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宣戦布告の翌日から、阿部亮平の行動は、メンバーの目から見ても明らかに奇妙だった。
「…さっくん、今日のピアス、いつもと違う?あ、そっちのデザインも似合うね…ふむふむ…」
「ん?おー!阿部ちゃんよく気づいたな!これ、限定のやつ!」
「(限定品に弱い、と…φ(..)メモメモ)」
「佐久間くん、このお弁当美味しいね。卵焼きが甘いやつだ」
「だろー!?俺、甘い卵焼き派なんだよねー!」
「(好きな食べ物…甘い卵焼き…と…φ(..)メモメモ)」
楽屋、移動車、雑誌の取材の合間。阿部は、まるで何かに取り憑かれたかのように佐久間を観察し、その言動、好み、ふとした表情の変化まで、手にしたノートに逐一記録していく。その姿は、研究に没頭する科学者のようでもあり、ターゲットをマークする刑事のようでもあった。
「なぁ、阿部ちゃん、最近どうしたの?」
ソファで隣になった深澤が、ひそひそと尋ねる。阿部はノートから顔を上げず、人差し指を口に当てて「しーっ」とジェスチャーした。
「今、大事な局面なんです。邪魔しないでください」
「いや、局面って何…?」
反対隣に座っていた渡辺は、そんな阿部の姿を呆れたように一瞥すると、スマホをいじりながら呟いた。
「さっくんの自由研究でもしてんじゃね?夏休みの宿題、まだ終わってなかったんだろ」
「終わってるよ!」
鋭いツッコミを入れるものの、阿部はノートの内容を見せる気は一切ない。これは、彼のプライドを懸けた、極秘プロジェクトなのだから。
数日にわたる徹底的な調査の末、阿部の『対・佐久間大介 完全勝利マニュアル』は、膨大なデータで埋め尽くされた。
【佐久間大介のトリセツ(阿部亮平調べ)】
照れるポイント:
ストレートな褒め言葉(特に「かっこいい」系)には強いが、「優しいね」「〇〇くんだけだよ」といった**「内面」や「特別感」を刺激される言葉には、やや弱い傾向**が見られる。
アニメのキャラが言うような、少しキザでロマンチックなセリフに、本気で感動して涙ぐむことがある(要検証)。
不意打ちのボディタッチには驚くが、照れるというより喜ぶパターンが多い。これは攻撃としては不向き。
感動するポイント:
努力の過程を認められること。
自分の好きなものを、同じ熱量で語ってくれること。
サプライズ(ただし、ベタすぎるものは見抜かれる可能性大)。
データを前に、阿部は腕を組んで唸った。
「なるほど…。単純な攻撃では、彼の防御壁(天真爛漫さ)を突破するのは難しい。やはり鍵となるのは…『不意打ち』『ロマンチックなシチュエーション』そして『自分だけの特別感』…。この三つの要素を組み合わせた、複合的な攻撃が必要だ」
ブツブツと呟くその顔は、もはや恋に悩む青年ではなく、難攻不落の城を攻める軍師のそれだった。
そして、阿部はついに結論に達する。
言葉だけでは足りない。彼の心を完全に揺さぶるには、形に残る「証」が必要だ。
「…決めた」
阿部はペンを置くと、ノートパソコンを開いた。カタカタと軽快なタイピング音が部屋に響く。検索窓に打ち込まれたのは、アクセサリーのブランド名や、天文学の専門サイトのURL。
それは、ただのプレゼントではない。
Snow Manのブレイン、阿部亮平の知識と計画性の全てを注ぎ込んだ
『対・佐久間用 最終兵器』
その設計図が、今、静かに、しかし着実に、彼の頭脳の中で組み上げられていくのだった。