コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
2章 南鳥島の謎
日本本土から1950km離れた海域
巡視船たかつき《午後 11時30分》
池船長は船橋で航海長と南鳥島へのアプローチを考えていた。
「航海長、南鳥島にアプローチする方法が他にあると思うか?」
航海長は眉をひそめて池船長に向き合う。
「南鳥島は包囲三角形の島です。島の南西には海上自衛隊の滑走路があると思われます…が、炎が壁のように立ちはだかっているため…ヘリや航空機での上空からのアプローチは不可と思われます。」
「そうか…海面にも、炎が立ちはだかっているのであれば…巡視船でも島に近ずく事はできないな。」
1つの蛍光灯が、地図を照らす。南鳥島は三角形型の島で民間人は居ないもののそこには、気象庁職員や加工湾作業員といった作業員達が多く滞在しているのだ。
「航海長、他に南鳥島に関するデータや地図はないのか?」
航海長は横に首をふる。
「いえ…それが、南鳥島に関するデータはなく…地図はこれだけでした。2010年頃には南鳥島に関するデータや資料は海上保安庁にもあったのですが…防衛省がすべて持って行きました。唯一残っていたのがこの地図です。」
池船長は頭をかく。
「防衛省が持っていっただと…?どういう事だ…」
「どうでしょうね…調べてみたのですが、南鳥島近海には、”海山”と呼ばれる巨大な海底火山がある事が分かりました。」
「海底火山だと?」
池船長は疑問そうな表情を浮かべ机に手をつける。
「はい。海面から800〜2400メートルの地点にある巨大な海底火山です。」
「その海底火山がどうかしたのか?」
「最近発見されたのですが…」
航海長は分厚い資料本を机に置く。
「これは南鳥島周辺の海底火山の海底状況の資料なのですが、近年南鳥島近辺の海底火山で”海底油田”が発見されたそうです。」
「…海底油田…なるほどな…おかしいと思ったんだ。”石油が引火して爆発したなんて”。だが…どうやって海底から石油を引っ張って来ているんだ…」
「例えるなら…血液検査で注射針で血管から血液を抜くのと同じやり方をしていると思われます。石油断層に巨大な管を差し込み、そこから石油を引っ張って来ているのでしょう。」
池船長はさらに疑問そうな表情をする。
「なんでお前…そんなこと知っているんだ…?」
「先程、たかつきの海底スキャナーで南鳥島から包囲50kmをスキャンしたのですが…明らかに海底内に巨大な管のようなものが通っていました。」
航海長は透視された海底の図を机に広げる。
「なんだこれは…!?」
池船長は目を見開き図を見つめる。南鳥島から枝状に巨大な管が海底に広がっていた。
「この巨大な管は…どこに繋がっている…」
汗を流しながら問い詰める池船長に航海長は答える。
「南鳥島の…巨大石油タンクです…」
「その近くには何がある…」
航海長は唾を飲み答える。
「爆発源の火力処分場です…」
「もし…この巨大石油タンクが熱により破損し石油がさらに火力処分場に流れたら…南鳥島周辺は簡単に吹き飛ぶぞ…」
さっきまで、冷静を保っていた航海長だが池船長の発言に焦りの様子が見えてくる。
「しかし…政府はなぜ海上保安庁も知りえないようなものを隠蔽したんですかね…?」
「”国家機密”だからだろう…それに、こんな技術…世界に公開することなんてできないだろう…日本がこんな技術を使っていると世界に知れ渡れば…まぁ、まず日本は得をしないからな。」
「な、なるほど…。ん?ひとつ疑問に思ったのですが…」
池船長は疑問に思う航海長に目を向ける。
「どうした?」
「いえ…これほど巨大な管で一気に石油を引くとなると…莫大なエネルギーを使用すると思います。しかしどこからそんなエネルギーを…」
航海長の言葉に、池船長も確かに疑問を抱く。
「いや…ま、まさかな…」
すると、徐々に航海長が焦りだす。
「なんだ…大丈夫か…?」
「…池船長…もしかしたら南鳥島は…”原子力”を利用しているのでは…?」
航海長の言葉に、池船長は言葉を拒む。
「原子力…核エネルギーを利用していると言うことか…?」
「はい…こんな莫大なエネルギー…核エネルギーでしか得られないかと…。」
「もしそうなら…火力処分場なんて甘いこと言ってる場合じゃないぞ!もし核エネルギーを刺激してしまったら…原子力爆弾を爆発させたのも同然だ…!」
航海長も焦りながら言う。
「核エネルギーですから…さすがに強固な場所で管理されているとは思います…しかし、火力処分場が膨張爆発を起こして13時間…核エネルギーを刺激するのも時間の問題です…。」
池船長は机を叩く。
「クソ!どうすれば…!」
「池船長…まずは、南鳥島の作業員の救助を最優先にしましょう。核エネルギーへの対応はその後でも…」
池船長は少し冷静さを取り戻す。
「あぁ…そうだな…。よし、明日の明朝より再び南鳥島に急行する…。」
「分かりました。」
航海長は頷く。池船長は頭を抱えながら船長席に座る。
「…核エネルギーを隠蔽して使用するとは…日本政府は何を考えているんだ…」
いくら考えても答えが出ない疑問に池船長はさらに頭を抱える。しかし、重大な隠蔽国家機密が関わってくると自衛隊が動けない事については辻褄が合う。池船長は頭を抱えながら、夜の海面を船橋から眺めていた。月の明かりが海面を輝かせ、綺麗な風景が広がっていた。
続く…