side宮舘
寒い季節
俺はいつもの公園にいた
木製のベンチに座って、ボーッとしている
この時間が、楽だった
この時間が、嬉しかった
公園の時計が17時を告げる
その音で、現実に戻される
この季節のこの時間はもう夕焼け空
橙色に染まっている
俺は、家へと重い足を何とか動かして帰る
家へ帰ると、親に聞かれる
「どこへ行ってたの」
親の言葉を無視して階段を登る
「別に」
「進路は?決まったの?」
またその話か、
うんざりする
「…まだ」
「まだなの?早く決めちゃいなさい」
分かってる
そんなの、分かってる
俺は階段を登り部屋の電気を点けた
勉強机と向かい合い、1枚の紙を置く
『進路がまだ決まっていない人は明日の放課後相談室に来てください』
「はぁ……」
ため息を吐く
もう何回も聞いた話だ
特にやりたいこともない
他のみんなはもうとっくに進路を決めている
その話を忘れようと、ベッドに寝転ぶ
だんだんと瞼が重くなってくる
そのまま、眠りにつく
母の声で目が覚める
時間は20:00
もう夕飯の時間だった
制服からパジャマに着替え、リビングに降りる
夕飯を食べ、風呂に入り、部屋に入る
時刻はまだ22:00だったけど、勉強も、やる気が起きないので寝ることにする
ベッドに寝転び、眠りにつく
翌朝、いつもの時間に起きて、朝食を食べる
家を出て、学校に向かう
授業を受け、気づけば昼食
弁当を食べ、本を読む
次の時間の準備をし、授業を受ける
放課後、相談室に向かう
ドアを開けると、机が1つあり、向かい合うようにして机を挟んで椅子がある
一方に、先生が座っていた
いつもの先生だった
椅子に座ると、話を切り出される
「進路は決まった?」
俺は首を横に振る
「まだなの?早く決めないと」
「うるさいって思ってるかもしれないけど」
「あなたのために言ってるのよ?」
あなたのためって、なんなんだよ
俺のためにやってくれるんなら、静かにしてろよ
みんな進路進路って……
「次に呼ぶ時には決めておいてね」
「……はい」
多分、決まってないだろうな
そんなことを思いながら俺は相談室を出た
足は、いつもの公園に向かっていた
ベンチに座り、上を向く
上を向いた瞬間、人が落ちてきた
「っえ……」
その人は、ハーフっぽい顔だった
髪は銀色。
その人は、俺の目をジッと見つめていた
「え…っと……」
その人はここら辺でも有名な私立学校の制服を着ていた
そんな人が、何故ここに?
というか、なぜ上から?
「あの、誰ですか…?」
その人は、何も言葉を発さないどころか、俺のことをずっとみてくる
その人は、ズボンのポケットからスマホを取り出した
何かを打ち込み、画面を俺に向ける
『怪我はなかったですか?』
こんな時に怪我の心配?
全く俺の話を聞いていない…
「なかったです」
そう答えれば、首を傾げる
すると、また文字を打ち込み始めた
『ごめんなさい。俺、耳が聞こえないんです』
そういうことか
だから、今まで何も話さなかったのか
俺もスマホを取り出し、文字を打ち込む
『全然大丈夫です。あなたこそ、怪我はなかったですか?』
画面を見せると、文字を打ち込み始める
こうやって会話するのは初めてなので、変な感じがした
『大丈夫です。びっくりさせてしまって、すいません』
画面を俺に見せ、頭を下げる
俺は首を横に振ると、その人は安心したような顔になった
その人は立ち上がり、俺に背を向け、公園から出ていった
俺も腰を上げ、家に帰る
『オッケー!!』
「ラウールさん、こっちです!!」
声がかかると、すぐにラウールがスタッフに連れて行かれる
どうやら、足を捻ったらしい
「ラウール!!大丈夫かぁ!!」
佐久間の声も聞こえる
多分、冷やして貰ってるんだろうけど
ラウールなら大丈夫だろう
「だてさん大丈夫?」
阿部に問われる
「何が?」
「いや、さっきゆり組での撮影もしてたじゃん?」
「連続ってキツくないの?って思って」
……まぁ、正直キツいっちゃキツい
でも、
「楽しいからさ」
我ながらいい笑顔で言う
「だてさんらしいね」
そう言って、阿部も笑う
「阿部が笑ってくれるから頑張れるよ」
「え、」
「いくらだてさんでもそれはダメだよ」
と目黒にお叱りを受け、第2話の準備を始めた
コメント
3件
もうタイプすぎてやばい🥺…