私は木兎光太郎に恋をしている。
今日、土曜日にある花火大会で木兎をどう誘えばいいかを相談しに幼馴染の赤葦の教室へ向かった。
『あかーし!相談があります!』
「…また木兎さんのことですか?」
『そ!よくわかったね!』
「そんなの、毎日聞かされてるんで嫌でもわかります。」
いつも私の話は楽しそうに聞いてくれるが相談となると少し嫌そうな顔になり声のトーンが下がる。
『あのさ、土曜に花火大会あるじゃん?それ木兎誘いたいんだけどなにかいい感じの誘い方ある?』
「自分で考えてください。俺には関係ないんで。」
『つめた』
今日はやけに素っ気なく相談されるのそんなに嫌なのかと思った。
(今後は相談するのやめようかな…)
その日は赤葦とはそれっきり話さないで終わった。
翌日
木兎を夏祭りに誘うため部活の休憩時間に体育館へ向かった。
体育館の入り口で緊張してしばらくおどおどしていたらそれに気がついたのか赤葦がこちらへ向かって来た。
「❄️さん、どうしたんですか?」
『あ!あかーし!えっと、その木兎呼べるかな?ごめんね!』
「また…さんですか…」
『え?ごめん聞こえなかった…』
赤葦は小さく何かを呟いたが私はそれが聞こえなかった。
「あ、木兎さんですよね呼んできます。」
『え、うん…』
昨日もそうだったが赤葦の元気がなく何かあったのかと心配になる。
「お!❄️じゃん!そんな暗い顔してどーしたんだ?」
『え、暗い顔…?』
(考え事してたからかな…)
せっかく赤葦が呼んできてくれたんだからと、いつも通り明るく振る舞った。
『えっと、土曜日って空いてる?』
「土曜?なんでー?」
『もしよかったらお祭り一緒に行きたいんだけど…』
「え?お祭り?俺その日予定あるからいけない…」
『予定が…わかった、ありがと!』
「そー、❄️ごめんなー」
正直、断られる気はしてたけどかなりダメージがでかい。
後で赤葦誘お…。
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赤葦
最近相談を受けることが多い。
俺は相談されるのは別にいいから聞いているけど、今回の相談は聞きたくない。
どうせ今日も相談をさせるだろうと思いながら過ごす学校生活は地獄で足取りが重くなる。
『あかーし!相談があります!』
(どうせまた木兎さんの相談なんだろうな)
最近はこればっかりだ。
聞きたくないとは思っていても心のどこかで違うことだったり好きじゃなくなったとかを言われるのを期待してしまう。
性格が悪いのは十分承知している。
「…また木兎さんのことですか?」
『そ!よくわかったね!』
「そんなの、毎日聞かされてるんで嫌でもわかります。」
悪気がなく純粋にどうすればいいか困ってるのはわかる、だからこそアドバイスとかをしてあげたい。でもそれで付き合ったりするのが怖い。
あなたが、俺以外のものになるのが怖いんです…。
嗚呼、この時間が早く過ぎ去ってしまえばいいのに。
翌日の放課後体育館に❄️さんが来ているのが見え声をかけた。
「❄️さん、どうしたんですか?」
『あ!あかーし!えっと、その木兎呼べるかな?ごめんね!』
❄️さんが好きなのは木兎さんだからそれはしょうがない、しょうがないと分かっていてもどうしても抑えきれず口に出してしまった。
「また木兎さんですか…」
『え?ごめん聞こえなかった…』
こんなこと言うはずではなかった。
「あ、木兎さんですよね呼んできます。」
『え、うん…』
頭の中が白くなった何も考えられなくてすぐにでもその場を立ち去りたくなり急いで木兎さんを呼んだ。
2人で会話しているとき、壁に腰掛け頭を整理しようとしたが体はそう上手く動いていなかった。
自分の気持ちに従順で、入り口の近くに腰掛けていたことに気づく。
不意に2人の会話を聞いてしまった。
