テラーノベル
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※戦争・ドリームコア表現あり
ぱりん、ぱりん。
なにかが割れる、不気味な音。
だれもいない、異人館のまんなか。
見上げると、パステルパープルの窓の外。
狐の目が、瞬きもせずにこちらをじっと見つめてる。
「……あは、あはは。なんで、そんな風に壊れてしもたん?」
京都の目の前には、さっきまで確かにそこにいた、大好きな兵庫の姿。
……だった、バぐの残骸。
現実にいる兵庫の土地が、
一瞬で吹き飛ぶような大爆撃を受けた瞬間、
彼のデータは京都の目の前で、ガラス細工みたいに粉々に砕け散った。
そとでは、つづいているのかもわからない、せんそう。
「うち、聞いてへんよ。兵庫、なぁ、目ぇ覚ましてや……」
いつもは冷徹にシステムを見つめていた京都の頭の奥で、
祇園囃子の音と、神戸のジャズの旋律が、ぐちゃぐちゃに混ざり合って大音量で鳴り響き始める。
処理が追いつかない。
精神のメーターが、一瞬で真っ赤に振り切れる。
視界の端に、パチパチとシステム文字が激しく点滅する。
『⚠️エラー:オブジェクト【京都】の精神データに致命的な破損。再起動が必要です』
「再起動? 嫌どす。そんなんしたら、兵庫が消えてまうやん」
京都は壊れたように笑いながら、床に散らばった兵庫だった
「光の破片」
を、素手でかき集める。
破片が指に刺さって、パステルパープルの血がドロドロと流れ出す。
いたい。
でも、頭の中はもっとぃたい。
片想いの気持ちすら、伝える時間はなかった。
いつも隣にいて、お洒落に笑っていたあいつは、もうどこにもいない。
ちいさな画面を、血塗られた指で、ぽちぽち、叩く。
『ずっと、すきどした』
送信ボタンを押した瞬間、画面の向こうから
「シすて無」
の冷たい合成音声が直接脳内に響いた。
[拒否:宛先【兵庫】は既にこの世界に存在しません。]
「……あは。存在、せぇへん?」
頭の中のシステムが完全に焼き切れ、狐の笑顔のまま、涙だけがボロボロと溢れ出してきた。
言葉が、もう、言葉の形を保てない。
映画見たい
14
「ひょ、ご……ぅちの、……ひょーご……どこ……あは、あはははは!」
しなない身体。
だからこそ、この狂った暗闇の中で、消えたあいつの破片を抱いたまま、永遠に壊れ続ける。
[通知:サーバー【京都】の精神隔離を完了。修復不可能なバグとして、このまま維持します。]
コメント
3件
ええっと……これ、すごく……胸が締め付けられる話でしたね。システムとしての存在と、それでも溢れてしまう“人間の感情”の乖離が、最後の「拒否」と「精神隔離」で完結していて、構成としてとても巧いと思いました。京都のセリフが崩れていく様と、頭の中で混ざる祇園囃子とジャズの表現、あれが彼女の精神の破綻を如実に物語っていて……読んでるこっちまで頭がぐちゃぐちゃになりそうでした。面白い、というより、美しくて痛い、そんな感覚です。