side渡辺
今日は火曜日
いつもの癖でラヴィットをつける
涼太がいるんじゃないか、と
淡い希望も抱きながら
でも、そんなことはなくて
涼太の席には涼太のパネルが置いてあった
そのパネルは、いつもの笑顔でラヴィットポーズをしていた
川島さんが涼太は体調不良でお休みだということを伝えていた
スタジオメンバーは涼太を心配してくれていた
SNSを見ると、涼太を心配する声で溢れていた
その文字を見る度に涙が溢れそうになる
昨日、たくさん泣いたはずなのにな、笑
涼太と同棲を始めてなかなか使う機会がなかった宅配を頼む
10分ほどで料理が届く
料理は温かかった
スマホが通知を知らせる
画面を見るとふっかからだった
内容は、
『病院に来て』
それだけだった
俺はすぐに家を出てタクシーを捕まえる
病院につくとみんな集まっていた
俺が合流すると、照を先頭に歩き出す
あるひとつの部屋のドアを開けると、
「みんな、来てたんだね」
涼太がいた
「心配かけちゃってごめんね」
「もう大丈夫だから」
そう言って微笑む涼太
「急に倒れて、心配したんやからな…!」
康二はもう既に泣いている
「ごめんね笑」
「で、なんで倒れたの?」
ふっかが聞く
「疲れだって」
「最近、滝沢歌舞伎も終わったばっかだったし、そのせいだろうって、」
「良かった…」
阿部ちゃんが安堵の声をもらす
「今日、また検査をして大丈夫だったら帰れるって」
涼太が俺に目を合わせて言う
それから、俺らはしばらく涼太の部屋で談笑していた
お昼頃になり、みんなお腹が空いてきたので帰ることにした
俺はふっかと一緒に照に家まで送ってもらった
家に帰ると机に弁当が置いてあった
温かかった弁当はもう冷めていた
「最悪……」
俺は手を洗い、弁当をチンする
「いただきます」
適当にテレビをつける
食べている間、テレビの音しか響かなかった
食べ終わり、スケジュールの確認やダンスの自主練をやっていると、ガチャリと音がした
音がした方を見ると、涼太が入ってきた
「涼太…!!」
「ただいま」
「おかえり」
俺は涼太に近づき、思い切り抱きしめる
「わっ……」
「心配した……」
「ごめんって」
「……特別に許す」
「ありがと」
「ほら、ご飯準備するから」
「ん、」
気づけば、もう5時ぐらいになっていた
そして、涼太の手には買い物バッグ
わざわざスーパーに寄って買ってきてくれたらしい
それから涼太のご飯を食べ、風呂に入り、涼太の隣で寝た
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あれから1ヶ月、涼太は何事も無かったかのようにケロッとしている
冠番組の収録の日
俺らは楽屋で集まって喋っていた
でも、2人だけ、俺らの輪に入ってない人がいた
それは、ふっかと涼太
2人でぎゅっとなって何かを話している
こっちに背中を向けているので表情すらも分からない
スタジオに向かい、カメラが回ったら、いつもの2人に戻っていた
なんでもなかったかのように
ただ、時々、ふっかの目は泣きそうな目に変わった
でも、またふっかに視線を戻すと、いつものふっかに変わっていた
収録が終わり、家に帰る
涼太は他の仕事があるので、今日は1人
涼太は夜になっても帰ってこないので仕方なく寝ようとすると、スマホが鳴った
マネージャーからの電話だった
何となく嫌な予感がして、急いで出ると、
『宮舘くんが……』
『亡くなった__』
「え、?」
一瞬、自分の耳がおかしくなったのかと思い、聞き直す
『宮舘くんが、亡くなった』
『病気を抱えていて、』
『余命宣告をされてたんだって、』
電話越しに聞こえる声は涙声で
それでも俺に伝えようとする言葉は
俺に、グサグサと刺さる
“病気” ”余命宣告” ”亡くなる”
俺らにはまだ早いと思っていた単語は
こんなにも近くにあったんだ
『宮舘くんに、会いたい?』
答えは決まっている
「会いたい…ッッ」
『宮舘くんのご両親に許可はもらったから』
『前に行った病院に、来てくれる?』
『深澤くんと岩本くんは、もう来てるから』
「分かった、」
そこで、電話は途切れた
俺はすぐに家を出た
タクシーなんか、いらない
ただ、ただ、走った
走って、走って、走った
足が痛い
風が冷たくて、耳が痛い
でも、そんなこと関係ない
やっと、病院が見えてきた
病院に駆け込んで教えてもらった病室に行く
ドアに手をかけて、少し躊躇う
このドアを開ければ、涼太が死んだという事実を受け入れなければならない
