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コンソメパン
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ラウールsaid
ラウール「……はぁ。本当に、うちの学校の教師陣は、進路指導の面談をする前に、まず自分の『卒業まで待つ』っていう大人の理性をどうにかしたほうがいいと思う」
私立雪男学園の校長室。窓の外を見れば、梅雨特有のじっとりとした雨が降り続いていて、校庭の緑が濃く濡れている。僕はデスクの上で炭酸水を一口すすりながら、防犯モニターの映像を眺めていた。もちろん、僕の特製タブレット(無音カメラ搭載)はいつでも稼働できる状態だ。
学校生活にも少しずつ慣れてきた初夏の放課後。下校時刻を過ぎて静まり返った校舎では、僕が仕込んだわけでもないのに(これ重要)、いたるところでじれったい「居残り勉強」という名の逢瀬が繰り広げられていた。先生と生徒の恋なんて、世間一般ではタブーの領域。うちの真面目な教師たちだって、頭では「付き合うのは卒業してから」と自分を律しようとしているみたいだけど……うん、防犯モニター越しに見るみんなの顔、早くも理性という名の壁がみしみしと音を立てて軋んでいるのが丸分かりなんだよね。
例えば、1階の家庭科室。
宮舘「翔太、この課題のレポート、漢字の書き間違いが多いよ。幼馴染だからって、俺の授業で手抜きは許さないからね」
宮舘「っ、分かってるよ……っ。涼太、お前さっきから距離が近ぇんだよバカ!」
やはり幼馴染という噂は本当だったようだ。
バスケ部の幽霊部員で成績は良くないけれど、男女問わずモテまくる3年の渡辺翔太が、家庭科の新任教師、宮舘涼太先生の隣で顔を真っ赤にしていた。宮舘先生は物静かで落ち着いた佇まいのまま、渡辺のすぐ後ろから覗き込むようにしてペンを動かしている。
渡辺「涼太……俺、もうこれ終わったら、卒業までお前の顔見ないからな」
なんて強がっている渡辺だけど、宮舘先生は余裕のある笑みを浮かべて
宮舘「卒業まで、あと数ヶ月も俺に会わないなんて、翔太にできるわけないでしょ」
と低く囁いていた。スマートだけど強引な宮舘先生のアプローチに、渡辺は完全にキャパオーバーの初心な顔になってツンデレを発動している。
体育館の裏にある生徒会室。
岩本「深澤、お前この前の小テストの赤点、今日の補習でしっかり取り返せよ。部活をサボって生徒会室に逃げ込んでも無駄だからな」
深澤「あ、岩本先生〜。そんなに怒らないでくださいよ。俺、生徒会長の仕事が忙しくて、ちょっと寝不足なだけですから。……ほら、これあげるから許して?」
ジャージ姿の体育教師、岩本照先生の前に、生徒会会長の深澤辰哉が甘えていた。
深澤も女子からも男子からもモテる人気者だけど、岩本先生の前だと、なぜかいつもより無防備な顔になる。岩本先生は厳しい態度を取りつつも、
深澤「岩本先生、俺が卒業したら、ちゃんと付き合ってくれる?」
と不意に呟いた瞬間、先生としての立場があるから
岩本「……卒業してからだ。」
と必死に言い張っているけれど、岩本先生のほうが先に折れそうなのは僕の目にはお見通しなわけ。
そして、僕が今日も熱心に観察しているのが、2階の社会科準備室と、3階の理科準備室。まだ誰も正式には「付き合っていない」はずの、じれったい放課後。ここから、お兄ちゃんたちの不器用な恋の歯車が、雨音に紛れてさらに深く回り出そうとしていた。
阿部said
阿部「佐久間、ここの問題。公式の文字をそのまま当てはめるだけだよ。ほら、もう一回やってみて」
