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第2話:客
只今、僕、さくらは
この男の手を握りしめている
『さて、そろそろ屋敷に入りたいのだが』
僕は、この客の手を掴んで離すつもりはない
何故なら、離したらこいつは何を口走るか知ったものではないからだ
何かよからぬことを言うかもしれない
その危険性を避けるためだ
_だが、
〈はぁ…、あの?そろそろ夜桜様のお手を離したらどうです?〉
なんかさっきから変なのに睨まれて、あどけない表情になってしまっている…
「というか、貴方は…?」
〈はぁ…、本当に何も見ていないのですね〉
〈俺は、貴方が夜桜様に水を掛けたとき、後ろに控えて居たものです〉
そう言い、ギロリと睨んでくる
で、結局誰だよ?
名を名乗れよ、と正直思ってしまう
意地悪な奴だ
『おいおい、あまり誂って(からかって)やるな』
〈夜桜様がそう仰るのなら…〉
〈俺は、杠.朱雀(ゆずりは.すざく)だ〉
〈よく覚えておけ〉
正直、僕が抱いたこいつの第一印象は
嫌味なやつで、意地悪
そして、この黒崎とかいう客の護衛のようなやつ
おまけに、僕を敵視しているようだ
全く、面倒である
こいつに睨まれ続けるのも苦痛なので、仕方がなく黒崎の手を離した
〈それでいい〉
何様だよ、と、ついつい突っ込みたくなる
が、そんな気持ちを抑え、満を持して屋敷へと向かう
屋敷に入る所、玄関には沢山の遊女と、女官が立って出迎えていた
[いらっしゃいませ、黒崎様]
と、丁寧に挨拶をする女官
横にいた僕など目にもとめず、ただ真っ直ぐと黒崎を見ていた
まるで、品定めをしてるかのように
この男は何者なのか…、僕にはまだ知る由などなかった
だが、さすがに他の遊女達にはバレたようだ
僕がこの男の隣に立っていることを
驚いたように、目を見開いたまま、空いた口が塞がっていないような、いかにもな表情をしていた
そして、まるで歯ぎしりを立てる勢いで、睨見つけてきた
「ビクッ、」
顔が引きつる
咄嗟に俯いてしまう
そんな僕など置いて、女官は黒崎を奥へと招いた
[ささ、黒崎様]
[玄関先は冷えます、奥へ参りましょう]
待って、行かないで
この場に_
僕の居場所なんてない
こんな暗く、怖い所にいたくない
置いていかないでっ_
『おい、待て』
『この遊女はどうするんだ?』
僕の方を見て、僕の目を見て
話してくれた
[ああ、その子でしたか]
[どう…とは?]
[ただ、時間に戻らなかった罰を受けてもらうだけですよ]
嫌だ、嫌だ、嫌だ、いやだっ!
罰?なんだよそれ
時間に戻らなかったからなんだ
お前達が命令して、やらせたことだろ
なんで僕がっ…
『何故だ?』
周りの空気が一気に冷える
ビリビリと、空気が震える
まるで何かに怯えているように
側近の杠も少し驚いた顔と、青ざめている様子が見える
ああ、女官は何か怒らせてはいけないものを怒らせたようだ
[ビクッ、な、何故…とは…?]
『わからぬか?』
『この遊女は、お前達が命令し、井戸へ水を汲みに行っていただけだ』
『それに、この寒さ、重たい水』
『遅れても仕方がないのでは?』
[そ、それは…]
女官は、いかにも焦っているような素振りを見せる
[た、ただ、いつもは早く戻ってきていたから…]
[ね?さくら?]
…ずるいだろ
そんなふうに聞かれたら、そうです。としか言えないじゃないか
でもね?女官
僕は怒っているよ
「……さぁ…?なんのことでしょう」
「うちは、いつもはもう少し早くから水汲みに行っています」
「ですが、今日は、そちらの…」
「遊女達に、悪戯をされたので、遅れました」
「恐らく、それが原因で帰りが遅れたのかと」
他の遊女達の顔が青ざめる
ざまぁみろ、と言いたくなってしまうな
いかんいかん、と、心の中で首を振る
だが、僕の怒りは収まらない
「遊女達が、うちにそんなことをするなんて…」
「クスッ…誰かに言われてやったのでしょうかね…?」
僕は厭味ったらしく、微笑んだ
[っ〜!?]
予想通り、こいつだな
まあ、もうこいつは失脚するだろうな
『そうか、そうか、w』
何笑ってんだよ、と言いたい
『まあ…、このことはクレームとしてこの店に出してやる』
『安心するがいい…ニヤ』
おや、この人も大概に意地が悪い
お仲間同士のようですね
『それ、と…、今日はこいつを指名する』
は…?
