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社員食堂は激混みで、食券販売機の前には長蛇の列ができていた。
一足早く営業先から戻った俺は、トレーにAランチを乗せて空席を探した。
五目ご飯、わかめと豆腐の味噌汁、揚げ出し豆腐、胡瓜の漬物。
この状態で待てと言うのか。
「マジかよ……味噌汁冷めるじゃん」
自販機の陰から「おい! 奈良! こっちこっち!」と手がぴょこぴょこ手招きされた。
同じ営業の面々が席を空けてくれていた。
「おう、助かったわ。激混みじゃん」
「給料出たからな」
「今日はどうだった?」
「駄目だな。パンフレット置いてくるだけで収穫なし」
「そんなしょっちゅう保険なんか入らねぇよ」
俺は箸で味噌汁をちょんちょんと突きながら五目ご飯をかき込み、ポリポリと胡瓜の漬物を頬張った。
向かいに座った木倉が、急に顔を覗き込んできた。
「なぁ、おまえさ」
「ふぁんだよ」
「佐川さなと付き合ってるって、本当か?」
ブホッ!
「な、なんだよ、いきなり」
「金沢のとは別れたんか?」
「とは?」
「携帯の待受画面の彼女だよ」
「……」
味噌汁を啜る。口元にわかめが貼りつき、指で無理やり押し込んだ。
「止めとけよ」
「何が」
「佐川さな、あいつ誰とでも寝るらしいぞ」
「まさか……」
「やっぱおまえ、付き合ってんだろ」
「カマかけたのか」
「そんなんじゃねぇけど……なぁ?」
隣の同僚たちも、こくりこくりと頷きながら眉間に皺を寄せている。
「誰でも良いらしいぞ」
「そんな噂話、止めとけよ。同僚だろ」
そう言いながらも、頭の中に佐川さんがポロリと零した言葉が蘇った。『側にいて欲しい人は、みんな居なくなる』『好きな人が急に居なくなることが、怖いのよ』『だから……中途半端に好きな人が、丁度いいの』中途半端に好きな人。
それが、こいつらの言う「誰とでも寝る」ってことなのか?
俺は揚げ出し豆腐を箸で摘もうとしたが、それはグズグズと崩れてしまった。