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この世界はスキルと少々の実力が全てだ
この世界には「スキル」と呼ばれる能力がある
スキルは、平均齢三年で覚醒する
これは、そんなスキルに恵まれなかった一人の少年の物語
広大な屋敷の一室で、元気な赤ん坊の雄叫びが響き渡る
伯爵家、「モンスン家」の屋敷の中で生まれた
名は、「ニーノ・モンスン」
屋敷の者全員が彼の出産を待ちわびた
そんな中、誰よりもニーノの出産を喜んだ人物が一人
「あぁ、愛しの我が息子よ、お前は我がモンスン家の跡継ぎとなるのだ」
ニーノの父、「ハリケス・モンスン」であニーノには現状、2人の兄がいた
しかしそんな中、ニーノが跡継ぎとなる
その原因の一つが「スキル」であった
通常、スキルは三歳で覚醒するものなのだが
ニーノは生まれた瞬間からスキルが覚醒していた
それ故にニーノは兄二人を出し抜いて、伯爵家の跡継ぎとなるのであった
そう、この世界はスキルこそ全てなのである
だからこそ、生まれる瞬間からスキルを獲得しているニーノは、まさに天賦の才能だとも言われた
「さぁ、お前のスキルを見せてごらん」
そうハリケスが言うと多くの召使いの中から魔法使いが一人出てきて、何やらニーノに魔法をかけている
「ハリケス様、鑑定が完了しました」
魔法使いが言うと、ハリケスは嬉しそうに聞いた
「どのようなスキルなのだ」
「その……空気操作……です」
「空気操作だと?」
魔法使いが渋々答えるとハリケスは顔をしかめた
それもそのはず、スキル「空気操作」などモンスン家……いや、歴史上においても耳にしないスキルだからだ
「そのスキルの内容はなんだ」
「…………」
魔法使いは沈黙を続ける
部屋に響くはニーノの泣き声だけだ
「なんだ、言ってみろ」
「……っその、大気を操る……ただそれだけです」
「なんだと?」
「本当にそれだけなのか!?」
「……はい」
驚くハリケスと、ザワつく召使いたち
「はぁ、まさかとんだハズレを引くとはな……」
そう言い残してハリケスは部屋を出た
六年後
ニーノが生まれ、六年が経った
あの日以降、ハリケスはニーノと顔を合わせることは無かった
それどころかニーノを屋敷の端に住まわせた
部屋にはベッドとトイレのみがあり、ドアは外側から鍵がかけれるようになっている
唯一ある娯楽も、一冊の本であった
その本も、母親から4歳の頃貰ったものであり
それ以降一度も部屋に来ていない
部屋に来るのは毎日三度の食事を運ぶ召使い、食べ終わった食器を取りに来る召使いの二人のみだった
二歳の頃までは排泄物を取り除くための召使いがいたが、三歳になる半年前トイレで排泄する事を教えられ、それ以降来ていない
食事を運ぶ召使い達も予定の時間よりもズレることが度々あった
この世に生まれて六年、生まれた頃に授かった天賦の才能も、今や使えないゴミも同然
しかし、そんなニーノにも夢があった
それは母がくれた一冊の本に登場する英雄。
ニーノは何度も何度も読み返す度に、「自分もこの英雄のようになれたら」と思っていた
だが、それは叶うはずのない夢物語
自分には縁のない話だと感じながらも夢を見る
そんなある日、父ハリケスから呼び出された
約六年ぶりの外出
何事かと思い執務室に入る
「お父様、何の御用でございましょうか」
「ニーノ、お前にはこの家を出ていってもらう」
「……え?」
弱々しく発せられるその言葉には、驚きを隠せずにいた
入るや否や、いきなり無機質な声で届いたその言葉
ハリケスは続ける
「お前に、我がモンスン家を名乗る資格はない、早急にこの屋敷から立ち去れ!」
そう投げるように吐かれた言葉はニーノに深く刺さった
まだ六歳とは言え、本のお陰で言語は習得した
「屋敷から立ち去れ」
この言葉の意味を、ニーノは深く、重く重く理解していた