テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
医務室の中に、K-Tが二人いる。
一人は入口側。
もう一人は、部屋の奥。
どちらも黒い服を着ている。
どちらも冷静な表情をしている。
そして、どちらも右肩の袖が破れていた。
「俺が本物だ」
二人のK-Tが、まったく同じ声で言った。
カキが一歩後ずさる。
「うわ……。本当に同じだ」
「声まで完全に一緒?」
リリカが震える。
「シェイプシフターの能力が、想像以上に高い」
アオノが端末を確認する。
「見た目、声、動作。かなり正確に再現している」
「なら、二人とも拘束する」
マサカゲが前へ出た。
「正体が分かるまで、誰も動くな」
「待て」
入口側のK-Tが言った。
「俺を拘束すれば、犯人が自由になる」
「奥の奴も同じことを言うぞ」
カキが指摘する。
「実際、言っている」
奥のK-Tが答えた。
「なら、両方とも怪しいな」
「カキ、状況を悪化させないで」
メバルが注意する。
二人のK-Tは、互いを睨みつけていた。
本物なら、仲間を守るために前へ出るはずだ。
しかし、相手も同じ行動を取れる。
「質問する」
マサカゲが言った。
「二人とも、順番に答えろ。まず、俺たちがこのゲームに連れてこられた直後、最初にK-Tへ話しかけた人物は誰だ?」
入口側のK-Tが答えた。
「メバルだ」
奥のK-Tも答えた。
「メバルだ」
メバルが目を見開く。
「どっちも正解……」
「簡単すぎる質問だったな」
ルイが言う。
「シェイプシフターは記憶までコピーしている可能性がある」
「じゃあ、もっと難しい質問にしよう」
セイジが手を挙げた。
「K-Tが初めてメバルに会ったとき、メバルは何を持っていた?」
入口側のK-Tは、少し考えてから答えた。
「麻酔銃」
奥のK-Tも同じ答えを返した。
「麻酔銃」
メバルは首を横に振った。
「違います」
全員がメバルを見る。
「最初に会ったとき、私は麻酔銃を持っていませんでした。持っていたのは、壊れた懐中電灯です」
入口側のK-Tの目が、ほんのわずかに動いた。
奥のK-Tは何も変わらない。
「どちらも外れ?」
カキが尋ねる。
「でも、Kさんなら知ってるはずです」
メバルは二人を見比べた。
「初めて会ったとき、私が怖がっていたから、Kさんは『武器がなくても逃げることはできる』って言いました」
K-Tの表情が少しだけ変わる。
「そんなことを言った覚えはない」
入口側のK-Tが答えた。
「俺が言ったのは、『懐中電灯を捨てるな。暗闇では役に立つ』だ」
メバルの目が見開かれた。
「それです」
奥のK-Tが一歩前に出た。
「記憶違いだ」
「違います」
メバルは、初めて強い口調で言った。
「Kさんは、誰かを安心させるようなことは言いません。役に立つ方法を教えるんです」
カキが小声でつぶやく。
「なんか、すごくKさんらしい見分け方だな」
「つまり、入口側が本物?」
マサカゲが尋ねる。
「まだ決めつけるな」
ルイが制した。
「シェイプシフターは記憶まで読み取れているかもしれない。今の回答だけでは不十分だ」
その瞬間、奥のK-Tがメバルへ向かって走り出した。
「下がれ!」
本物のK-Tが叫ぶ。
入口側のK-Tがメバルの前に立ち、奥のK-Tを受け止めた。
二人の体が激しくぶつかる。
カキが驚いて叫んだ。
「Kさん同士が戦ってる!」
「全員、壁際へ!」
マサカゲが指示を出す。
本物のK-Tは、相手の腕をつかんで押さえ込んだ。
しかし、奥のK-Tは不自然な角度で身体をひねり、拘束を抜ける。
「動きまで同じじゃないか!」
セイジが叫ぶ。
「違う」
レオンが冷静に言った。
「本物のK-Tは、相手を倒すより、メバルから遠ざけようとしている」
確かに、入口側のK-Tは一度も攻撃を仕掛けていない。
相手の動きを受け止め、仲間から離すことだけに集中していた。
一方、奥のK-Tは、何度もメバルへ近づこうとしている。
「Kさん!」
メバルが麻酔銃を構えた。
「動かないでください!」
「撃て」
本物のK-Tが言った。
「俺ごと撃て」
「そんなことできません!」
「早くしろ!」
メバルの手が震える。
奥のK-Tが、その隙に本物のK-Tを押し倒した。
「メバル!」
カキが叫ぶ。
メバルは目を閉じ、麻酔銃の引き金を引いた。
パンッ!