でも、受け入れなければ、涼太には会えない
俺は、ドアを開けた
そこには、ふっか、照、佐久間がいた
「翔太……」
佐久間がこちらに気づく
俺は、彼らに近づく
そして、目が固く閉ざされた涼太に触れる
「涼太……」
いつもなら、返事をしてくれるのに
今は、返事がない
「ッ…返事しろよ…!」
「無視ッ……すんなよッ……」
シーツをぎゅっと掴む
「翔太……」
俺の背中にふっかの手が置かれる
俺は、耐えられなくて、涙を流す
涙は頬を伝い、顎を流れ、シーツを濡らす
「っ……りょ……た……っ……」
「りょ……た……」
何回も、何回も、名前を呼ぶ
「りょ……たぁ……」
涙は止まらず、流れ続ける
「翔太、」
ふっかに声をかけられ、上を向く
「これ、涼太から、」
小さな、水色の袋だった
「俺が、死んだら、翔太に…って」
ふっかも、涙を流す
俺は、その場で袋を開けようとする
「なんか書いてあるよ」
いつの間に来たのか、阿部に言われ、気づく
袋には、
“家で開けてね”
涼太の字でそう書いてあった
「家……?」
なぜか、これに従わなければならないと思い、家で開けることにする
「送ろっか?」
照に言われ、頷く
もう少しここにいたかったけど、ここにいても涼太の目は開くことは無い
照の車に乗りこみ、家に向かう
家に着いて、手も洗わず袋に手をかける
中には、小さな、紺色の箱と手紙があった
先に手紙を読む
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翔太へ
翔太がこれを読んでるってことは俺はもういないね。
余命宣告のこと、言えなくてごめんね。
俺はずるいから、弱いから、翔太に言えなかった
言ってしまったら翔太と別れることになるんじゃないかと思って
そしたら、言えなかった
ほんとに、ごめん
翔太には、今までたくさん助けてもらった。
なかなかデビューできない時、翔太にこう聞いたことがあるよね
「成功するってどういうことか分かる?」って
そしたらさ、「分かんない」って言われて
正直、びっくりした。でも、それでこそ翔太だって安心したよ。
箱の中、もう見た?
今は、認められてないけど、いつかできたらいいなってずっと思ってた
でも、認められた時は、きっと、俺はいないんだろうね
それは、好きなように使っていいよ
捨ててもいいし、飾ってもいい
つけててもいいよ
でも、翔太は恥ずかしがってつけないだろうね
長々と書いてもあれだから、この辺で終わるね
最後のお願い、聞いてくれる?
翔太、どうか、幸せになって欲しい
俺より好きな人を見つけて、その人と幸せになって欲しい
そして、SnowManを、もっともっと大きくして欲しい
SnowManは、もっと大きくなると、信じてるから
元気出して、翔太
もう翔太と話すことは出来ないけど
空の上で翔太を見守ってるよ
俺の事を忘れてもいい
ただ、時々でいい。思い出してくれると嬉しい
それが、1年ごとでも、10年ごとでもいい
あんな奴いたなって言って、そういえば死んだんだっけって言って。
お願いだから、幸せになって欲しい
そうじゃないと安心できないから。
それじゃあ、この辺で終わるね
SnowManを、大きくしてね
愛してる
宮舘涼太より
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「っ……りょうた……」
手紙を読み終わった時、涙が溢れていた
「むり……だよ……」
無理だよ、
涼太より好きな人なんて、この世にいない
涼太以外なんて、選べない
涼太のことを忘れることなんて出来ない
俺が、30年生きてて唯一愛した人だから
今までも、そしてこれからも
涼太しか愛せない
家に帰っても、涼太はいない
涼太の声が思い出せなくなっても
姿だけは、いつでも思い出せる
あの、笑顔だけは、忘れたくない
SnowManをでっかくしてやる
絶対、でっかくしてやる
いつか、”宮舘涼太”という人が世の中から忘れられてしまっても
俺たちは、絶対忘れることは無い
大事な、大事なメンバーとして
絶対、忘れない
俺は、小さな箱を開ける
中に入っていたのは、
「まじ……っ……かよ……」
キラキラと光る、
指輪だった
嬉しい
それしか思えなかった
確かに、今は認められてないけど
いつか、認められたらいいなって、ずっと思ってた
涼太の言うとおり、認められた時、涼太はいないけど
その時に、また、指輪をはめてもいいよね?
