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山崎からもたらされた情報
それは九条が南の島に隠匿していた「最後の大金」───
額にして50億円を超える休眠口座のアクセス権だった。
私がその資金を、父の遺した土地で行うプロジェクトの「賠償原資」として組み込む手続きを進めていた
その矢先のこと
学校から帰ってきた陽太が、どこか落ち着かない様子で私に問いかけてきた。
「ねえ、ママ……パパって、本当は僕のことを愛してたの?」
その言葉に、私の心臓が凍りつく。
直樹のことは「もういないもの」として
あの子には真実を少しずつ、残酷にならない程度に伝えてきたはずだった。
「……陽太、どうしてそんなことを聞くの?」
「今日、学校の帰りに……優しそうなおじさんに会ったんだ。その人が言ってた。パパは今、病気ですごく苦しんでいて、毎日ママと僕に謝りたいって泣いてるんだよって。ママがパパを許さないから、パパは死んじゃうかもしれないんだって……」
九条の放った刺客。
それは暴力ではなく、「偽りの罪悪感」を子供に植え付ける教育者風の男だった。
九条は知っているのだ。
私がどれほど強くても、陽太が私を「残酷な母親」だと疑い始めたら、私の帳簿は一瞬で崩壊することを。
「……陽太、そのおじさんはね」
私は怒りで視界が赤く染まるのを必死に抑え、陽太の目を見つめた。
「そのおじさんは、1円の価値もない『嘘』を売る商売人なの。陽太…これからのためにも、ママがこれから見せるものを見て、陽太が自分で決めて」
私は、かつて直樹が陽太の教育資金を不倫旅行に使い込み
残高がゼロになった通帳と、彼が陽太に向けて放った罵声の録音データを、あえて陽太に見せた。
子供には早すぎるかもしれない。
けれど、九条が「毒」を盛るなら、私は「真実」という解毒剤を打つしかない。
陽太は、震える手で通帳を握りしめ、静かに涙を流した。
「……パパは、僕たちのこと、お金としか思ってなかったんだね」
「そうよ。……でも、ママは違う。ママの帳簿で、陽太は『無限の価値』を持つたった一つの資産なの…ママの、世界に一人の宝物なの」
陽太を抱きしめながら、私は心の中で九条への殺意を研ぎ澄ませた。
金、権力、地位。
そんなもののために、子供の心に土足で踏み込んだ代償は
一円のまかり成らぬ利息をつけて、その老い先短い命で払わせてあげる。
私はすぐに山崎を呼び出した。
「山崎さん。計画を変更します。……九条の隠し口座、ただ没収するだけじゃ生ぬるいわ」
「…彼が最も信頼している『マネーロンダリングのルート』を逆流させて、彼の息がかかっている全ての関連会社を、一晩で『不渡り』にしてちょうだい」
「詩織さん…っ、それをやれば、九条グループは文字通り消滅しますよ」
「ええ。…私の息子に毒を盛った対価よ。…全額、命で精算してもらうわ」
夜のオフィス
私は父の万年筆で、九条の名前を真っ赤なインクで塗り潰した。
【残り43日】
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