テラーノベル
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日曜日に初めて二人で会ってから、数日。
康二は仕事の休憩中、スマホを眺めていた。
画面には、翔太とのトーク画面。
数日前までは「翔太さん」と呼んでいたのに、今はもう――
康二:今日撮影なん?
と送っている。
しばらくして、
翔太:そう。朝からずっと
康二:大変やなぁ
翔太:……出た
康二は思わず笑った。
康二:何が?
翔太:関西弁
康二:ええやん別に笑
すぐに既読がつく。
翔太:それ好き
「……え?」
康二は画面を見つめた。
康二:何が?
数秒後。
翔太:康二の関西弁
思わずスマホを伏せる。
顔が熱い。
(……なんなん、もう)
しばらくしてスマホを見ると、またメッセージが届いていた。
翔太:普段あんまり出ないから余計に
康二:仕事中は標準語にしてるからなぁ
翔太:もったいない
康二:なんで笑
翔太:なんか距離近く感じる
その言葉に、康二は少しだけドキッとした。
*
それから数日後。
翔太の雑誌撮影が、また康二の働くカフェで行われることになった。
翔太が店に入ってくる。
「おはようございます」
スタッフにはいつもの丁寧な挨拶。
そして、康二を見つける。
「おはよ」
「おはよ」
自然に挨拶を交わしたあと、翔太が小さく笑った。
「今日、関西弁出る?」
「出ぇへんよ」
「出た」
「もう!」
翔太が笑う。
その様子を見ていたスタッフが、
「二人、仲いいね」
と言った。
康二は一瞬固まった。
翔太も少しだけ間を置いて、
「……まあ、最近よく話すんで」
と答えた。
それ以上は何も言わない。
でも、康二の心臓は妙に速かった。
*
撮影の合間。
翔太がカウンターの近くまでやってくる。
「康二」
「ん?」
「この前のカフェ、また行かない?」
「ええよ」
「……やっぱそれいいな」
「何が?」
「その『ええよ』」
翔太は少し嬉しそうだった。
「なんか、康二って感じする」
「どういう意味なん笑」
「そのままの意味」
康二が笑う。
翔太も笑う。
けれど、少しして翔太がふっと真面目な顔になった。
「……俺さ」
「ん?」
「康二といると、なんか楽」
康二は何も言えなかった。
「仕事だと、ずっとちゃんとしてなきゃいけないから」
翔太は小さく息を吐く。
「でも、康二といるときは普通でいられる」
その言葉が、胸に残った。
康二は少しだけ笑って、
「じゃあ、普通でおったらええやん」
と言った。
翔太が顔を上げる。
「……それ、いいな」
その瞬間。
スタッフから声がかかった。
「翔太さん、次の撮影お願いしまーす!」
「あ、はーい」
翔太は立ち上がる。
そして歩き出す直前、振り返った。
「康二」
「ん?」
「また連絡する」
「うん」
翔太が撮影場所へ戻っていく。
康二はその背中を見ながら思った。
――もっと、この人と話したい。
その気持ちが何なのか。
まだ、康二自身にも分からなかった。
でも翔太のほうは。
撮影に戻りながら、さっきの「ええよ」を思い出していた。
そして、誰にも聞こえないくらい小さな声で呟く。
「……やっぱ好きだな、あれ」
もちろん。
その「好き」が、関西弁のことだけなのか。
それとも――
別の意味なのか。
翔太自身にも、まだ分からなかった。
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はんぎょ
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