『えっと、来週の土曜日って空いてる?』
「来週の?空いてるー!」
『もしよかったらお祭り一緒に行きたいんだけど…』
「え?お祭り?俺その日予定あるからいけない…」
『予定が…わかった、ありがと!』
「そー、❄️ごめんなー」
(聞きたくなかった。)
木兎さんは確かに良い人で好きになってしまうのは仕方がない、でも。
どうすれば俺を見てくれるんですか…
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❄️
木兎に断られてほぼ放心状態のままふらふらと家へ帰宅しそのままベッドへ直行精神状態を安定させるためしばらく寝ることにした。
とはいってもそう簡単には寝れるわけもなくマイナスのことばかりが頭に浮かんできて離れない。
『…あかーしに連絡するか、』
【夏祭り断られちゃってさ、よかったら2人で行かない?】
既読がついたが返信がこない。そのままスマホと睨めっこをしばらく続けていたら
【ごめんなさい。行けません】
返信が来た。
そんな気はしていたからそっかぁ、程度で終わった。
【わかった。】と返信をしたあとスマホを閉じテレビでアニメを見た。
数時間アニメを見ていたら家のドアが開いた。お母さんが帰ってきた。
「ただいま〜、今日残業なかったんだー」
私のお母さんはいつもハイテンションで面白い人だ。
『おかえりー今日残業なかったんだ!よかったじゃん!』
「そー!本当最高」
そういい机に買ってきたものを置きソファに横たわりスマホを見始めた。
『お母さん今日夜ご飯何ー?』
「カレーだよー」
『はーい』
そんないつも通りな会話をしていたらスマホがなった。
(モブ男だ。どうしたんだろ)
「ん?電話ー?ならついでに風呂洗ってきてー。」
『電話だけど、なについでって笑
それに夏だから暑いじゃん笑』
「えー」
いくら家族仲が良くてもこういう異性からの電話を親の前でするというメンタルは持ち合わせていないわたしは、なるべくお母さんに聞かれないよう自室で電話に出た。
『もしもし?』
「❄️ー?明後日空いてるか?」
『明後日…、』
ちょうど夏祭りの日だ
『うーん、、空いてるかけど…』
「まじ!?じゃあさ一緒に夏祭り行かね!?」
『あー夏祭りね、いいよちょうど暇だし』
「やった!じゃあ明後日の18時❄️家いくな!」
『はーい』
まぁモブ男とはそれなりに仲もいいし一緒にいて気が楽だし
土曜日楽しみかもな
通話が終わりしばらく考えたあと下に降りお父さんも帰ってきた。その日はいつも通り会話を交わし終わった。
夏祭り前日
クラスは夏祭りの話題で持ちきりになっていた。それは私も例外ではなく
『モブ男ー明日は浴衣?それとも私服?』
「えーどっちだろ、❄️は?」
『私は浴衣久しぶりに着ちゃおっかな〜って』
「え!絶対可愛いじゃん!ちょー楽しみになってきた」
モブ男は人を褒めるのが得意だ。多分誰にでもそういうことを言っていると思う。(失礼)
昨日木兎と赤葦に断られたがモブ男と行くことが決まり傷はだいぶ癒えていた
夏祭り当日
モブ男が迎えに来るまで浴衣やら持ち物祭りの準備をしていた。
準備をしているとあっという間に時間は経ちインターホンがなった。
『はーい』
「お、❄️?そろそろ大丈夫そ?」
浴衣はあまり着たことがなく支度に手間取っていたから少し玄関でまってもらった。
久々に着た浴衣はキラキラしていて、鏡をみると自分じゃない気がした。
『ごめん、お待たせ』
「やっば、すげー可愛い…」
『ガチトーンでそれは恥ずかしいよ』
相変わらずお世辞がうまいな、モブ男は。
関心を抱きつつ、一緒に夏祭りが開催されているところへ向かった。
『やっぱり人多いね〜』
「そうだな〜、」
モブ男夏祭りを回ってるとあっという間に時間は過ぎ最後にある打ち上げ花火が始まる時間になった。
