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そして、7月28日金曜日。
美優は、産気づいた。
朝から、なんとなく違和感があったが、
お昼前に、おしるしが…
予定日が8月1日だったので、ギリギリまで
自宅に居て、明日、実家へ帰ろうかと準備していたのだ。
母に頼んで車で迎えに来てもらった。
「クリニックまで送ってもらったら、あとは、大丈夫だから、ここちゃんをお願いね」と、頼んだ。
2人目ということもあり、お産が早く進むかもしれない。1人で入院した。
洋平には、メールで
『そろそろ来たみたいだから、今から入院するね。 ここちゃんは、母に頼んだからお願いね』 と、送っておいた。
昼休み
「えー!部長、すみません、妻が入院したので帰ります!」
「おー杉野くん、どうした?奥さん大丈夫か?」
「あ、すみません、出産なんで!」
「おーそうか、2人目か…なら良かった。驚いたよ。 じゃあ、今日は、半休だな。」
「よろしくお願いします。」
『美優、今から行くね』
『えー大丈夫だよ。仕事は?』
『大丈夫!1人じゃ心配だから…待っててね。』
美優のお母さんに、電話を入れ、
「今から病院へ向かいます。1人じゃ心配なので、 生まれたら連絡しますので、それまで心美のことよろしくお願いします。」
「分かったわ。気をつけてね。」
「はい。ありがとうございます。」
明日は、土曜日。良かった、明日も明後日も休みだ。
親孝行な子だなぁ〜と、洋平は思った。
「美優〜」
「洋平〜!仕事、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。半休もらったから…この前みたいに、会議室で怒ってる時じゃなくて良かったよ。」
「ふふ、ごめんね。でも、あのメールで気持ちが落ちついたでしょう?」
「ふふ、まあな、皆んなは知らないけど…」
「カリカリしないの!洋平らしくないよ。」
「俺、部下には、滅多に怒らないからな」
「そう、その方が今の若い子は、伸びるのよ。怒られ慣れてないから…」
「そうだよな。おかげで尻拭いで、こっちが頭を下げたよ。」
「偉かったね〜課長さん!」
「ふふ〜そろそろ昇進かなあ?」
「え?まだ早いでしょう?」
「まあな、今から皆んな課長を狙いに行く頃だもんな。同期たちは…」
「すごいね〜洋平《《さん》》は…」
「ふふ、何?急に…」
「別に意味はない。」
「そう?まだ、大丈夫なの?」
「うん、まだ大丈夫なんだけど、2人目だし、お産が早く進むかなぁと思って…」
「そっか…一緒に頑張ろうな!」
「ふふ、ありがとう〜」
そう言って、ずっと付き添ってくれた。
「早めに食べといた方がいいよ。夕飯。」
「そうだな、美優、何食べたい?」
「おにぎりかなあ〜」
「じゃあ、買って来るよ。」
コンビニで買って来てくれたので、一緒に食べた。
夜になり、徐々に陣痛の間隔が短くなり、
そろそろかなぁ〜という頃には、やはり、
腰が怠くて…
「うう〜2回目でも、やっぱり腰はダル〜い」
と、言うと、摩ったりツボを押したりして、
痛みを和らげてくれる洋平。
看護師さんが来られて、「ご主人、立ち会われますか?」と、聞いてくださった。
「はい!いいんですか?」と嬉しそう。
「はい、もう全開されましたので…では、ご準備を…」と、服の上にエプロンのような物を着た洋平。
美優は、ここちゃんを産んだ時のことを思い出しいた。
「ここちゃんの時は、洋平、途中で眠くなって寝てたんだよね?」
「あーそうだったよなぁ、美優、もう!会社に行って!って、寝てたくせに〜って怒ってた。」
「だって、疲れてるのは分かるけど、人が痛い思いして戦ってるのに、寝てるんだもん。だから、それなら仕事に行ってくれたらイイのに…って思っちゃったよ。」
「だよな、ごめん。今日は、生まれるまで寝れないよ。お休みだし大丈夫!」
「うん、ありがとう。うぅ〜ん!」
間隔が短くなってきた。
いよいよだ。
「ご主人は、こちらへ」と美優の頭の方へ
もう、子宮口は全開になっているので、
いつ生まれてもおかしくない。
医師が来られて、いよいよ出産!
陣痛の波と共に息む!