弾丸は奥のK-Tの肩に命中した。
奥のK-Tがよろめく。
しかし、倒れたのはその人物ではなかった。
床に落ちたのは、黒い布の塊だった。
「服だけ?」
アオノが目を見開く。
奥のK-Tの姿が、映像の乱れのように揺らいだ。
黒い服が崩れ、その中から別の姿が現れる。
金髪。
黒いスーツ。
右腕のない男。
ゲームマスターだった。
「ゲームマスター?」
全員が息をのむ。
ゲームマスターは、残った左手で肩を押さえた。
だが、そこには傷一つない。
「テストは終了だ」
「ふざけるな!」
メバルが銃を向ける。
「あなたがノアを倒した犯人なの?」
ゲームマスターは答えなかった。
ただ、入口側のK-Tを見つめている。
「よく守った」
K-Tは立ち上がり、ゲームマスターを睨んだ。
「何が目的だ」
「君たちが、誰を信じるのかを確認している」
「人を倒してまでやることか!」
メバルが怒鳴る。
ゲームマスターは、ゆっくりと首を傾けた。
「ノアは倒されていない」
その言葉と同時に、医務室のモニターが点灯した。
画面には、白い部屋で眠っているノアの姿が映っている。
「ゲーム中の死は、勝敗が決まるまでの仮の状態だ」
「じゃあ、ノアは生きてるの?」
リリカが尋ねる。
「生きているとも言える。眠っているとも言える」
「どっちなんだよ!」
カキが叫ぶ。
ゲームマスターは、初めて楽しそうに笑った。
「その曖昧さこそ、このゲームの本質だ」
次の瞬間、ゲームマスターの姿が消えた。
床には、黒い布だけが残されている。
K-Tは、布を拾い上げた。
内側には、小さな金属部品が縫い込まれていた。
アオノが確認する。
「これは、中央管理室の認証装置と同じ部品だ」
「ゲームマスターが持っていたってこと?」
マサカゲが険しい顔になる。
「なら、ノアを倒した犯人もゲームマスターなのか?」
ルイが尋ねる。
「それは分からない」
K-Tが答えた。
「だが、ゲームマスターは俺たちに何かを隠している」
その瞬間、船内のモニターに新しい表示が出た。
シェイプシフターの正体を確認しました。
残りの裏切り者:2名。
「えっ?」
セイジが画面を見つめる。
「シェイプシフター、追放されてないのに確認されたってどういうこと?」
アオノが記録を調べる。
「システム上では、ゲームマスターがシェイプシフターとして登録されている」
「じゃあ、裏切り者はゲームマスターなのか?」
カキが言った。
その直後、別の画面に文字が浮かぶ。
注意。
ゲームマスターは参加者ではありません。
誰も言葉を失った。
K-Tの手の中で、黒い布が突然消える。
そして、船内の奥から、ゲームマスターの声が響いた。
「次の会議までに、もう一人を見つけることだ」
メバルは麻酔銃を握り直した。
「今度は、絶対に間違えない」
だが、彼女の端末には、見覚えのない新しい表示が出ていた。
あなたの姿をコピーしました。
メバルはゆっくりと振り返る。
背後に、もう一人のメバルが立っていた。
コメント
1件
ああ、めっちゃ面白かったです…! 二人のK-Tが並んで「俺が本物だ」って言い合うところからもうゾクゾクしました。でも私が一番心に残ったのは、メバルが「Kさんは安心させるより役立つ方法を教える」って言う場面。彼女のK-Tへの信頼が言葉の裏に滲んでて、じんと来ました。 で、まさかゲームマスターが偽物だったとは…そして“もう一人のメバル”。このオチは反則級です。続き、気になって仕方ないです😭 お疲れさまでした!
#K-T
#CREATIVE BASE
#人狼
K-Takasaka
153
#K-Takasaka