テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#連載小説
観察者
310
椿
27
それからだった。
私の周りで、おかしなことが起こり始めた。
最初は、あの利用者さんと関わりのあった職員だった。
突然の事故。
次は別の利用者さん。
原因不明の急変。
そして、私が少しでも関わった人たちが、次々と死んでいった。
しかも――
普通の死に方ではなかった。
事故。
転落。
身体を傷つけられた状態で発見された人。
まるで何かに襲われたような死体。
私は毎日、怯えていた。
仕事に行くのが怖い。
夜になると、廊下の向こうを見られなくなった。
誰もいないはずなのに。
何かがいる気がする。
――来る。
そう思うだけで、身体がこわばった。
あの指。
あの影。
私を指差した、あの瞬間。
私はずっと待っていた。
いつか、あいつが私のところへ来る。
そんな気がしていた。
⸻
ある日。
私は友達と遊びに出かけていた。
久しぶりに笑った。
ほんの少しだけ、あの出来事を忘れられた気がした。
帰り道。
私は何気なくスマートフォンを取り出した。
Googleマップを開く。
3D表示にして、街を眺めた。
「……え?」
画面がおかしい。
道路が揺れている。
建物がぐらぐらと揺れ始めた。
「何これ……」
建物が傾く。
次々と地面へ沈んでいく。
まるで地面そのものが崩れているようだった。
そして画面の奥。
山があった。
その山から――
大量の水が流れ出していた。
川ではない。
濁流。
山を丸ごと飲み込むような大量の水が、街へ向かって押し寄せている。
「……地震?」
私は息を呑んだ。
「ねえ!」
友達の肩を掴む。
「山から水が来てる!」
「地震やって!」
必死に叫んだ。
「逃げなきゃ!」
でも――
友達は、ぽかんと私の顔を見ていた。
「……何言ってるの?」
「え?」
「山? 水?」
友達はスマホを覗き込む。
画面には、何も起きていなかった。
建物は揺れていない。
地面も沈んでいない。
山から水も流れていない。
いつもの街だった。
「……嘘」
私は震える手で画面を見つめた。
さっきまで確かに見えていた。
あの光景が。
その瞬間。
スマートフォンの画面が暗くなった。
黒い画面。
そこに――
人影が映っていた。
私の後ろ。
長い髪。
そして、
ゆっくり上がる腕。
一本の指が――
画面の中から、
私を指していた。
私は振り返れなかった。
怖くて、動けなかった。
すると耳元で、
女の声がした。
「……見えた?」
私は息を止めた。
「次は――」
声が笑った。
「現実になるよ」
その瞬間、スマートフォンの画面が真っ黒になった。
コメント
1件
うわっ……読み終わって背筋冷えた😱💦 Googleマップの3D表示であの光景、しかも友達には何も見えてないっていうのがゾッとする…! ラストの「次は現実になるよ」が頭から離れないよ…続きが気になりすぎて今夜眠れそうにない🥺💔