「❄️こっち!俺ここの穴場しってんだよ」
そういいモブ男は私の手を引っ張り連れて行こうとした。
瞬間、片方の手を誰かに引っ張られ、手が解けてしまった。
「え?」
モブ男が振り向きギョッと私の後ろを見つめている。
それに続き私も後ろを振り返った。
『え…、なんで…』
手を引っ張ったのは赤葦だった。
走ってきたのか少し息が乱れている。
「…すみませんモブ男さん、❄️さん貰いますね。」
「え、は?」
そう言ったあと私の手をひき、後ろから呼ぶモブ男を無視し、ひとけの少ないところへ向かった
。
『…あかーし?』
いまの状況がいまいち飲めない。夏祭りを断った赤葦が目の前にいるし、短距離だが離下駄で走らされ足が痛いしで頭が働かない。
しばらく走り人気の少ない場所についた。
そこで二人共口を開かずしばらく沈黙が流れ先に口を割ったのは赤葦だった。
「あの、突然すみません…、迷惑…でしたよね…」
「大丈夫だよ」「平気だよ」と答えると嘘になるし、そういう嘘は赤葦は大体見抜いてしまう。
『うーん、まぁ大丈夫なのかはわかんない、少なくともモブ男は嫌だったんじゃないかな』
「そうですよね…すみません。
こんな自分勝手で、でも、❄️さんとモブ男さんが一緒に居るのが嫌だったんです。
俺が断ったのに…
こんなのおかしいですよね…」
下を向いていてわかんないけど赤葦の声はかすかに震えていた。
『、大丈夫?』
普段とは明らかに様子が違う。
それに心配になり手を伸ばした、するとその手を掴まれ抱き寄せられた。
『赤葦、あの、離してもらっても…』
「いやです。」
まさかの即答
『えっと、』
「離したくありません」
(赤葦が駄々をこねるなんて滅多にない…
いや、今まで一回もなかった)
「…です」
『え?今なんて?』
「好き…なんです」
びっくりした。
突然こんなことを言われ、自分の耳を疑った。
『え、』
「夏祭り断ってごめんなさいっ、でもっ」
『あかーし落ち着いて?どこか座れる所探してさ、ね?』
「…っ、、はい…、」
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赤葦
代わりじゃ、嫌だった。
練習が終わり帰る支度をしていた時❄️さんからLINEがきた。
そのことが嬉しくてすぐに既読をつけた。
でもすぐにさっきまでの自分を殴りたくなった。LINEを見たことを後悔した。
【夏祭り断られちゃってさ、よかったら2人で行かない?】
やっぱり俺は代わりなんだ…
胸が苦しくなった、喉の奥がギュッと締め付けられているようだった。
それに、木兎さんがダメだったからっていう、”代わり”がいやだった。
本当はここで変なプライドなんか捨てて了承した方が楽なのに、幸せなのに、分かっていても
行動に移せなかった。
ここで了承したら一生”木兎さんの代わり”になってしまうような気がしてきて怖くて仕方がなかったんだ。
だから断ってしまった。
幼稚な自分に虫唾が走るのはここ最近ずっとだ。
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❄️
“好きです”一個下の後輩から告白をされた。
彼は年下だけど大人びていて同級生と話しているような感じに時々なったりする。でもふとした時に後輩と感じることがあって、でも私は年上か同い年が対象内で、しかも絶賛片思い中だったから彼をそんなふうに見ることはなかった。
「あの、❄️さん…」
しばらく間を置いたあと、
堂々としているけど、どこか、迷子の子供が道を尋ねるような不安が入り混じった声で話を始めてきた。
「❄️さんが木兎さんのことを好きだって、知ってます。
年上が好きだって知ってます。
でも俺❄️さんが好きなんです。
諦められませんでした。」
「後輩の俺に貴方が振り向くことはないのでしょうか…?」
