テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
その日は朝からロケだった。
🩷「阿部ちゃーん!次こっち!」
💚「はいはい、今行くよ」
いつもの佐久間。
元気で、騒がしくて、太陽みたいに明るい。
その笑顔を見ていると、
昨日の夜の出来事が嘘のように思えてしまう。
💚(同じ姿なのに……)
💚(本当に別人なんだよな)
そんなことを考えているうちに、
ロケは無事に終わった。
だがその夜。
💚「……はぁ…」
体が妙に重い。
頭もぼんやりしている。
🩷「え!?阿部ちゃん顔赤い!」
🩷「ちょ、ちょっと待って!!」
佐久間は慌てて阿部の額に手を当てた。
🩷「うわ、熱あるじゃん!!」
💚「大丈夫……」
🩷「大丈夫じゃないよ!」
佐久間はあわあわしながら
薬や冷たいタオルを用意する。
🩷「はいこれ!水!」
🩷「あとこれ!冷やすやつ!」
手つきはどこかぎこちないが、
必死なのが伝わってくる。
💚(優しいな……)
そんなことを思いながら、
阿部はいつの間にか眠っていた。
――そして。
目が覚めたとき。
部屋は静まり返っていた。
時計を見る。
0時を少し過ぎている。
💚「……っ」
体はまだ熱く、呼吸も苦しい。
💚「さく……ま……」
小さく名前を呼ぶ。
すると、
🩶「……起きたのか」
低い声。
ベッドの横に立っていたのは――
夜の佐久間だった。
💚「……」
佐久間は阿部の額に手を当てる。
🩶「熱いな」
佐久間はそう言うと、濡れタオルを手に取る。
そして静かに、阿部の額に当てた。
💚「……」
🩶「あいつ、慌ててたぞ」
💚「そうだね…」
🩶「ほんと騒がしいよな」
そう言いながらも、
その手つきは驚くほど優しい。
💚「……」
阿部はぼんやりとその横顔を見つめる。
🩶「見すぎ」
💚「……だって」
💚「優しいんだなって思って」
95
10
537
🩶「勘違いするな」
そう言いながら、
そっと阿部の髪をかき上げる。
胸が少しだけ高鳴る。
🩶「早く寝ろ」
そう言って、佐久間は立ち上がった。
そして背を向ける。
その瞬間。
💚「……っ」
気づけば阿部は、その手を掴んでいた。
🩶「……は?」
💚「いかないで……」
弱い声。
自分でも驚くほど素直な言葉だった。
佐久間はしばらく黙っていた。
そして、ゆっくり振り返る。
🩶「最近お前さ…」
その目は静かだった。
🩶「あいつより…」
🩶「俺の事が気になってるだろ?」
💚「……」
否定できなかった。
胸の奥が、ざわつく。
🩶「……ほんと」
🩶「変なやつ」
そう言いながらも――
佐久間は、
掴まれた手を振りほどかなかった。
つづく。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!