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はんぎょ
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#ふかこじ
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日曜日。
康二は待ち合わせ場所へ向かいながら、何度もスマホを確認していた。
今日会うのは、いつものカフェの店員とお客さんとしてではない。
仕事でもない。
――翔太と、二人で会う。
それだけなのに、朝から少し落ち着かなかった。
待ち合わせ場所に着くと、少し離れたところに帽子を深くかぶった男性が立っていた。
「康二?」
「翔太さん……!」
翔太が小さく手を上げる。
「ごめん、待った?」
「いえ、俺も今来たところです」
「そっか。じゃあ行こ」
並んで歩き始める。
康二は少し緊張していた。
何を話せばいいんだろう。
そんなことを考えていると、翔太が横からちらっと見る。
「なんか今日、静かじゃない?」
「え?」
「店ではもっと普通に喋ってたじゃん」
「それは……仕事だったので」
「じゃあ今は?」
「……今は、ちょっと緊張してます」
正直に言うと、翔太が笑った。
「なんで?」
「だって翔太さんと二人で会うの、初めてなので」
「俺も同じだけど」
「……そうなんですか?」
「うん」
その一言で、少しだけ緊張がほどけた。
*
二人が入ったのは、落ち着いた雰囲気のカフェだった。
席に着いて、メニューを眺める。
「康二、何食べる?」
「うーん……これにします」
「それ甘そう」
「翔太さんは?」
「俺はこっち」
注文を終えると、少し沈黙ができた。
気まずいわけではない。
ただ、二人ともまだ距離感を探している。
翔太がストローをいじりながら、ふと口を開いた。
「……ねえ」
「はい?」
「いつまで敬語?」
「え?」
「俺、康二と普通に喋りたいんだけど」
康二は少し目を丸くする。
「でも、翔太さんのほうが年上……」
「ほぼ同い年じゃん」
「そうですけど……」
「じゃあタメ口でいいよ」
「……ほんまに?」
思わず出た。
翔太が一瞬止まる。
「……今の、関西弁?」
康二は「あ」と小さく声を漏らす。
「……忘れて」
「いや、なんで?笑」
「普段は標準語で喋ってるから……」
「へえ。関西弁なんだ」
翔太が少し楽しそうに笑う。
「じゃあ、タメ口で喋ってみてよ」
「急に言われても無理やって……」
「ほら、出た」
「もう!」
康二が笑う。
翔太も笑う。
さっきまであった妙な緊張が、いつの間にかなくなっていた。
「じゃあ、俺もタメ口にする」
「……うん」
「これでいい?」
「うん。なんか変な感じやけど」
「俺も」
二人で顔を見合わせて笑った。
それから少しずつ、康二の言葉に関西弁が混ざるようになった。
「それ美味しそうやな」
「翔太、それ一口ちょうだい」
「え、急に呼び捨て?」
「……あ」
「今のもう一回」
「嫌や笑」
「なんで?」
「恥ずかしいから」
翔太は楽しそうに笑った。
「じゃあ、慣れるまで待つ」
その言葉に、康二も笑う。
――まだ二人は恋人じゃない。
でも、この日を境に。
「翔太さん」と「康二」だった二人は、
少しずつ、
「翔太」と「康二」に変わっていった。
そして帰り道。
翔太がふと、
「今日、楽しかった」
と言った。
康二も、
「……俺も、めっちゃ楽しかった」
と笑った。
その言葉だけは、もう敬語に戻らなかった。
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