テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
校庭十周。
デュースはいつも通りのペースで走り始めた。
四周を終えた頃、向こうから見覚えのある人が近づいてくる。
「……エース?」
すれ違った瞬間、思わず足を止める。
「はは、まだ一周しか終わってないわ。
ほら、減速せずに先行っとけよ」
苦しそうな笑顔。
冗談めかしているが、目が完全に死んでいる。
デュースは何も言わず、エースの隣に並んだ。速度を落とし、一緒に走る。
本来なら、もっと速く行ける。
だが、今は心配でそれどころじゃなかった
1周分くらい一緒に走った、その途中。
エースの足が止まった。
「……ぅ゛あっ、くっ…」
急にしゃがみ込み、体が前に倒れそうになる。
「エース!」
駆け寄った瞬間、エースの手が服の裾を掴んだ。
縋るように、必死に。
「ごめ……」
その声は、最後まで届かなかった。
力が抜け、体が崩れる。
デュースは咄嗟に背中に手を回し、体を受け止めた。
エースの体重が、急に重くなった。
「エース、しっかりしろ!」
呼びかけても返事はない。
半開きの目は焦点が合わず、ぐったりと力が抜けている。
倒れる、と思った次の瞬間には、もう腕を回していた。
背中と膝裏に手を入れ、迷いなく持ち上げる。
保健室に行かないと…
それだけを考えて、校舎へ向かって走った。
エースの体は異様に熱く、汗で制服が湿っている。
「起きろ!」
返事はない。
ただただ苦しそうに歪めた顔だけはわかった。
保健室の扉を蹴るように開ける。
「先生!」
中を見回してみても、誰もいなかった。
とりあえずベッドにエースを寝かせ、額に手を当てる。
「……っ」
思わず息を飲んだ。
熱い。
普通じゃない。
急いで氷嚢を作り、震える手でエースの額に乗せる。
首元も少し緩め、呼吸が楽になるように整えた。
「……」
エースは微かに眉をひそめたが、目は開かない。
そのとき、はっと思い出す。
あ、授業中だった…!
体力育成は、まだ途中だ。
このままいなければならないのに、ここを離れるのが怖い。
だが、ここで無断で抜け出しては優等生ではなくなってしまう…!
「……すぐ戻るからな!」
そう言って、デュースは保健室を出た。