久しぶりにTOKIWAスイミングスクールにやってきた。以前のところではなく、ここは自分に合った最低限、低価格のレッスンが受けられるスクールだ。
もちろん、あの時もらったウエルカムカードは使わない。ちゃんと自分のお金で入会し、水着も買って持参した。
数名のグループレッスン。
私の担当の先生は、直江 涼平(なおえ りょうへい)さんという人。自己紹介の情報によると、24歳、私より年下の、身長178cmのイケメン先生だ。
髪型は、短すぎないアップバングショート。ツーブロックでさっぱりしてて、爽やかな中に男性らしさを感じる。りりしい眉毛、切れ長の瞳が、さらに男らしいイメージを与えてる。
「じゃあ、着替えてプールサイドで集合しましょう。あっ、双葉さん、5名中あなたが1番お若いですから、元気に明るくいきましょう」
「ふ、双葉さん?」
「僕は生徒さんを名前で呼ぶので」
「あっ、そ、そうなんですね」
「双葉さんも僕を涼平先生と呼んで下さいね。これは、僕の生徒さんみんなにお願いしてることですから」
笑顔が爽やかな人だけど、結構、この人も強引な感じがする。
思わず苦笑いで「わかりました」と答えた。
「はい、皆さん。今日から新しい生徒さんが増えましたから仲良くして下さいね。双葉さんです」
「よろしくお願い致します」
「はーい。よろしくお願いします」
他の4名は、私よりあきらかに年上の大先輩達だった。ここでレッスンを受けているだけあって、みんなすごく元気だ。
「じゃあ、始めます」
涼平先生のレッスンはすごく楽しかった。
体もスッキリして、お姉様達の笑い声が心地よくて。
これなら続けられる……そう思うと嬉しくなった。
「双葉ちゃん。これからもよろしくね」
レッスンを終え、更衣室でお姉様達に囲まれた。
「こちらこそよろしくお願いします」
「ねえ、双葉ちゃん、涼平先生のこと、どう思う?」
「え?」
「私達ね、みんなここ長いのよ。今はもう涼平先生の保護者みたいなもんでね。あの子、あれだけ男前なのに独身、彼女無しなんて寂しいじゃない。だから、この4人で『彼女』を探してあげようと思ってるの」
「本当は私が涼平先生の彼女になりたいんですけどね、さすがに68だとね」
「そりゃ無理だわ~」
「私だってあと40年若かったら立候補したのに。涼平先生が彼氏だったら人生薔薇色だったのにね~」
代わる代わる話してくるお姉様達。
みんなの豪快な笑い声が部屋中に溢れ、明るさで満たされた。
「皆さん、涼平先生のことを本気で心配されてるんですね」
「私達にとったら孫みたいなもんだからね。涼平先生は私らをいつも優しく迎えてくれる。私はその恩返しがしたいんだよ」
「私も……このスクールは生きがいですから。涼平先生にはいつも笑顔でいてほしい。あの人には何としても幸せになってもらいたいわ」