佐久間「うう〜、あべちゃん。数字ばっかり並べられても、俺の頭には入ってこない……」
放課後の理科準備室。外から聞こえる静かな雨の音に混ざって、佐久間の不満げな声が狭い室内に響いていた。佐久間は放送委員会会長を務める三年生で、成績は最悪だけど、その真っ直ぐで明るい人柄から、男女問わず誰もが惹かれずにはいられない大モテの生徒だ。
そして俺は、この春赴任してきたばかりの理科教師、阿部亮平。学校生活が始まって数ヶ月、こうして放課後に佐久間と2人きりで補習をする時間にも、俺の心は少しずつ慣れてきてしまっていた。いや、慣れるどころか、距離が近くなるたびにフワッと香る佐久間の甘い匂いや、真剣にノートを見つめる横顔に、俺のほうがドキドキさせられている。インテリでいつもはスマートに立ち回れるはずの俺なのに、佐久間の前では「教師としての理性」を保つのが、日に日に難しくなっているのが分かった。
佐久間「……あべちゃん」
佐久間が、俺の白衣の袖を細い指先でぎゅっと掴んで、上目遣いに俺の顔を覗き込んできた。
阿部「何? 佐久間。学校なんだから阿部先生って、いつも言ってるでしょ」
佐久間「俺さ、あべちゃんのこと、先生としてじゃなくて、一人の男として大好きなんだよね。……だからさ、俺と付き合って?」
やんちゃに笑う佐久間の口から飛び出した、あまりにもストレートな告白。その瞬間、俺の頭は一瞬で真っ白になった。心臓が痛いくらいに大きな音を立てて、顔が熱くなる。
(っ……ダメだ、俺は教師で、あいつはまだ生徒だ……)
俺はいつものあざとい笑顔を完全に無くして、照れるのを必死に堪えながら、佐久間の手を優しく引き剥がした。
阿部「……ダメだよ、佐久間。俺たちは先生と生徒だし、学校のルールだってあるでしょ」
佐久間「ええ〜、関係ないよ! 俺の気持ちは本気だもん!」
阿部「本気でも、今はダメ。……付き合うなら、佐久間がちゃんとここを卒業してからね」
俺が少し低い、真面目なトーンの声でそう告げると、佐久間はピンク色の髪を少し揺らしながら、分かりやすくシュンと眉を下げた。
佐久間「卒業まで、まだあと半年以上もあるじゃん。俺、あべちゃんの特別な一人になりたいんだよ……」
涙目で俺の顔を見つめてくる佐久間。その無防備で、でも俺を真っ直ぐに求める瞳に、俺のなかの「大人の理性」が、信じられないくらいの音を立ててみしみしと軋み始めた。教師としてのプライド、立場、守るべきルール。そんなものが、目の前の一人の生徒の涙だけで、すべてどうでもよくなってしまいそうになる。卒業してから、なんて冷たい突き放し方、本当は俺だってしたくない。今すぐにでも、この細い体を抱きしめてしまいたいのに。
阿部「……っ、ばか。そんな顔、しないでよ」
俺はため息をつきながらも、結局は我慢できなくなって、佐久間の頭を大きな手のひらで優しくよしよしと撫で回した。大きな手のひらの温かさが伝わったのか、佐久間は少しだけ安心したように、俺の手のなかに頭を預けてくる。
阿部「卒業まで、俺だってちゃんと待ってるから。……その代わり、次のテストで赤点なんか取ったら、毎日ここで居残りだからね」
佐久間「あべちゃん……っ。うん、俺、あべちゃんのために勉強頑張る!」
佐久間は一瞬で笑顔を取り戻して、俺の腕にギュッと抱きついてきた。
阿部「こら、離しなさい。誰か来たらどうするの」
口ではそう注意するけれど、俺は佐久間の体を強く拒むことができなかった。付き合いたいと願う生徒と、卒業まではダメだと自分を律する教師。だけど、その鉄壁であるはずの境界線は、すでに半分以上、俺のなかで崩れ去ろうとしていた。
向井said
向井「なぁ、目黒先生。この世界の歴史の年号、どうしても覚えられへんのやけど、どうしたらええ?」
