テラーノベル
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「逆サイ! 逆サイ!」「フリー!」「裏取られんなぁ!」
翌日の練習は夕方からだった。明後日には四回戦の試合が組まれている。
前回の試合でオフサイドをとれず危機を招いたことを教訓に、俺達は入念にディフェンスラインの上げ下げを練習していた。
攻め手と守り手に別れて、ピッチでひたすら上下運動を繰り返す。守り手の中心で指揮をとるのはセンターバックの幸成だった。
一方、攻め手は、ボランチの拓真さんがボール運びをコントロールする。直接ロングボールをフォワードの俺に蹴り込んでくることもあれば、瑞奈達サイド選手を経由して俺にパスを回してくることもある。
この日も瑞奈はサイドでいきいきとプレーしていた。昨夜、歩けなくなったことが嘘のような快足ぶりを見せている。
「ちょっと、なんでそこでワンツーしないの! 足動かなくなるまで走ってよっ」
おまけに、要求レベルが上がっていた。叱られたチームメイトが苦笑いをする。
「よおーし、小休止」
拓真さんが合図をする。メンバーたちがピッチ外に出て、クーラーボックスのスポドリを飲み始めた。
「ああー、美味い」「つか、暑ぃ」「冷えたスポドリ最高」
夕方になっても気温は下がらず、おまけに西の空にへばりついた夕陽が俺たちを焦がしていた。
「でさ、ちょっとテンポが遅いと思うの」
瑞奈が、飲んだスポドリのキャップを閉め、周囲へ視線を配った。
「今回の練習の狙いはオフサイドをとる守り手が主体だけど、攻め手のパスのテンポをもっと速めてもいいんじゃない。実際、次の相手はパスサッカーで有名なとこだし。このままじゃ、相手の速いパスに振り回されそう。そうならないためにもテンポよいパス回しに慣れておかないと」
「組み立てでワンクッション入れるか」
腕組みをした拓真さんが目を瞑る。脳の中で何かを探すように、閉じる瞼に力が込められていた。
「晴翔。前線で張るんじゃなくて、サイドがボール持ったら、いったん下がれ。そこでサイドがコーナーポスト前のスペースまでボールを運ぶ。サイドラインまで深く抉ったら、マイナスでボールを出し、晴翔が受ける。晴翔はそのボールを、後方から上がってきた奴にラストパスする」
「うはぁ、最高っ!」
瑞奈が瞬時に反応した。
「そんなパス回しでゴール出来たら超嬉しくない? でも、果たしてディフェンスがオフサイドとれるかしら。パスで振り回されて足を滑らせないでね」
瑞奈が挑発するように幸成を見る。
「最高っス」
幸成の返答に、全員が爆笑の声をあげた。
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