第三章 募った疑い
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第八話 つまみ食い
太陽が沈み、辺りは真っ暗になる。
男の子のお腹の音が気になり始め、少し早いが食事にすることになった。
「わぁー!美味しそうだね!お姉ちゃん」
💍「うん。そうだね」
「食べていい?食べていい?」
💍「うん。いいよ。でもその前にいただきますしよっか」
「うん!せーの!」
「「いただきます」」
主様たちが合掌をした。
早速男の子がフォークを掴み、料理を食べている。
主様はただ、男の子の幸せそうな顔を見つめ、微笑んでいる。
料理からは、美味しそうな匂いと湯気が立ち上っているのだが、主様は一向に食器を持とうとしない。
💍「おいしい?」
「うん!」
💍「良かった。沢山食べてね」
「、、、、、、お姉ちゃんは?」
💍「え?」
男の子も主様の料理が全く進んでないことに気がついたようだ。
「お姉ちゃんは食べないの?」
私も声に出した方がいいのか迷っていた言葉。
男の子は疑問のままにすらっと声にした。
💍「うーんとね。私はさっきつまみ食いしちゃったから、あまりお腹が減ってないんだよ」
「え!?お姉ちゃんだけずるいー!僕も食べたかった!」
💍「今食べてるじゃん」
あまりの男の子の必死さに、主様は噴き出す。
嘘だ。主様はつまみ食いなんてしていない。
口実だ。
そんな調子のまま食事は終わってしまった。
結局、主様分の晩食は男の子が平らげてしまった。
「「ご馳走様でした」」
男の子がいるせいか、昼時のように出てけと主様が制することは無かった。
主様と男の子、そして私だけがいる空間は、賑やかとも言えるのだろうが、何処か暗い雰囲気が薄く漂っていた。
ただ単純に、人数が少ないだけなのか。
演技、嘘を纏っている主様。
誤解、困惑、疑いを纏っている私。
どちらも存在してしまったからなのか。
、、、、、、分からないです。難しいです。
💍「美味しかったね」
「うん!お腹いっぱーい!」
、、、今度。
今度、執事たち全員を呼んでみるのはどうでしょうか、、、。
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第九話 眠れぬ夜
💍「それじゃあおやすみ」
「おやすみ!お姉ちゃん!」
主様と男の子が別れ、それぞれの部屋に戻る。
🫖「おやすみなさいませ」
私は徘徊の時間まで仮眠をとるため、自分の部屋へと戻った。
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💍「、、、、、、、、、、、、」
努力も一切してねぇ
思いやりなんてない
そんな奴に
💍「、、、、、、、、、はぁ」
正論。
わかってる。そんなこと。
私が全部そうやって仕向けたから。
執事たちが傷ついているのも知ってる。
他にもっと方法はないのか、、、?
次になったら、絶対こんな事しない。
意味が無いってなったら、他の方法を試すまで。
次はどうしようか。
今までは細かいことまで試しすぎて時間と回数を沢山使った。
もう今度からは大きく視点を変えて試していかないといけない。
どこまでやり直せるのだろう。
あと何回でやり直せなくなるのだろう。
前回はベリアンにバレて、他の執事たちにもバレされて、上手くいかなかった。
今回で、嫌われて上手くいくかもしれないことを試し通す。
上手くいってるんだきっと。
多分、確証はないけど。
まだ誰にもバレてはいない。
フィンレイ様が言わなければの話だけど。
多分大丈夫だ。
このままで終わらせちゃダメなんだ。
絶対に__。
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「、、、、、、、、、お母さん、、、?」
誰もいない。
「、、、、、、こ、怖いよぉ、、、」
いつもはお母さんがいるのに、、、。
「お母さん、、、どこ、、、泣」
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突然ドアが開く音がした。
💍「!?」
「お、お姉ちゃん、、、?泣」
💍「あれ?どうしたの、、、?」
ドアの前には泣いている男の子がいた。
心配して男の子に近寄り、しゃがむと、男の子は抱きついてきた。
