テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
※戦争・ドリームコア表現あり
あつい、あつい、緑のほのお。
だれもいない、お茶畑のまんなか。
見上げると、パステルグリーンの空の下、おっきな、おっきな、パステルピンクの富士山が、静かに燃え落ちていく。
地面を焼き尽くしていく、不自然に綺麗なほのお。
熱い。熱いのに、身体がパチパチとデジタルバグみたいに爆ぜて、感覚がなくなっていく。
「……なんで、俺、燃えてるんだっけ」
そういえば、こんな光景、みたことあるな。
愛着のあったお茶の匂いも、穏やかだった日常も、みんな燃えてバラバラになった。
なのに、この場所だけは、狂うほど鮮やかな色で燃え盛っている。
頭の奥で、お茶摘みの手拍子の音が、不気味に低く引き伸ばされてずーっと鳴り響いてる。
視界の端に、パチパチとシステム文字が浮かびあがる。
『⚠️警告:熱量データのエラー。オブジェクト【静岡】の灰化を開始します』
「あは、……おれ、灰になっちゃうじゃん……」
服の裾から、身体がじわじわと真っ黒な炭に変わっていく。
現実にいる俺の土地が、爆撃か何かで激しく燃え盛っている証拠だ。
システムはそれを、冷酷にデータとして処理している。
あついなか、ちいさな画面を、熱さで歪む指で、ぽちぽち叩く。
『みんな、にげて』
送信ボタンを押した瞬間、スマホの本体が熱でドロドロに溶けて、液晶から緑色のインクが吹き出した。
[エラー:ハードウェアの溶解。送信機能は喪失しました。]
「……あ、つ、い……」
全身がバグの炎に包まれて、視界がいっきに真っ白な灰の色に染まっていく。
隣にいるはずの愛知や、他のやつらの顔すら、熱さのせいで思い出せない。
「……だれか、……消してよ……」
最後は一握りの黒い灰になって、パステルグリーンの風に吹かれて消えていく。
[通知:完全燃焼によるデータ消失を確認。サーバー【静岡】の区画を閉鎖します。]
コメント
3件
うわ……これ、めちゃくちゃやばいな。 パステルカラーの美しい世界と、データとして灰になる身体のギャップがエグい。システムは平然と「閉鎖します」って言うけど、そこにいた人間のぬくもりとか日常が全部燃えてるんでしょ。最後に送ろうとした「みんな逃げて」が届かなかったのも、静岡という土地そのものがシステムに消されたのも、読んでて胸が詰まった。 ドリームコアの不気味な綺麗さで、ここまで「喪失」を描けるのか。ガチで刺さった。
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