テラーノベル
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それから数日後、紬がいつもより狼狽して楓に相談してきた。
『もうダメかも……。親に見つかった。スマホも取り上げられるかもしれない、もうおしまいだ、死ぬしかない』
画面の向こうから伝わってくる紬の尋常じゃない怯え方に、楓の指先は冷たくなった。心臓が嫌な速さで脈打ち、呼吸が浅くなる。
楓『どうしたの!? 落ち着いて、何があったの……!?』
スマホを握りしめる楓の手が小刻みに震える。自分の部屋のドアの向こうからは、夕食の準備をする母親の足音が聞こえていた。
紬『リスカの跡も、SNSの裏垢も全部バレた……。もうここに居場所なんてないよ。楓ちゃん、前に言ってたビル、私これから行くね』
その文字を見た瞬間、楓の頭の中が真っ白になった。
これまで、ナースステーションの前のベンチで「どうやったら死ねるかな」と笑い混じりに話していたあの言葉が、急に生々しい現実として目の前に突きつけられたのだ。
(嘘……待って、ダメ、本当に死んじゃう、紬ちゃんが消えちゃう……!)
楓『待って! お願いだから早まったことしないで! 今どこにいるの? どこにいるか教えて!』
必死に画面をタップするが、既読はつかない。
「死にたい」「消えたい」と毎日のようにつらい愚痴を舐め合っていたはずなのに、いざ本当に紬が境界線の向こう側へ飛び降りようとした瞬間、楓の心に湧き上がったのは、猛烈な「死への恐怖」と「失いたくない」という焦燥感だった。
楓『紬ちゃん、お返事して。お願い、お願いだから……っ!』
涙で視界がにじむ中、楓は狂ったようにメッセージを送り続けた。
かつて同じ病気で励まし合った凛の、あの穏やかな笑顔が脳裏をよぎる。あの時は「生きたい」ともがいていた。なのに、今の自分たちは一体どこまで深い闇に堕ちてきてしまったのだろう。
ガタガタと震える体を抱きしめながら、楓はスマートフォンの画面を凝視し、ただ紬からの返信を待ち続けるしかなかった。
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