「怖いよぉ、、、泣」
💍「、、、もしかして、お母さんがいなくて寂しくなっちゃった?」
「うん、、、」
💍「そっかそっか」
そうだよね、、、こんなにも小さい子供だもん。
お母さんにくっついてたいよね、、、。
💍「、、、よし。お姉ちゃんと一緒に寝る?」
「! いいの!」
💍「うん。いいよ」
ふたりしてモゾモゾとベットに入り、向き合う形で眠りにつく。
途中で男の子がすりついてきた。
ベットは一人用なので狭い。
男の子が寝言でお母さん、、、というので、切なく感じ、男の子を抱きしめて眠った。
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第十話 怒りという愛情根拠
翌日は男の子を家へと送り、別れてから依頼の件でパーティのお手伝いをすることになった。
パーティは明日、例年通り貴族の社交パーティが開かれる。
今年の会場がローズタウンなので、移動時間も兼ねて早めに出なければならない。
泊まりがけの依頼となり、執事たち全員がこの屋敷を留守にする。
もちろん、主様も。
そのことについて、主様にも話さなければいけない。
依頼を受け取った後、すぐに主様の部屋に向かった。
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🫖「、、、ということでございます。そして、主様にお願いがあるのですが、、、」
💍「留守番で結構。一人でいい」
🫖「ッ、、、いえ、そういうことではなく、、、」
主様の一人でいいという言葉が、泥のようにしつこく私の中で残る。
一人でいい だなんて、、、。
でも、私には何も分かりません。
それはいつもの演技なのか。
それとも本当に関わりを少なくして欲しいのか。
バレないようにするため、関わりを減らそうとしているのか。
、、、そもそも、私たちと関わることが、主様の負担になっているのでは?
そう考えてしまう。
ふと、私を見開き、見つめている主様に気がついた。
🫖「、、、主様?」
💍「、、、、、、、、、なんでもない」
主様はすぐに顔を逸らした。
ちらっと見えた主様の、引きつった口元と彷徨う目は、気のせいでしょうか、、、。
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その後、主様に事情を話し、私たちは今ローズタウンにいる。
主様はローズタウンに全く興味がない様で、部屋に篭もり、考え事をしているようだった。
その間に着々と準備が進み、そして当日になった。
🫖「主様、あちらのテーブルで紅茶はいかがですか?」
💍「、、、、、、、、、」
🫖「主様?」
💍「、、、ぁ、うん」
最近、主様がぼーっとすることが増えた。
何をしていても考え事をしているようで、まるで身に入らない。
今もちゃんと散歩をしているのか不思議なところです。
さすがにこのままではダメだと思い、散歩に誘ってみたものの、こんなものでは主様の気も緩められないですよね、、、。
主様が席に座り、私が紅茶を出す準備をした。
すると突然、声が聞こえてきた。
若い男女、貴族たちだった。
彼らは婚約者のようで、薔薇を味わおうとここに来たのだろう。
そして私たちの前で立ち止まる。
「まぁ嫌だわ、、、こんなところであくま執事たちに会うなんて、、、」
「大丈夫さ。俺がいる。おい。そこを早くどけ」
乱暴な言い方や態度に、思わず眉毛が八の字に下がる。
でも主様がいる。
今も尚考えふけっている様子だが、揉め事にする訳にはいかない。
ここは落ち着き、丁重に、、、。
🫖「これは、、、申し訳ございません」
謝罪をし、軽く頭を下げる。
「ふん。それでいいんだよ。ほら、こっちにおいで」
「怖いわ、、、悪魔執事を見たせいで気分も悪くなっちゃった、、、」
「所詮道具の分際で_」
男性が言い切る前に、主様が突然立ち上がった。
振り返ると、主様が貴族を酷く睨みつけているのがわかる。
💍「ベリアン。行こう」
困惑する私の服裾を掴み、主様は堂々と歩き出した。
💍「何回聞いてもムカつく、、、」
怒りのあまり、そんな小言を残して。
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第十一話 “違う”という確信
💍「、、、、、、、、、」
🫖「、、、、、、、、、」