俺は、自分で左手の薬指に指輪をはめる
指輪は、キラキラと輝いていて、
赤色の宝石が埋め込まれていた
「忘れるわけねぇじゃんっ……」
こんなのされたら、
もっと、もっと、
好きになるしかない
俺は、スマホを取り出し、ある人に電話をかける
『もしもし…?』
「なぁ、ぜってぇ、SnowManをでっかくしよう」
「国民的アイドルに、させてやろうぜ」
『……いきなり、なんて言うかと思ったら、』
『もちろん、そのつもりだけど』
「その時はさ、涼太も一緒だよな?」
『そうに決まってんでしょ』
「……みんないんのかよ」
『だって、9人でSnowManだもんねぇ?』
『もちろんやろ!』
『8人でも10人でもない、9人だからね』
「……みんな、どこにいんの?」
『…来る?』
「行くに決まってんだろ」
『ふっかの家だよ』
「分かった。待ってて」
電話を切り、ふっかの家に走る
薬指は、指輪で光っていた
インターホンを鳴らし、家に入れてもらう
「いらっしゃい」
ふっかが、たくさん泣いたのだろう
赤くなった目で迎えてくれた
中に入ると、みんないた
「みんなに、報告があります」
俺が言うと、みんな、なになに?という風に俺に目を向けた
14の目に向けて薬指を見せる
「涼太が、くれた」
「え!?!?」
「うるせぇ」
康二が大きな声を出すので、思わず悪態をついてしまう
「うわ、舘さんやるぅ〜」
「やり方がもう泣ける」
「尊敬するわ……」
そんな言葉を口々に言われる
「てことで、俺の涼太だから」
「うわ、言ってみてぇ」
めめがいいながら阿部ちゃんを見る
「言ってみたら?」
「じゃあ」
みんなでめめの方を向く
「俺の阿部ちゃん、取らないでね?」
「今世紀何をしても決まる男がそれを言うとは……」
「それを言わせる阿部ちゃんは何者だよ……」
「めめあべだぁ……」
ラウールがキラキラとした眼差しを向ける
キラキラしないで?
「まぁでも、よかったよな」
「何が?」
「しょっぴー、大丈夫かな?ってみんなで心配してたんだけど、」
ふっかの後にめめが続ける
「電話が来た時は、ほんとに安心したよ」
「手紙に、なんか書いてあったんだね」
ラウール、阿部の順に言われる
「……SnowManを、もっともっと大きくしてくれって」
「書いてあった」
「だてさんらしいわ笑」
照が言う
「いつまでも悲しんでらんないね」
「みんなで、9人のSnowMan、でっかくしようぜ」
佐久間が言うと、みんな、頷く
涼太、見てる?
宮舘涼太は、ずっとSnowManだよ
誰1人欠けることのないSnowMan
SnowManは9人
俺は、ずっと涼太の恋人でいるよ
毎日、お前のこと思い出してやる
俺は、窓から空を見上げた
夕焼け色に染まる空を、見つめた
夕焼け色は、色とりどりで、まるで、俺たちみたいだった
『はいオッケー!』
「このシリーズって毎回人死んどらん?」
康二が口を出す
みんな思ってたことだけど
「作者は死ネタが好きなんだよ」
「それでいて暗くなくてハピエンみたいな感じ」
メタい話すんなし
コメント
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やばい、涙止まんない、 涙腺崩壊した、😭
今親がお風呂行って良かった〜…←大号泣中