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いつもより空が低く感じる
署の裏口から出て、人気のない路地をゆっくり歩く
わざとだ
今日はあえて人目が届かない帰り道を選んでいた
懐にはーー無断で持ち出した拳銃
「…………これで、終わらせる」
冷たく重い鉄が、手の中で覚悟を問い詰めてくる
ぶるーくを、このままにしておくことはできない
誰かが止めなければいけない
その役目を負えるのは、きっと俺しかいないんだ
……カツン…カツン
後ろから靴音
来た
歩みを速める。足音も速くなる
止める。足音も止まる
ーー気配はもう目の前にある
きりやんはコートの内側に手を伸ばした
「……ぶるーく。いるだろ…出てこい」
風が頬を撫でる
夜が息を止める
そしてーー
「ーーやっぱり、見つかっちゃった」
まるでいつもの調子でぶるーくは闇の中から姿を現した
本物のぶるーく
その瞬間、きりやんの指は引き金に掛かった
「ー本気だ俺はもう……撃つぞ」
警告ではない最終通告だった
震えることなく冷たい瞳でぶるーくを睨む
ぶるーくはほんの一瞬
ほんの一瞬だけ目を見開いた
驚き
寂しさ
悲しみ
でもすぐに、いつもの薄ら笑いに戻る
「…………そうくるなら。」
「君の正義が本気なら…」
「ーー僕も”愛の形”に手段は問わない」
次の瞬間
ぶるーくの懐から銃が現れる
「ーーッ!!」
引き金が引かれたのは、
きりやんより速かった
「う”ッぁあ”ぁぁッ!!」
腕に激痛が走る
銃は手から滑り落ち。地面に転がる
(…速い………迷いが一切なかった………)
「ごめんね……傷つけたくはなかったけど…」
「でもね…きりやんのためだから」
そう呟いたぶるーくは、必死に血を止めようとしているきりやんに近づく
その手には見慣れない注射器
「っ……やだッ……っ……くそっ!!」
抵抗しようとするも腕が痛みで血が入らない
足もふらつく
そして首筋に冷たい感触
「少しだけ、寝てて。目が覚めたらそこはーー僕達だけの楽園だから」
ぷす
と音を立てて刺さる針
血管の中に奇妙な冷たさが流れ込み思考が緩やかに溶けていく
視界が歪む
微笑むぶるーくの顔
その目はまるで神様のように優しく、冷たかった