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#そのじん
笑う門には福来る
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#nmnm注意
nanana

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仕事の合間。
楽屋には、大智と舜太だけが残っていた。
舜太はソファに座りながら、スマホを触っていた。
大智はその隣で、ぼんやりテレビを眺めている。
「……大ちゃん。」
「ん?」
「なんか、すごいことなっとる。」
「何が?」
舜太がスマホを差し出す。
画面には、M!LKの公式Instagram。
コメント欄には。
見慣れない言葉が並んでいた。
『これからも二人を応援します!』
『勇斗くん、仁人くん、お幸せに!』
『びっくりしたけど、二人なら応援したい』
『仁人くん、勇気出して話してくれてありがとう』
大智が眉を寄せる。
「……何これ。」
「俺も分からん。」
勇斗の配信切り忘れの件は。
まだ騒ぎが続いていた。
だから最初は。
また何かあったのかと思った。
「炎上したん?」
「いや……。」
舜太が画面をスクロールする。
「炎上って感じちゃうな。」
むしろ。
並んでいるのは祝福の言葉ばかりだった。
そして。
何度も出てくる。
勇斗と仁人の名前。
「……なんで、じんちゃん?」
「それな。」
二人で顔を見合わせる。
何が起きているのか。
まったく分からない。
舜太がさらに調べていると。
「あ。」
「何?」
「じんちゃん、インスタライブしとったみたい。」
「今日?」
「うん。さっきまで。」
大智がスマホを覗き込む。
「見れる?」
「アーカイブある。」
「……見る?」
舜太が大智を見る。
大智も舜太を見る。
数秒。
「「見る。」」
意見は一致した。
舜太が再生する。
画面の中に。
仁人が映った。
『こんばんは』
いつもの仁人だった。
少し笑って。
ファンと話している。
「普通やな。」
「な。」
二人で画面を見る。
けれど。
しばらくすると。
仁人の表情が変わった。
『今日、急にライブ始めたのは』
自然と。
二人も黙る。
『俺から、みんなに伝えたいことがあるからです』
「……何?」
舜太が小さく呟く。
仁人は一度、息を吸った。
そして。
『勇斗が電話してた相手』
大智が画面を見る。
舜太も動かない。
まさか。
そう思った次の瞬間。
『……俺です』
「……。」
「……。」
二人とも。
固まった。
仁人は続ける。
『俺と佐野勇斗は、お付き合いしています』
「……え?」
先に声を出したのは舜太だった。
大智は。
まだ画面を見ている。
数秒遅れて。
「……は?」
ようやく、それだけが出た。
舜太が大智を見る。
「はやちゃんと?」
「……。」
「じんちゃん?」
「そう言うたな。」
「言ったな。」
もう一度。
二人で画面を見る。
そこに映っているのは。
見慣れた仁人だった。
毎日のように一緒にいるメンバー。
「……付き合っとったん?」
「らしいな。」
「いつから?」
「知らん。」
「全然気づかんかった。」
「俺も。」
驚きが大きすぎて。
それ以上の言葉が出てこない。
しばらく。
二人とも画面を見つめていた。
その時。
舜太がふと顔を上げる。
「……待って。」
「何?」
「この前の会議。」
大智もすぐに気づいた。
「……あ。」
勇斗の恋人と。
別れた方がいいのか。
別れなくてもいいのか。
全員で。
真剣に話し合った。
その場には。
もちろん仁人もいた。
舜太は。
しばらく黙った。
そして。
ゆっくり大智を見る。
「……俺、本人の前で別れた方がいいって言っとったんや。」
大智も少しだけ困ったように笑う。
「知らんかったんやから、しゃあないやろ。」
「そうやけど……。」
知らなかった。
勇斗の恋人が誰なのかなんて。
誰も聞かされていなかった。
だから。
あの時は本当に。
自分が正しいと思ったことを言っただけだった。
それでも。
相手が仁人だったと知ったあとでは。
少しだけ。
あの会議の見え方が変わる。
「……じんちゃん、何も言わんかったな。」
舜太が呟く。
「言わんかったな。」
大智も画面を見る。
あの場で。
仁人は。
自分が勇斗の恋人だとは一度も言わなかった。
自分とのことを話されているのに。
全員の意見を。
黙って聞いていた。
大智は少し考えてから。
ぽつりと言った。
「仁人、どんな気持ちで聞いとったんやろ。」
「……。」
舜太は何も答えられなかった。
それは。
今考えても分からない。
ただ。
思い返してみれば。
少しだけ不思議だったことはあった。
勇斗が。
あれほど別れたくないと言っていたこと。
何度反対されても。
手放したくないと。
ずっと言い続けていたこと。
そして。
次の会議。
仁人が。
『……俺は、別れなくていいと思う』
そう言った瞬間。
勇斗が目を見開いた。
『……ほんとに?』
それから。
心の底から安心したように。
『……よかった』
