テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#連載小説
観察者
310
椿
27
現実になった夢
「現実になるよ」
その声が聞こえた瞬間、私は勢いよく振り返った。
――誰もいない。
「……え?」
友達が不思議そうな顔をしている。
「どうしたの?」
「今……誰か……」
言葉が出なかった。
いるはずがない。
だって、私のすぐ後ろには誰もいなかった。
私は震える手でスマートフォンを見る。
Googleマップは、いつもの地図に戻っていた。
建物も道路も正常。
山も静かだった。
「疲れてるんじゃない?」
友達は笑った。
「最近、仕事大変なんでしょ?」
「……うん」
そう答えるしかなかった。
でも私は知っていた。
あれは夢じゃない。
確かに見た。
地面が揺れ、家が傾き、山から大量の水が流れてくる光景。
そして――
あの女。
その夜。
私は自分の部屋で一人、眠れずにいた。
時計を見る。
午前3時17分。
施設で最初の悲鳴を聞いた時間と同じだった。
「……やめてよ」
私は布団を頭までかぶった。
そのとき。
スマートフォンが鳴った。
着信だった。
施設からだった。
嫌な予感がした。
「もしもし……」
『○○さん?』
電話の向こうの職員の声が震えている。
『落ち着いて聞いてほしいんだけど……』
「何ですか?」
『今日、あなたが担当していた利用者さんが……亡くなった』
息が止まった。
「……え?」
『急変だったみたい。詳しいことはまだ……』
私はスマートフォンを握りしめた。
まただ。
また、私が関わった人が死んだ。
電話を切ったあと、部屋は静まり返った。
その瞬間。
――コン。
窓を叩く音がした。
「……?」
――コン。
もう一度。
私はゆっくり窓を見る。
カーテンの向こうに、人影が立っている。
長い髪。
細い身体。
私は動けなかった。
そして――
カーテンが、ゆっくり揺れた。
「……来た」
そう思った瞬間。
スマートフォンが勝手に点灯した。
画面には、見覚えのない写真が表示されていた。
それは――
私の働いている施設だった。
しかも、今撮ったような写真。
施設の正面玄関。
その写真の中央に、
赤い丸がついている。
私は写真を拡大した。
そこに写っていたのは――
私自身だった。
夜勤中の私。
そして私の後ろに、
あの女が立っていた。
「いや……」
私はスマートフォンを落とした。
その瞬間、画面が切り替わった。
一行だけ。
**『あと3人』**
私は息を呑んだ。
「……3人?」
誰が?
何が?
その答えを考えるより先に――
遠くで、サイレンが鳴った。
救急車。
そして、消防車。
私は窓の外を見る。
施設の方向から、赤い光が空を染めていた。
翌朝。
ニュースを見て、私は言葉を失った。
『昨夜、介護施設で火災が発生――』
私はテレビに近づいた。
映像に映っていたのは、
私が働いている施設だった。
「……嘘」
画面の下には、
**「死者3名」**
と表示されていた。
3人。
昨日のスマートフォンに表示された数字と同じだった。
私は震えながらテレビを見つめた。
するとニュース映像の一瞬。
燃えている施設の窓に、
黒い人影が映った。
長い髪。
そして――
こちらを向いた顔。
画面越しなのに、
目が合った気がした。
次の瞬間。
映像が切り替わった。
私はその場に座り込んだ。
「……私のせい?」
その言葉を口にした瞬間、
背後から声がした。
「そうだよ」
私はゆっくり振り返った。
誰もいない。
でも、
鏡には――
私の後ろに立つ女が映っていた。
そして女は、
また一本の指を上げた。
今度は私ではない。
私の横に置いてあった写真。
そこに写っている、
兄を指していた。
私は息を呑んだ。
「……お兄ちゃん?」
女は何も言わない。
ただ、
笑った。
その瞬間、私は悟った。
これは私を殺すためのものじゃない。
私の周りにいる人間を、
一人ずつ消している。
そして最後に残るのは――
私。
いや。
違う。
最後に残るのは、
**私が一番大切にしている人。**
そのとき、スマートフォンが鳴った。
兄からだった。
私は震える手で電話に出る。
「もしもし?」
返事がない。
「お兄ちゃん?」
ザーッ。
ノイズだけが聞こえる。
そして、
小さな声。
「……助けて」
私は立ち上がった。
その瞬間、
電話の向こうで何かが落ちる音がした。
ガシャン――。
そして、
「……見つけた」
女の声。
電話は切れた。
私は家を飛び出した。
その先で待っていたのは、
あの夢で見た景色だった。
空が暗くなっている。
山の向こうから、
轟音が聞こえてくる。
そして――
大量の水が、
こちらへ向かって流れ始めていた。
コメント
1件
うわっ待って待って第3話マジでヤバすぎる…!!😱💦 夢で見た光景が現実になって、しかも利用者さんが亡くなって、さらに火災で3人も…「あと3人」の表示が怖すぎるよ…! 窓の人影、鏡の中の女、兄にまで手を伸ばす展開、心臓バクバクしながら読んだよ…! 「私のせい?」って呟く主人公の絶望が切なくて、最後の水が流れてくるシーンで続きが気になりすぎてもう寝れない…!!😭💦 レナードさん、このホラー展開エモすぎて尊い…!次話待ってます🔥✨