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「あ”〜・・・」
ひとしきり泣いた後、ガラガラになった声で電話をかけたせいで先生にかなり心配されてしまった。
「ぅお・・・」
鏡を見ると、泣いた目を擦ったせいで腫れてしまっている自分の目が見えた。
・・・今の自分がどれだけ惨めなことか。
「、顔洗お」
真っ赤になった目と涙の跡がついた、いかにも”何かありましたよ”とでもいうような酷い顔から目を逸らすように、水を掬い、顔に当てる。 どっちにしろ、目はもうちょい冷やさんとな。
涙の跡がとれた後でも、酷い顔であることに変わりはなくて、その事実にまた涙が出そうになる。
パンッ
両頬を両手で叩いて、気合いを入れる。
・・・だが気合いを入れたところでなんだというのか。学校には休みの連絡を既に入れてしまっているし、そもそも行けるも気もしていないのだが。
、適当に外でもぶらついてみるか。
だが冷やしきれてもいないこの顔では、チラチラと視線を集めてしまうだろう。
家でゆっくりしよう、どうせ明日は土曜日だし。なんて考えながら冷やす手を止める。
・・・月曜日まで顔を合わせることもないだろう。そもそもの話、会ったところで何もないんだろうけど、
あれこれ考え事をしていると段々と眠くなってきた。
さっき起きたばっかりなのにな、なんて思いながら時計を見ると、針は既に9:43を指していて、あぁもうそんな時間なのか。なんて、それすらも一瞬で溶けるように消えていった。
「・・・ま、ぁ、いーか、あした、かんがえ、れば、 」
「ふ、ゎあ、、ねむ、、、ん、」
目覚めた時には全部いい方向に向かっててくれ、なんて。
俺がなにか行動を起こすことで奏斗に嫌われるのが怖くて、恐ろしくて、自分でどうにかしようと思えない自分が嫌になる。
俺は最悪な気分で瞼を閉じ、再び眠りに落ちた。
ピンポーン
やけに頭に響いてくる。
なんだ、この音?
ピンポーン
”ピンポーン”・・・インターホンと同じ音だ。
インターホン・・・?
「、っうぇ”!?痛って!!」
またベッドから転げ落ちてしまい、慌てて立ち上がってモニターまで向かう。
・・・奏斗が心配してきてくれたんじゃないか、なんて淡い期待を込めながら。
「、はい」
〖あ、雲雀?〗
「・・・っは?セラお?!」
〖うわ、インターホン越しでも声ガラガラじゃん。大丈夫?〗
「ぃや、え?、ぅ、ん?だいじょ、ぶ、やけど・・・え、なんできたん?」
〖先生に聞きに行ったら風邪って言ってたけど、連絡しても既読もつかないから。倒れてるんじゃないかって凪ちゃんが泣いて泣いて大騒ぎしてて。〗
そう軽く冗談を言うセラおに、それはないやろ、と笑いながら答える。
実際、セラおとアキラ、2人とも俺のことを心配してくれたのは事実なんだと思う。
・・・でも、奏斗はどうなんやろ。
なんて、セラおの前で、心配してくれている人の前で考えてしまう自分が嫌になる。
今の状態では何でも刺激物になりかねないな。また出てきそうな涙を堪え、別のことを考える。
そういえば、連絡がきていたことには気づかなかったな。と思いながらスマホを確認しようとする、が、スマホは今部屋にあることを思い出した。
〖・・・ぉーーい、雲雀?〗
「っあ?なになに、どした?」
〖ねぇ、本当に大丈夫?四回くらい呼びかけたんだけど。まだ体調悪い?寝てゆっくりしてる方がいいんじゃない?〗
セラおが少し、心配を滲ませた声でそう言う。
「や、大丈夫!ちょっと考えごとしてただけ!」
「スマホ部屋置いてきたなーって」
〖、そう?ならいいんだけど。〗
〖飲みやすい飲み物とか色々買ってきたから、ちょっとだけドア開けれる?〗
まずい。
今の俺の顔は酷いものだ。
セラおのことだ、すぐに一つ一つのことを紐づけて、奏斗関連でなにかがあった、と気がつくことができてしまうだろう。
「ぁ〜、っその、大丈夫やから!」
〖大丈夫じゃないでしょ、大丈夫そうな声してないよ。〗
〖それに、気づいてない?声、落ち込んでる声してるよ〗
「、ゃ、大丈夫、!だいじょぶ、やから、ほんまに、」
〖・・・分かった、顔見せなくていいからこれは受け取って。ちゃんと飲んでね、食べ物も入ってるから。その様子じゃなんも飲み食いしてないでしょ。〗
ちゃんと食べて、寝るのは大事だよ。なんて言葉の節々から感じるセラおの優しさが沁みて、また目がうるついてくる。
あぁ、これだけはちゃんと目を見て伝えたい、と思いドアを開ける。
「っ、ぁ、、っあ、りがとッ」
驚いたように少し目を見開いたセラおは、すぐに目を細めた。
〖・・・どういたしまして。話せそうになったら俺とか凪ちゃんにでも話してね。〗
またね。と言って、買ってきてくれたものを俺に手渡し、セラおはすぐに背を向けて歩いていった。
出るのを躊躇っていた俺のために、ここは住宅街で人目があるから。なんて考えてすぐに帰ったのだろうか。だとしたらセラおは本当に優しすぎると思う。
そんなことを考えながら買ってきてくれたものをリビングに置き、アキラからの連絡を確認するためにスマホを取りに部屋へと戻った。