痛みを逃がしながら…
最初は、ゆっくりと、
「ヒーフー」と呼吸法を使っていたが、
美優が握る洋平の手は、更に強くなり…
「ヒッヒッフー…ウ〜ン」と、次第に赤ちゃんが 下がって来ているようだ。
美優は、2回目の出産だから、わりと要領が良くなり、息む時には、分娩台にある握り棒を握り、 身体を起こして、ほぼ座るような体勢になる方が産みやすいと、思っているので、洋平の手を離し、
棒を握り、産む体勢に入った。
洋平は、ぽか〜ん
「美優、ガンバレ!」と応援するしかなかった。
そして、医師から「はい、もう次、出るよ!」
と言われ…
「はい、息んで!」
「ウ〜〜〜ン、ハア〜〜〜」
「は〜い!生まれたよ〜」
「ハア〜ハア〜ハア〜」
ようやく洋平は、「美優〜ありがとう〜」と、
美優の手を握り、頭を撫でた。
「う〜ん」と頷く美優
『やっぱり、母はすごい!』と思った洋平
「元気な男の子ですよ〜」と、綺麗になった
息子を見せてくれる看護師さん
「可愛い〜」
「可愛いなぁ〜」
「名前考えないとね」
「うん、何個か考えてる中から顔を見て決めようと思ってたから…」
「一緒に決めような」
「うん」
7月29日になっていた。
7月29日土曜日 午前1時10分
身長49cm、体重3330gで、杉野家の長男として生まれた。
一眠りして、朝、
「名前どうしようか?」
「私、1つ良いと思うのがあるんだけど…」
「俺もある!」
「そうなんだ。何?」
「レン」
「え!ビックリ!私もレン」
「おーそうか〜じゃあ、決まりだな。」
「うん、すごい偶然だね。じゃあ漢字は?」
紙に書く洋平
『蓮・廉』
「蓮か廉がイイなぁ〜」
「私、調べたの。杉野には、『蓮』の方が最高に良いみたいなのよね〜」
「じゃあ、そうしよう!杉野 蓮。うん、カッコイイ〜」
「うんうん、カッコイイ〜じゃあ、早速、月曜日に出生届を出して来るね。」
「うん、よろしくね。
一度帰ってゆっくり寝てくれば?」
「うん、じゃあシャワーも浴びたいし、1回帰るよ。」
「うん、ありがとう。」
「又、すぐ来るね。」
「ゆっくりでイイよ。明日もお休みだし…」
「うん、そうだけど…美優が居なかったら、寂しいし…」
「ここちゃん居るじゃん。かまってあげて。」
「うん、分かった。じゃあ、夕方にもう一回来る。」
「うん、分かった。ありがとう。」
「美優〜」と、ぎゅーっとする洋平。
「ありがとな。」と、額に額をくっつける
「うん」
「美優もゆっくり休んで。」
「うん、少し寝るね。」
と…キスをする洋平
「ふふ」
「ダメだった?」
「ううん、いつもと変わらず、《《どこでも》》しちゃう洋平だなぁと思って…」
「うん。」
耳元で…「ホントは、もっとしたい」
「もう〜!」
「じゃあ、ゆっくり休んでて」
「うん、ありがとう」
洋平は、帰って行き、美優は少し休んだ。
夕方、ホントに又、会いに来てくれた洋平。
しかも、ここちゃんを連れて来てくれた。
「あ〜ここちゃん!」
「ママ〜!」と抱きつく心美。
まだ、よく分かっていないから、なぜ、ずっと居ないのかな?ぐらいに思っているのだろう。
「ここちゃん、あーちゃんと、ジージと遊んでる?」
「うん、あーちゃん。ジージ。」
「お利口さんだね〜」と頭を撫でる。
「早かったね。洋平、大丈夫?少しは眠れた?」
「うん、少し寝たよ。美優は?」
「うん、蓮くんの授乳や食事以外は、とくに何もないからウトウトしてる。」
「そっかあ〜美優、退院したら、しばらくは、実家に帰るよね?」
「うん、だけど、ここちゃんの時よりは早く、家に帰ろうかなぁ?」
「そうなの?」
「うん、だって、少しずつ要らない物を仕分けて処分しないと、引っ越しの時、荷物が多そうだから…」
「そっかー早く帰って来てくれるのは、すごく嬉しいけど…カラダに負担がかからないようにね。俺も一緒にするから…」
「うん!もちろん洋平の物は、自分で仕分けてもらわないと分からないし、重い物はお願いするよ。」
「うんうん、無理して重い物なんて絶対に持っちゃだめだよ。」
「うん。」ジーっと洋平を見る美優
「ん?」
「優しいなぁ〜と思って…」
「いつもでしょう?」と、笑ってる洋平。
「ふふ。家の進行状況は?見て来たんでしょう?」
「うん。なんで分かったの?」
「だって、実家のすぐ裏なのに、見ないわけがないじゃない!洋平が…」
「ハハ、そうだよな。無事に着々と進んでるよ。形になって行くって嬉しいよなぁ〜」
「うん、そうだね。」
ベッドの上に一緒に乗る、ここちゃん。
まだ、1歳半。ママが居ないと寂しいだろうな…
帰る時、やはり「ママも…」と泣いていた。
「ママ、痛い痛いだから、治ったらすぐに帰るからね。」一緒に居られないのは、切ない…
後ろ髪を引かれる思いで、お互いバイバイする。
『あ〜早く帰りたい!』と思った。
美優は、木曜日に退院した。
母と、ここちゃんが迎えに来てくれて、実家へ。
洋平は、ここちゃんの時と同様、毎日美優の実家へ仕事帰りに寄る。
もう、慣れたもので上司である父が居ても平気だ。
2人で仕事の話をしている。
ここちゃんは、そんなジージにも慣れたようで、
良かった。
初めは、「ママ…家…」『帰る!』と言わんばかりに泣いたので、
何度か夜は洋平と家に帰り、一緒に寝て、
翌朝、また実家に預けて出社してくれていたようだ。
「洋平、大変だったでしょう?ありがとね。」
「ううん、大丈夫だったよ。」
「そう?」
「やっぱり、ママ〜!って泣かれると辛かったなぁ〜でも、パパと寝てくれて嬉しかったよ。」
「うんうん、今のうちだもんね〜」
2週間ほどで自宅へ帰った。
自宅に帰ると、いよいよ、4人の生活が始まる。