放課後の社会科準備室。俺はデスクの上に教科書を広げて、隣に座る目黒先生の顔を覗き込んだ。
目黒「向井、そこは語呂合わせで覚えるんだよ。ほら、ここを見て」
目黒先生はいつものクールな表情のまま、少し抜けたような優しいトーンで俺のノートにペンを走らせた。目黒先生は新任のくせに国宝級のイケメンで、女子からも男子からもめちゃくちゃモテる人気の先生や。でも、なぜか入学式の日から、ずっと俺のことだけを特別に見つめてくれとる気がする。俺は一年生で、成績はそこそこ、写真部としてカメラばっかり触っとる人気者(自分で言うのもなんやけど!)だけど、目黒先生の前だと、なぜかいつも調子が狂うてまう。今日も、先生の大きな手が俺の手元に触れるたびに、胸の奥がキュンと鳴って顔が熱うなる。
目黒「……なぁ、康二」
不意に、目黒先生がペンを置いて、低い、いつもより真面目なトーンの声で俺の名前を呼んだ。学校ではいつも『向井』って呼ぶのに、2人きりになると、たまにこうやって名前で呼ぶから反則や。
向井「何? 目黒先生」
目黒「俺さ、お前のことが好きだ。先生としてじゃなくて、一人の男として。……だから、俺と付き合ってほしい」
目黒先生のストレートすぎる言葉に、俺は一瞬で目を見開いて、茹でダコみたいに顔を真っ赤にした。
向井「な、何言うてんの、目黒先生……っ// 俺らは先生と生徒やし、付き合うとか……そんなん、まだダメなんちゃうん!?」
俺は照れまくりながらも、必死に先生の胸板を手で押さえて距離を取ろうとした。だって、先生と生徒の恋なんて禁断やし、俺はまだ入ってきたばかりの一年生や。付き合うにしても、普通は『卒業してからね』って先生のほうから言うべきやろ!
目黒「ダメじゃない。俺が今すぐ、お前を俺だけのものにしたいんだよ」
向井「でも、目黒先生は先生で、俺はまだ一年生やし!てゆうか! 付き合うなら、俺がちゃんとこの学校を卒業してからって言うのが、普通やろ……」
俺は一生懸命に正論を突きつけて、めめの理性を引き戻そうとした。だけど、目黒先生は俺の抵抗なんて1ミリも気にしてないみたいで、俺の腰を強引に、でも壊れ物を扱うように優しくグッと自分のほうへ引き寄せた。
目黒「3年も待てないよ。……学校の中では、絶対に誰にもバレないように隠してあげるから。だから、俺の恋人になって」
目黒先生の、男らしい余裕のあるトーンと、絶対に逃がさないという強引な視線。大きな手のひらが、俺の背中を優しく撫でるたびに、俺の体の力がふにゃふにゃと抜けていく。(……っ、この先生、ほんまに強引でずるいわ……)
向井「っ、目黒先生のバカ……。そんなん言われたら、俺、まだダメなんて言えんやんかぁ……っ」
俺は最後は赤くなった顔を隠すように、目黒先生の胸元に顔を押し付けて小さく頷いた。目黒先生は嬉しそうにフッと微笑むと、俺の頭を愛おしそうによしよしと撫で回した。卒業まではダメだと拒む生徒と、その理性を強引にねじ伏せて折れさせてしまう教師。外を濡らす雨の音に紛れて、俺たちの秘密の関係は、誰にも言えない甘い熱気と共に、静かに始まろうとしていた。
コメント
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うわあ、めっちゃ甘酸っぱい…! 教師と生徒の禁断感がたまらないですね。特に目黒先生の「3年も待てない」って強引なところ、逆に康二が正論で抵抗しようとするのに結局折れちゃう流れが最高でした。阿部先生と佐久間の、卒業まで待つって約束するシーンも切なくてじーんときました。各カップルの個性がはっきりしてて、続きが気になります!