「え、うちを、ですか…?」
『ああ、お前は面白い』
『話をさせてくれ』
…まあ、お金がもらえるから、万々歳か…
「ええ、いいですよ」
こうして、初めからバタバタとしていた初対面日は丸く収まったのである
第3話:女誑し
改めて、鏡の前に座る
髪を下ろし、左右上で結ぶ
淡い桃色の長い髪に赤色のリボンがよく映える
白粉をはたき直し、頬紅を暗がりでもよく見える少し濃いめの色に塗り替える
服装は、いつもの、首元が締まる和装の服で
少し胸元を開いたような服だ
正直、少し恥ずかしい
そして、最後に帯を巻き、完成だ
先程とは見違えたような様子に周りの空気も少し明るくなったように感じる
和装にしたことで、上品感も増し、より格好良い雰囲気に見えた
気合を入れ、黒崎の待っている部屋の前に立つ
襖に手を掛け__
開けようとしたその時、
《ねぇ?なんで、あーしじゃなくてあの子を指名したの?》
《いつもはあーしを指名してくれるじゃない》
部屋の中から聞こえる
遊女の声
それも、ここで一番売れている遊女の声だ
名前は確か__
『麗、先程も言ったが、これは興味本位だ』
『俺は彼女に興味があるだけだ』
『初対面にして、あの様子、面白いとしか言いようがないからな』
…そうだ、花御.麗(はなみ.うらら)だ
思い出した
僕には接点もないから気にしていなかったが、やはり、一番売れている遊女ということもあり、とても美人だ
そして、なんと言ってもあの派手さ
自分が一番美しいと理解している者の振る舞いだ
まあ、気に食わない、というわけではないが
僕にもあのような自信が欲しい、という羨ましさはある
襖の隙間から見える、髪の黄色いインナーカラーが、ランプの温かみのある色に似合う
今日の服装も、派手だがどこか上品さも兼ね備えており、さすが、と言ったところだろうか
しかし、困ったものだ
僕はこれからどうしようか
服装などの準備もしてしまったし、指名もされている
どうしたのものか…
と、頭を悩ませていると
中から声が聞こえてきた
《まあ、いいわ》
《次はあーしを指名してよね、!》
まずい…!出てくる!
と、思った時にはもう遅かった
ガラッ
《…!》
「え…と…」
《負けてないから、ボソッ》
「…?」
勝ったつもりもないのだが
『おや、待たせてしまったね』
『入りなさい』
「あ、はいっ、」
「失礼いたします」
私は襖の前で跪き、
部屋に入った
『さて、何から話そうか』
と、話し始めて数十分
こいつのことが少しだけわかった気がする
こいつは、お偉いさんの所の坊っちゃんで、杠は護衛権、友人なのだと
そして、ここに来るのは、仕事の鬱憤を遊女達に聞いてもらうことが目的らしい
楽でいい
僕はただ、酒をついで、相槌を打てばいい
だけども、さすがに久しぶりの遊女としての仕事だから、疲れてしまった
そして、思ったことが一つ
「…黒崎様は女誑しですね」
『……ポカン』
「!す、すみません!」
『ははっ、!やっぱり君という人は面白い、w』
『俺にそんな事を言ってきたのはお前が初めてだ』
でしょうね
…と、何度か話しているうちに、疲れてしまったのか、眠気が襲ってきた
チュンチュンチュン_
「んん〜…、ふあぁ〜……」
僕は背伸びをする
あの後のことを思い出せない、と、頭を抱えていると
横から人の気配がした
「まさか…」
予想通り、最悪だ
『ん…、ああ、おはよう』
『昨日は、大丈夫だったか?』
『少し疲れてしまったようだな』
どうやら、こいつの目の前で寝て、そのまま一緒に寝っ転がっていたそうだ
あまりにも屈辱だ
「っ〜!仕事は終わりましたので、これにて失礼いたしますっ!!」
僕はそれだけ言い放ち、部屋を飛び出した
これから、どうなることやら…
次回第4章➫♡50天敵
設定
[]女官、他の遊女
《》
名前:花御.麗(はなみ.うらら)
年齢:16歳
一人称、二人称:あーし、初対面.キミ、それ以降.呼び捨て
その他:遊女で、この屋敷で一番売れている
イメージ↓
〈〉
名前:杠.朱雀(ゆずりは.すざく)
年齢:16歳
一人称、二人称:俺、君
その他:黒崎の護衛権友人、キャラ設定製作者の陽藍のストーリーとのキャラリンク、神社を営む祓い屋
イメージ↓
これから、この作品は土日のどちらか、またはどちらともに、更新していきます!
楽しみにしていてくださいね♪
毎週はむずいかもしれないので、たまに少しあとになるかもです…!
では!
コメント
34件
あぁぁぁぁぁあああ!! すきっす、好きすぎて滅