テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
生徒桃×養護教諭黄③
上履きを踏んづけながら、教室への廊下を歩く。
よしだじんと。仁ちゃん。うん、いい感じ。
「おはよぉさん!」
そんなことを考えながら歩いていると、後ろからポンと肩を叩かれた。
立ち止まって振り返ると、ちょっと視線を下げた先には見慣れた顔。
「今ごろ登校かよ、フリョーだわぁ」
「お前にだけは言われたないんやけどぉ」
太智はそう言って、掛けていたヘッドホンを外しながらにやっと笑った。
俺と太智は同クラで、向かう教室は一緒な訳だから、また再び廊下を並んで歩きだす。
「でもほんま、ええこになったやん勇斗」
「は?」
「最近、ガッコサボるどころか遅刻もせんとマジメにかよとるからさぁ。えらいえらい!」
「あのなぁ、だいちくん知ってるぅ?コドモはベンキョーすんのがシゴトなんだよぉ」
「うっわきもちわるぅ!」
なんやねんほんまにぃ!、と爆笑しながら俺から離れる太智。ほんとだよな、なに言ってんだろ俺。
「ベンキョーゆうか、勇斗の目あてってアレやんなぁ」
太智は、階段を上がる前に今歩いて来た廊下をちらりと見て俺を見上げる。きっとこいつはさっき俺が出てきた扉を見たんだろうが、さすがにアレは失礼だろアレは。
「仁ちゃんな」
「じんちゃんん??おまえ、いつの間にそんな仲良くなってん?」
「俺が勝手に呼ぶことにした」
「はぁ〜…いやぁなんか、ほんま変わったよなぁ、勇斗」
「うっせ」
どうせ呆れた顔をしてるんだろうから、真っ直ぐ前を向いたまま俺は歩き続ける。
「……まぁでも、なんかよかったわぁ」
視界のすみでうんうんと頷く太智が見えて聞き返す。
「なにが?」
「なにがって、勇斗に兄弟以外にもキョーミもてるヤツができて。やんか」
そう言われ、俺は思わず振り返って太智の顔をまじまじと見る。
「なにぃそのカオ。イケメンやで?」
「…それ、元からな?」
「いやそらないわ、あっははははいっだッ!」
笑う太智の頭を思い切りシバいてからまた前を向き、階段を登りきって廊下を歩く。
「いったいなぁ~、これ以上アホんなったらはやとのせいやからなァ!」
「それ以上アホにはならんから安心しろって」
「いぃーだ!」
歯を剥き出しにして、子供っぽく煽ったあと、俺を追い抜いて走り出す太智の背中を見ながら、思い出す。
居心地のいいソファに、羽織られる白衣。
俺の頭からつまみ上げた桜の花びらと、頬にえくぼを作って笑う顔。
───────『いってらっしゃい』
保健室から出るとき、言われた言葉。
…いってらっしゃいなんて言われたの、いつぶりだろ。
「…………………いってきます」
そんでまた、そこに帰ってきます。
そうしたら仁ちゃんはきっと迷惑そうに、でも。笑って迎え入れてくれるんだろうな。
「おっ、珍しくまだカイセン喋ってんで!」
ガラリと扉の開けられる音と、おもしろがる太智の声を上の空で聞きながら。
俺は太智の後に続いて、ホームルームの続いているらしい教室へと入った。
→カイセンと遅刻児たち
「はいまた遅刻ー」
「さーせんしたぁ!」
「さーせんカイセン」
「君たちさぁ、いい加減にしないとそろそろ退学にしちゃいますよ?」
「担任にそんな権限ないと思いまーす」
「さのくんとおんなじいけんでぇーす」
「生意気だなぁ~、じゃあ停学。」
「じゃあて!じゃあてなんですかぁ!?じゃあでさらっと停学にせんといてください!」
「うるさいなぁ。子どもは先生の言うこと聞いてればいいんですよ」
「横暴だ!みんな、キョーシが横暴してっぞ!」
「はいはいはいはい。みんなー、こんなおバカさんたちはほっといて1時間目音楽だから遅れないように行きましょうねー」
「カワイイ生徒に向かってバカっていうなバカって!」
「そうやぞぉ!きずつくやろぉ!」
「それじゃ音楽がんばってー。村田先生寝てたら起こしてあげてくださいねー」
「「 スルー!? 」」
next….
何だかんだ仲良しな神秘担任と遅刻児たち。
そしてまさかの音楽ドジっ子担当さん←