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#現代ドラマ
ゆうき あきや
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#心理描写重視
コメント
1件
うわあ、これはまた斜め上すぎる展開でしたね…! 台風で停電の絶望感から一転、まさかのゲーミング発電機でネオン輝くパリピ古民家に変貌するとは。シャーロットさんの「映え重視」がここで炸裂するとは思わなかったです。「マルチスペクトル視覚心理防衛システム」って言い訳を真顔で通そうとする需品科の執念に笑いました。あの七色空間で玄米食べる姿、めちゃくちゃ脳裏に焼き付いてます。シロのクールさも相変わらずで最高でした!
第123話:停電? いいえ、ゲーミング自家発電です
ゴォォォォォォォォッ!!
時刻は午後八時。本来ならば静寂に包まれるはずの限界集落の夜は、観測史上最大級の超大型台風がもたらす狂気を孕んだ暴風雨によって、阿鼻叫喚の様相を呈していた。
窓ガラスには叩きつけるような雨粒が弾け、築数十年の古民家の太い柱すらも、悲鳴のようにミシミシと不気味な音を立てている。
俺が完璧な養生テープで補強した窓と、シロの『絶対防壁』のおかげで物理的な崩壊は免れているものの、自然の猛威がもたらすプレッシャーは尋常ではない。
避難してきている集落のおばあちゃんたちも、不安そうに身を寄せ合って外の音に怯えていた。
その時だった。
パツンッ……!!
嫌な破裂音のようなものが遠くで鳴ったかと思うと、古民家の居間を煌々と照らしていたLED照明が、唐突に命を絶たれたように消滅した。
同時に、稼働していた冷蔵庫のモーター音も、エアコンの微かな稼働音もすべてが沈黙する。
「ひっ……!?」
「お、お兄さん! 電気が……真っ暗ですっ!」
小春ちゃんがパニックを起こし、おばあちゃんたちからも悲鳴にも似た声が上がる。
無理もない。ただでさえ恐ろしい暴風雨の夜に、唯一の安心感であった「光」を奪われることは、人間の根源的な恐怖をこれ以上ないほどに煽り立てる。
十勝地方全域を襲った暴風により、ついに送電網の鉄塔が倒壊し、大規模なブラックアウト(広域停電)が発生したのだ。
「落ち着け! パニックは酸素消費量を無駄に上げるだけだ。動かず、その場で待機しろ!」
俺は暗闇の中で、元・需品科としての鋭い声を張り上げた。
だが、俺が懐中電灯を取り出すまでもなく、事態は「斜め上」の方向へと動いた。
停電発生から、わずか五秒後。
ガコンッ! ギュイィィィィィィン……!!
庭に設置された巨大なチタン装甲の箱――昼間に届いたばかりの『超大型軍用ディーゼル発電機』から、重低音の頼もしい起動音が鳴り響いた。
停電を自動検知したシステムが、自家発電モードへと切り替わったのだ。
「よし、補助電源が起動した。これで通信インフラと……ん?」
俺が安堵の息を吐きかけた、次の瞬間だった。
ピシャァァァァァァッ!!!
「うおっ!?」
「きゃあああっ!?」
古民家の居間が、いや、外の庭までもが、目も眩むような『極彩色の光』に包み込まれたのだ。
赤、青、緑、黄色、紫……。
復旧した照明はただの白い光ではなく、まるでエレクトロニック・ダンス・ミュージックのフェス会場か、あるいは最新型のハイエンド・ゲーミングPCのように、激しくグラデーションを描きながら七色にビカビカと輝き始めたのである。
「な、なんだいこの光は!?」
「お兄さん! 家がっ、お兄さんの家が七色に光り輝いてますぅぅぅ!?」
「ああ……目が、目がァ……!」
突然のサイバーパンクすぎるパリピ空間の出現に、おばあちゃんたちも小春ちゃんも、そしてコン吉たちキツネ兄弟までもが目を白黒させている。
もちろん、真っ暗闇から一転してネオン街のようになった配信画面を見ていた一千万人のリスナーたちも、完全に思考がフリーズした後に大爆発を起こしていた。
『うおおおおおっ!? 目が痛いwwww』
『ゲーミング古民家爆誕wwwwww』
『限界集落がサイバーパンクになっちまったぞww』
『台風の夜にクラブイベント開催してんじゃねぇよww』
『おばあちゃん達がネオンの光に照らされてて腹筋ちぎれるww』
ジンバルにセットされたiPhone miniの画面が、怒涛のコメントと極彩色のギフトで埋め尽くされる中、チャット欄の上部に、あの見慣れた『VIPバッジ』をつけたアカウントが意気揚々と降臨した。
『(ハリウッド女優シャーロットからの$5,000MeTubeギフト)=”Surprise! A normal generator is too boring, so I custom-ordered it with full RGB lighting! Survival must be photogenic! The darker the night, the brighter we shine!“(サプライズよ! 普通の発電機なんて退屈すぎるから、フルRGBライティング仕様で特注しておいたわ! サバイバルは映えなくちゃ! 夜が暗ければ暗いほど、私たちは輝くのよ!)』
「……あのハリウッドの暴君、なんて余計な魔改造を施してくれたんだ」
俺は額を押さえ、七色に輝く居間の天井を仰ぎ見た。
どうやらこの発電機は、電力を供給するだけでなく、備え付けられた大量のLEDユニットを連動させて家全体をゲーミング化する機能が標準搭載されているらしい。
