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ソルテラ家の屋敷から王城までは移動に一日かかるため、夕方ごろに馬車をソルテラ家御用達の宿場にとめ、明日に備えないといけない。

宿場といっても、オリバーを含む七名が泊れる大部屋を借りるのではなく、宿主が貸し出している一軒家を借りる。それも豪華な庭と噴水が付いている裕福な家庭が購入するような家だ。


(オリバーさまって、気さくに話しかけてくれるから忘れちゃうけど、れっきとした貴族なんだよね)


私は滞在する一軒家を見上げ、先頭にいるオリバーを見た。

今も、使用人と談笑している。

平民に分け隔てなく接してくれるので忘れそうになるが、オリバーは広く豪華な屋敷をもち、数十人の使用人を雇えるほど財力のある伯爵貴族。


「エレノア! なにぼーっとしてんだ。夕食の支度に入るぞ」

「はい!!」


オリバーの後姿を見ながら、ぼーっと歩いていると、シェフに声をかけられた。

私はその声で我に返り、駆け足でオリバーたちを追い越してゆく。



夕食を食べ終え、割り振られた部屋に自分の荷物を置いた。

あてがわれたベッドシートの上に座り、はあと疲れを吐き出した。


「じゃ、私はオリバーさまのお世話をしてくるから」

「はい。おやすみなさい」


メイド長に代わり、オリバーの付き人を頼まれてた先輩は、そう言って部屋を出て行った。

自身の就寝前に主人のもとへ向かい、命令があるかないか確認しに行ったのだ。


「化粧するから予定より早く起こすからね」

「はい」

「ちゃんと起きるのよ」

「わかりました……」


先輩は化粧の約束をした私に早起きするよう言う。

私の化粧は単なるわがままで、オリバーの予定には入っていない。だから、朝早く起きる必要があるのだ。


「おやすみなさい」


私はベッドに寝転がり、毛布を体にかけた。

そして瞼を閉じて、深い呼吸を繰り返す。しばらくして私の意識は遠くなり、眠りについた。

そのまま朝の陽ざしが顔に差すまで目覚めないつもりだったのに、それは大きな物音によって遮られた。


「はっ」


始めは夢、そう思った。

ばっと上体を起こしたのはいいものの、辺りは暗く朝ではないことが分かる。

起こされた物音も、その後は何も聞こえない。

やっぱり、夢だったんだ。

そう思い、私は大きな欠伸をして再び横になろうと、毛布に手をかけ、身体をベッドに入れたところで、私の耳元でキンとするほどの大声が聞こえた。


「えっ、な、なんですか!?」

「……下の階の窓が割られたわ。多分、私たちの財産や食料を狙う強盗じゃないかしら」

「ご、強盗!?」


そんな話、【時戻り】では聞いていない。

オリバーが王城へ向かった三泊四日の旅では、彼に同行していた使用人とメイドは”トラブルなし”とメイド長と執事長に報告していた。

強盗に襲われたなら、はっきりと報告しているはずだ。


(もしかして、強そうな人とオリバーさまがこの場で強盗を撃退したから、なかったことにされてる?)


あるいはオリバーに口止めされているかだ。


「わ、私たちはどうすれば……」

「まずは、部屋にオリバーさまがいるか確認。それからオリバーさまの指示を仰ぐ」

「わ、分かりました」

「慌てないで、落ち着いて行動すること。あと、勝手に一人にならないでよ」

「はい」


何をしたらいいのか全く分からない私は、早口で先輩に次の行動を問う。

対して先輩は冷静で、次の行動をしっかり考えていた。

この人について行けば大丈夫。

予想もしない展開、自分が襲われるかもしれないという恐怖に身体を震わせながら、私は先輩の後ろをついていった。


私たちはオリバーの部屋へ向かう。

向かう途中、強盗がこの場をうろついていないかなど、細心の注意を払って進んだ。


(……ドアが開いてる!?)


オリバーが眠っていた部屋はドアが開いていた。

にも関わらず、シンと静まりかえっていることから強盗と対峙しているわけではなさそうだ。

その部屋に入っても、オリバーの姿はなかった。


「オリバーさまがいません!」

「……」


私は見て分かる状況を先輩に報告する。

先輩は黙って考え事をしていた。


「広間へ行きましょう。きっとオリバーさまと強盗はそこにいると思うわ」

「オリバーさまが!?」

「エレノア、落ち着いて!」


私はオリバーに何かあったのだと慌てふためいた。

冷静に考えれば、今までの【時戻り】でちゃんと屋敷に帰ってくるという未来を私は知っている。

今の強盗騒ぎで、オリバーが死ぬことはない。

でも、今の私はオリバーが強盗と対峙しているということで頭がいっぱいで、それどころではなかった。


「戦闘の音が全く聞こえてないでしょ。きっとオリバーさまが強盗を捕縛したに違いないわ」

「静かですけど……、逆ってことも――」

「私たちの主人はカルスーン王国最強の魔術師よ」


混乱している私を先輩がいさめてくれる。

そう。私が仕える主人は優しい性格ではあるものの、カルスーン王国の最終兵器、【太陽の英雄】の家系。


「その辺の強盗に負けるわけがないでしょ」


広間に着くと、五人の強盗が縄で手足を捕縛されていた。

彼らの前には杖を持ち、険しい顔をしているオリバーがいる。


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