そう言った。
「あ……。」
舜太が声を漏らす。
「何?」
「はやちゃん。」
「うん。」
「あの時、めっちゃ喜んどったやん。」
大智も思い出す。
「……ああ。」
あの時は。
一番反対していたリーダーが。
別れなくてもいいと言ってくれたから。
だから。
あんなに安心したのだと思っていた。
でも。
違った。
「あれ。」
舜太が小さく言う。
「じんちゃんが、別れんって言うたからか。」
「……そりゃ嬉しいわな。」
恋人本人から。
もう離れなくてもいいと言われたのだから。
あんな顔をしたのも。
今なら分かる。
二人とも。
もう一度画面を見る。
『今回のこと』
仁人が真っすぐカメラを見ていた。
『勇斗だけを責めないでほしいです』
舜太の表情から。
少しだけ驚きが消える。
『配信を切り忘れたのは勇斗だけど』
『俺たちの関係を公表しないって決めてたのは、二人だから』
『勇斗一人の責任じゃありません』
「……。」
二人とも。
何も言わなかった。
けれど。
仁人がどうして。
誰にも相談せずに。
一人でこんな配信を始めたのか。
少しだけ分かった気がした。
勇斗だけが。
責められていることが嫌だったのだ。
だから。
自分も当事者だと。
自分から前へ出た。
「……じんちゃん。」
舜太が小さく呟く。
大智も。
黙って画面を見ていた。
会議では。
勇斗の気持ちは。
嫌というほど伝わっていた。
別れたくない。
手放したくない。
仕事も。
M!LKも。
恋人も。
どれも大切だと。
何度反対されても。
一度も気持ちを変えなかった。
だから。
勇斗が恋人をどれほど大切にしているのかは。
もう分かっていた。
けれど。
仁人の気持ちは。
知らなかった。
最初は。
自分から別れた方がいいと言っていたから。
リーダーとして。
勇斗の仕事やM!LKのことを考えて。
そう判断したのだと思っていた。
でも。
今。
画面の中の仁人を見ていると。
それだけではなかったのだと分かる。
勇斗を守るために。
離れようとした。
そして今度は。
勇斗を守るために。
自分から隣へ立った。
選んだことは。
まるで逆なのに。
どちらも。
勇斗のためだった。
「……なんか。」
舜太がぽつりと呟く。
大智が横を見る。
「何?」
舜太は。
画面の中の仁人を見たまま。
少しだけ笑った。
「じんちゃんも、そんなにはやちゃんのこと大事やったんやな。」
大智も。
画面へ視線を戻す。
「……そうやな。」
短い言葉だった。
でも。
それだけで十分だった。
勇斗が。
仁人を手放したくなかったように。
仁人も。
勇斗を守りたかった。
ただ、二人のやり方が。
違っていただけだった。
やがて。
ファンから温かいコメントが流れ始める。
『二人とも幸せになってね』
『話してくれてありがとう』
『これからも応援するよ』
仁人は。
一つずつ確かめるように目で追っていた。
そして。
何度か瞬きをする。
『……泣かないよ』
そう言った直後。
一粒の涙が頬を伝った。
「泣いとるやん。」
大智が小さく笑う。
舜太もつられて笑った。
「じんちゃんやなぁ。」
けれど。
その声は優しかった。
二人とも。
最後まで配信を見た。
仁人が少し泣いて。
温かい言葉に安心したように笑って。
いつものようにファンと言い合って。
最後に。
『勇斗と出会えたことを、後悔したことはありません』
そう話すところまで。
やがて。
配信が終わった。
画面が暗くなる。
しばらく。
二人とも何も言わなかった。
最初に口を開いたのは。
舜太だった。
「……びっくりしたな。」
「めちゃくちゃ。」
「まさか、はやちゃんとじんちゃんとはな。」
「ほんまにな。」
同性だったことも。
相手が仁人だったことも。
全然気づかなかったことも。
もちろん。
驚いた。
でも。
それ以上に。
二人が。
思っていたよりずっと。
お互いを大切にしていたことを知った。
「でも。」
舜太が少し笑う。
「よかったな。」
大智も小さく笑った。
「うん。」
お互いのことを思って。
あれだけ悩んでいた二人が。
最後には。
一緒にいることを選んだ。
そのことが。
素直によかったと思った。
「明日。」
大智が言う。
「おめでとう言おか。」
「うん。」
舜太も頷く。
「二人ともにな。」
「せやな。」
勇斗と仁人が付き合っている。
まだ、少し不思議だった。
でも、応援したい。
幸せになってほしい。
それは。
二人とも同じだった。
そして。
きっと。
そのうち慣れる。
二人が恋人同士だということにも。
今までと。
そんなに変わらない。
この時の舜太は。
本気でそう思っていた。
コメント
1件
ああ、この話…大智と舜太が仁人の配信を見てる視点がめっちゃ良かったわ。特に「あの会議の時、仁人どんな気持ちで聞いとったんやろ」ってとこでグッときた。自分が当事者なのに黙って意見聞いてて、しかも最終的に「別れなくていい」って言ったの、勇斗を守るためだったんだなって。お互いを大事にし合ってるのが伝わってきて、ほんとよかったなあって思った。二人ともにおめでとう言おうってところが、仲間の優しさで泣ける。