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)=”Hahaha! Charlotte’s sense is crazy, but it’s reliable! It’s like a beacon of hope in the storm!“(ハハハ! シャーロットのセンスは狂っているが、頼もしいぜ! まるで嵐の中の希望の灯台だ!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”This is the most expensive and brightest shelter in the world!“(世界で最も高価で、最も明るい避難所だな!)』
外は観測史上最大級の台風が吹き荒れる地獄だというのに、俺の古民家の周辺だけは、まるでラスベガスのカジノのように不夜城と化していた。
「ア、アキヤさん……。なんだか、お祭りのネオンみたいで、綺麗だねぇ……」
「最初はびっくりしたけど、真っ暗よりはずっと安心するよ……」
驚きこそしたものの、おばあちゃんたちの顔からは、先ほどまでの停電に対する死の恐怖は完全に消え去っていた。
極彩色の光の下で、シロは全く気にする様子もなく、神秘的な『オッドアイ』の瞳――左目のサファイアブルーと右目の琥珀色――を細めて『ミャウ(派手な光ね。悪くないわ)』と呑気に香箱座りを決め込み、コン吉とコン次郎は光の粒を追いかけて嬉しそうに飛び跳ねている。
「……まぁ、パニックが収まったのなら、兵站(ロジスティクス)としては合格とするか」
俺は深い溜め息を吐きながら、居間の片隅にある『最強のYAMAHAルーター』を確認した。
煌々としたゲーミング光を浴びながらも、ルーターのランプは正常に点灯し、無停電電源装置によって全くラグのない完璧な通信環境を維持し続けている。
「よし、インフラの無事は確認した。小春ちゃん、避難者たちの体調モニタリングを継続しろ。俺はこれより、中断していた指揮官のエネルギー補給を再開する」
俺は七色にチカチカと光るカオスな空間の中で、定位置であるローデスクの前に正座し、停電時に素早く閉じていたタッパーを再び開けた。
そして、ゲーミングネオンに照らされて禍々しい色に染まった『玄米』と自家製の『大豆ミートの生姜焼き風』を、一切の表情を崩すことなく、完璧な速度で口に運び始めた。
「お、お兄さん……! このパリピみたいな空間で、一人だけ修行僧みたいな顔して玄米食べるの、絵面がシュールすぎますって!」
小春ちゃんが引きつった笑顔でツッコミを入れるが、俺は咀嚼を止めない。
「どんな環境下であっても、己のルーティンを崩さない。これが強靭なメンタルを保つための需品科の鉄則だ。大豆由来の代替肉は、七色に光っていようと栄養価に変わりはない」
俺は熱いほうじ茶で喉を潤すと、カメラの前に向き直り、キリッとした真顔でいつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。我が陣地が突然七色に光り出し、ハリウッド女優の趣味で作られたふざけたゲーミング発電機だと思われているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『この圧倒的なゲーミング空間で、まだ言い訳する気か!!!』
『主の限界言い訳タイム・ゲーミング自家発電編ww』
『さあ、このパリピ空間をどうロジカルに論破するww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは、決して映えを狙ったお遊びのゲーミング発光ではありません。これは、長期間の閉鎖空間におけるストレスを軽減し、季節性感情障害(SAD)を防ぐための『マルチスペクトル視覚心理防衛システム』です。赤は交感神経を刺激して体温を上げ、青は副交感神経を優位にしてパニックを鎮める。ええ、ただの極めて高度な『色彩心理学に基づいた医療用メンタルケア装置』が稼働しているだけですね」
「ただのシャーロットさんの趣味じゃないですかぁぁぁ!!!」
小春ちゃんが、近くにあった座布団を円盤のように投げつけ、俺の後頭部にクリティカルヒットさせた。
「マルチスペクトル視覚心理防衛システムってなんですか!! さっきシャーロットさんが自分で『RGB仕様で特注した』ってスパチャで自白してたでしょうが!! どう見てもただのゲーミング古民家です!! 素直に『悪ノリの産物です』って認めなさいよ!!」
『小春ちゃんの座布団フリスビー炸裂ww』
『マルチスペクトル視覚心理防衛システム(ただのゲーミングPC)』
『適応力バグおじさん、ついにパリピネオンまで医療用装置だと言い張るww』
『言い訳のスケールがデカすぎて毎回説得力あるように聞こえるの草ww』
俺の理不尽極まりない色彩心理学的な限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレの座布団ツッコミに、一千万人の視聴者たちは停電の不安など完全に忘れ去り、腹がよじれるほどの大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(うるさい下僕たちね、静かに寝させなさい)』
シロが欠伸を一つすると、ゲーミング光に照らされながら丸くなり、再び心地よい寝息を立て始めた。
「……まぁ、理由はどうあれ。この明るさがあれば、不安になることもないだろう」
俺は苦笑いしながら、七色に光る部屋の中で温かいほうじ茶を啜った。
外の世界は、自然の猛威によってすべてが闇に沈んでいる。
だが、元需品科の最強のロジスティクスと、VIPたちの規格外の支援、そして神獣の加護がある限り、この古民家の光と温もりが絶えることは決してない。
世界一バグっていて、世界一眩しい限界集落の絶対防衛戦の夜は、七色の光と大爆笑に包まれながら、力強く更けていくのだった。