テラーノベル
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いても立ってもいられずに玄関で待ち侘びる事十数分、ふっかさんからの連絡を受け取るや扉を大きく開き、廊下の奥をじっと見据える。ややあって、駆け足で近付いて来る人影。急いで来てくれたんだ…熱いもので胸が締め付けられた。
「よー、待たせてごめん」
「…目黒、ずっとそうして待ってたの?」
「あ…いえ、連絡貰ってからだから全然待ってないです。来てくれてありがとう、ふっかさん、岩本くん。どうぞ…」
「んじゃ、お邪魔しますねー」
「お邪魔します…、…うわっ、なにその灰皿?」
「ありゃりゃ…大分参ってる証拠だね。照ー、これ流しでいい?」
「うん、置いといて。後は俺がやる。目黒、勝手にキッチン借りるぞ」
「……俺がっ……」
「いーからいーから、めめは座ってゆっくりしな。ただ、ちょっとスマホ弄らせてね」
促されるままにソファの中央へ浅く腰を落とす。背凭れに体重を預けたふっかさんは、間隔を置いて俺の左隣。芳ばしい香りと共にやって来た岩本くんはコーヒーを三つと、何処から探し出したのか新しい灰皿をテーブルに据え、右隣に落ち着く。やはりスマホを取り出し、親指を動かしている。
「…ありがとう、ございます」
ふぅふぅしてから一口啜る。
……こんなに美味しいコーヒー、飲んだの初めてかも。
ストックしてある粉を使ってる筈なのに、淹れる人が違うとこんなに美味しいのか?あぁ…それだけじゃない、この雰囲気が美味しくしてるんだ。
何があったか一刻も早く聞きたいだろうに、黙って待ってくれている二人。ただ無言なだけじゃない、それぞれスマホを見て、俺が話し出しやすい空気を作っている。前にも椅子があるのに横へ座ったのも、その為だろう。
本当に…本当に、頭が上がらない。なんて、有り難いんだ。
「吸っていいよ」
そう言ったのはふっかさん。灰皿を探したのは岩本くんなのに、なんて思ったら自然と微笑めて。コーヒーを飲み干してから、少し軽くなった口を開く。
「信じられないかもしれないけど、聞いて欲しい。阿部ちゃんがいなくなっちゃうまでの事を……」
「はぁ~…事実は小説よりも何とかってヤツ?いやホント、消えちゃったってのがしっくり来るわ。幾ら連絡遅いっていっても、一大事ん時にスルーする人じゃないもん、阿部ちゃんは」
「…だよな。連絡出来ない状況だってのが有力か……なぁ、目黒。悪いんだけど家の中見させて貰ってもいい?疑ってるとかじゃなくて、三人の目で見たら違うかもって」
「勿論、俺の方からお願いします。阿部ちゃんの無事確認しないと、俺……~おれっ」
「ん、照さんとふっかさんに任せなさい。だぁいじょぶだってー、何時ものあざとい笑顔でひょっこり出て来るよ」
「えっ、急に阿部出てくんの!?……想像したら怖くてクローゼット開けらんない」
「じゃあ俺が開けるんで、岩本くん中見て。見られて困る物ないから」
「~…ヤダっ。角の暗がり何か居そうで怖い」
「……俺、此処に住んでるんですけど」
「わーかった!照はタンス見て来てっ!」
「引き出しん中に居たらどーすんだよ!」
「お、俺まで怖くなんだろ!止めろってぇ!」
すったもんだで賑やかだったのはほんの暫く。阿部ちゃんの痕跡すら見当たらない現状に、三人の口も足取りも重くなっていった。あらかた探し終えた所で一先ず集まり、明日の予定を相談し合う。
「ふっかと阿部、俺は午後からの収録で…目黒は朝からインタビューか。…行けそうか?」
「はい、行けます。収録って…メンバー全員の、ですよね?」
「うん。それまでに阿部から連絡なかったら皆に言おう、絶対力になってくれるから」
「そ…だね、ラウやだてさんならいい案考えてくれそう。てか、役に立てなくてごめんな?」
「…なんで謝るんすか、十分過ぎる程支えて貰ってます。こんなに遅くに来てくれてありがとうございます、ふっかさん…岩本くん」
「当たり前の事しただけだから頭下げないの。…俺達帰るけど、一人で大丈夫?」
「…大丈夫、二人のお陰様で眠れそう。じゃあ、気を付けて」
「また明日なー」
…ぱたん。
閉まった扉を見詰めて、俺は思った。
明日、阿部ちゃんに会えるだろうか。
また明日って、阿部ちゃんに言える日は来るんだろうか。
その場に蹲り、膝を抱えて声なく泣いた。
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💚どこに行ってしまったんでしょうか? 💜💛の2人が優しい 続きが、気になります🥺

どこ行ったの… 🖤が寂しがってる早く出てきて💚 続き気になります。
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