貴族たちの談笑が、パーティを包み込む。
その中で私たち執事は、静かにバラけて身を潜めていた。
主様の護衛を目的としているのは、私だけのようですが、、、。
他の執事たちは主様を見ることも無く、ほか事をしているようだ。
「こんばんは」
💍「、、、、、、、、、」
若い男性が主様に声をかけていた。
私はパーティ会場の片隅で、その様子を伺い、必要ならば間に入ることも考え、警戒した。
「僕と一杯どうかな。話し込むのは疲れちゃって、、、」
💍「、、、、、、、、、」
そう誘い込む男性に対し、主様は笑顔で制した。
男性も、あまり見ない主様の笑顔に驚いている様子。
「ぁ、、、、、、、、、」
主様が軽く頭を下げ、その場から歩き出しても男性は動かない。
そのまま会場から出ていってしまう主様が気になり、私は追うようにドアを開けた。
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しばらくついて行った後、主様が急に振り返り、私を睨み気味で見つめた。
気づかれていたんですね、、、。
🫖「主様_」
💍「シッ」
主様が指を口元に寄せ、私を睨んだ。
🫖「!」
私は出そうとしていた声を何とか喉で止め、口を結んだ。
主様はキョロキョロと辺りを見渡し、警戒しているようだった。
💍「しゃがんで」
主様に従い、膝を折る。
薔薇園の迷路のようなところでしゃがみ続ける主様は、何かを見つけ、息を潜めている。
何をしているんでしょうか、、、。
主様は何かを追うように薔薇園を見つめていたが、しばらくするとため息をつき、するりと腕を動かした。
突然、手のひらに温かみを感じた。
🫖「ぇ、、、!?」
💍「シッ」
主様の指が私の指に絡みつき、ぎゅっとされる。
驚きすぎて、されるがままに、恋人繋ぎというものをした。
すると、目の前のばらの植木壁から、さっき主様に話しかけていた男性が現れた。
主様は覚悟していたかのように立ち上がった。
手は繋がれているままなので、私も立ち上がる。
男性は笑みを浮かべ、主様に声をかけた。
「こんなところに異性と二人きりとは、、、どういう関係なのですか?」
💍「婚約者です」
主様が微笑み、繋いでいる手を見せつけるように差し出す。
わ、私、た、た只今、こ、こん、混乱中、、、!
「へぇ、、、執事と?」
男性がそう言い放った瞬間、主様は固まった。
表情も引きつっている。
そこで私も、冷静に考える。
執事と主が婚約者、、、?
ど、どど、ど、ど、どういうことですか!?
そしてまたもや混乱する。
💍「、、、私のことを知ってるの?」
「もちろん。悪魔執事の主様。もしかして、知らないで関わっていたと思ってたのですか?」
💍「、、、、、、、、、、、、、、、」
主様は考え込むように目を閉じ、そして開く。
💍「どういう目的で私と関わったのかしら」
「そりゃあ、親睦を深めに_」
💍「私を暗殺しに来たのではなくって?」
主様が笑みを浮かべながら言う。
男性も笑みを浮かべているが、少し引きつったように見えた。
あ、暗殺、、、!?!
「何故そのように思ったのですか?」
💍「あら?私に毒入りワインを渡したのは、確か貴方だったような気がしたのですが?」
「毒入りだなんてとんでもない!」
毒入り、、、!?!
💍「渡したことは否定しないのですね」
「えぇ。そのワインは私のお気に入りで、、、ぜひ貴方様にも味わって欲しいと、、、_」
💍「では、このワイン、お返し致します。喉乾いてないので」
「そ、そんな、、、ぜひ一口でも_ 」
💍「まぁ!一口でも致死量となる猛毒を入れたのですか!?それは、、、逆に気になりますね、、、」
「だ、だから!毒なんて_」
男性が必死になって否定していたが、植木壁の裏から足音が聞こえ、慌てて口を塞いだ。
💍「どうしますか?話、続けますか?」
「、、、、、、チッ」
男性は踵を返し、去って行った。
💍「、、、、、、はぁ」
主様は安心したかのように胸を撫で下ろし、ため息を落とす。
ここで私も冷静に考える。
主様は、何故、暗殺者だと確信得ていたのでしょうか、、、。
謎は分からない。
主様のことを知ってからしばらく経っているというのに、分からないままです。
私は本当にこのままでいいのでしょうか、、、。
不意に手の温かさを感じた。
そ、そういえば手を繋いでいるままでした!!
