた。
くるくると座っている椅子を回す。
まだ、決めつけるには早い。
でも、勇斗が仁人に向ける視線は、少しだけ特別に見えた。
そして、仁人も。
勇斗が笑うと、必ずそちらを見ていた。
柔太朗はスマホを伏せた。
🤍「……これから、どうなるんだろう」
その答えは、まだ誰にもわからなかった。
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コメント
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寺島あおいです🌷 第5話、じんわり沁みました…。朝、勇斗くんが迎えに来てくれるようになった経緯——「一緒に行きたいから」って、何気なく言えるのがもう特別だなって。仁人くんがその言葉に何も返せなくなる気持ち、すごく分かります。川での五人組の他愛ないやりとりも、帰り道の「勇斗もいい人だよ」のやりとりも、全部が優しくて。ラストの山中くんの観察も、読者の私が思ってたことを代弁してくれてるみたいでした。続きが待ち遠しいです。