🫖「あ、あの、主様、、、」
💍「?」
主様が私を見あげる。
🫖「そろそろ、、、手を離してもらってもよろしいでしょうか、、、///」
💍「!」
素早く主様は手を離し、俯く。
私もなんとなく主様から目を逸らした。
執事と主が手を繋ぐのは、、、アウトですね、、、。
自分で自分に説教する。
💍「、、、急に握ったりしてごめんなさい 」
🫖「え」
主様の小さく、細い言葉に思考を止めてしまったその時、サイレンが鳴った。
🫖「天使!」
💍「なんで今、、、?」
🪽「死になさい。命のために、、、」
🫖💍「「!?」」
🫖「主様!お願いします!」
私は素早く構え、武器を持つ。
その後ろで主様が呪文を唱える。
手早い順応な行動で、突然目の前に現れた天使は倒すことができた。
ホッとするのもつかの間、新たな天使達が襲いかかってきた。
数は十体くらいだろうか。
あっという間に囲まれ、私と主様は焦った。
🫖「こ、これは、、、」
天使たちがじりじりと寄ってくる。
ついに主様と背を預け合うような形となり、呼吸が苦しくなってくる。
何も出来ない___。
そう叩き付けられているような感じがする。
いや、せめて主様だけでも、、、。
自分で助けられるのか___?
こんな時に限って、後ろめたくなる言葉ばかり、、、、、、!
ついに辺りが眩しく感じた。
もうダメなのでしょうか、、、。
まだ私は、、、
何も主様の役に立てれておりません、、、。
主様から悲鳴は聞こえない。
だが、背中から震えを感じ取れる。
どうか、、、主様だけでも、、、!
覚悟して目を瞑ったその時、
「「ベリアンさん!!」」
見知った声が聞こえ、視界はどんどん暗くなっていった。
主様を庇うような姿勢のまま、目を開けると、そこには天使と戦っているロノくんとバスティンくんの姿があった。
私もすぐに加勢し、何とか天使達を全員倒すことができた。
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🍳「はぁ、、、何とか間に合いました、、、」
⚔️「ベリアンさんが出ていくのを見て、俺達も追いかけたんだ」
🫖「良かったです、、、あのままではきっと、、、、、、ありがとうございました。ロノくん、バスティンくん」
🍳「いえいえ!」
⚔️「ベリアンさんが無事で良かった」
🫖「、、、、、、、、、」
そこに主様は入らないのですね、、、、、、。
なんだが、引っかかってしまう。
主様は大丈夫だったかと確認しようと、主様に目を向けた。
🫖「主様、、、?」
主様は蹲り、なんだがブツブツと小言を吐いている。
震えも止まっていない。
さっきの出来事が差程怖かったのだろうか、、、。
何か声をかけるため、主様に近づくと、来ないで!!と叫ばれた。
🫖「ぇ、、、?」
💍「なんで、、、どうして、、、、、、」
執事たち三人が言葉を失っている間にも、主様は小言を漏らす。
🫖「主様?どうか、、、なさいましたか、、、?」
位置はそのままで、声をかけた。
しばらくすると主様は、ため息をひとつ、立ち上がり、私を見つめた。
💍「、、、ベリアン。ちょっと来て」
🫖「は、、、はい、、、」
私を見つめる主様の目は、光がなく、まるで絶望を見たかのように黒く濁っていた。
視界の片隅で、他の執事達が駆け寄ってくるのが見えた。
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𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
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