私より圧倒的に大きい彼が今は小さく感じる。
『あのさ、』
『赤葦は嫌じゃないの…?』
「嫌、とは?」
『年上から嫉妬されたり、わがまま言われたりとかさ…』
その答えの意図が分からないのか困ったような顔でこちらを見てくる。
「あの、なぜ嫌だと思うんですか?」
「俺が好きなのは❄️さんです。好きな子の、わがままや嫉妬をどうして嫌だと思うのでしょうか」
『あの、、元彼が嫌だってそれで』
そうだ、わたしの元彼は極度の甘えたがりで、甘えられるのは嫌な人で超絶に自己中野郎だった。今思えばどうてそんな人と付き合っていたのかが謎だが、そんな、なんの気無しな彼の言葉がわたしを付き纏ってくる。
「それは元彼の言ったことですよね?今話してるのは俺です。
他の男の影なんか見ないで❄️さんのことが
好きで好きで仕方がない俺を見てください。」
予想外だったこんなことを言われるとは思っていなかったし言うつもりもなかったから。
「❄️さん、あなたの元彼のこととか俺はよく知りませんが少なくとも、俺はそんなことであなたを嫌いになんてなりませんよ。
むしろそれが嬉しいと思ってしまうような男ですから。
改めてさっきの返事…教えてくれますか…?」
私はどちらかというと男運がない方だったからこんなに優しくて頭もいい赤葦が言い寄ってくることが不思議で仕方がない。
そんなことを考えていて返事をせず黙り込んでいたら赤葦が不安そうに顔を覗き込んでくる。
「…❄️さん、やっぱり困らせちゃいましたよね…」
『ちがう、ちがうよ嬉しいんだけどさ本当に私でいいの…?私なんて全然赤葦に釣り合わないとおもう、、
赤葦はもっといい人がい、
「俺のあなたへの想いを否定しないでください」
「どうしてそんなこと言うんですか…そんなに迷惑ですか、俺の想いは…」
『ごめん…そんなつもりはなくて…』
「初めてなんです。
生まれて初めて本気で好きになって
あなたに否定されても、
どんなこと言われても好きなんです。
どうしても欲しい。
諦めたくない。
たった1人の大切な人だから…」
なにそれ…
赤葦がここまで想っていてくれたとは思わないじゃん…
『赤葦…さっきはごめん、 私、変なこと言っちゃって…』
「…本当です、もう言わないでください」
『はい…あの、返事だけど…一回保留とか…』
「だめです。
あなたに考えさせたら『やっぱり赤葦にはもっといい人がいるよ』と、さっきみたいなことを言ってくるので。」
「今返事をください。」
マイナス先読みのプロじゃん。
「❄️さん、はやく」
『赤葦ほんと強引すぎだよ』
「強引でもいいです。今、返事ください」
そういいながらグイグイと距離を詰めてくるのは新手の拷問か何かかな
次第にはベンチの狭間で追いやられた
「落ちますよ?」
『分かってるならそっち寄ってよ!』
「無理です」
もう逃げ場はないほど追い詰められたところ
スッと手が腰に周り赤葦の胸板へ抱き寄せられる。
『ちょっと?!』
「こうすれば心が揺らぎますか?
なんならキスもした方がいいですか?」
なんて悪い男なんだ…
『赤葦!離して!』
「❄️さん、照れてるんですか?かわいい」
「かわいい」だと…?
下手したら死人出るぞ?
どうしてここまでになるまで放置しておいたんだ…。
ていうか私の方が問題だ元彼と別れたのも2年の時で1年間は男子との接触、ましてはこんな女の子が一度は望んだであろうご都合展開、男なれしてない私には無理だ。
「俺のになって」
そう告げた赤葦は自身の手を私の後頭部に運び
そっと顔を近づけ__ちゅっ、と小さく可愛らしい音を立てて唇を重ねた。
『私のファーストキス………』
「俺も初めてです」
『そうなんだね……』
「❄️さんも初めてでよかった、」
「これからは俺が貴方の初めて全て貰いますね」
あー、と思って目を閉じた。完全にいけない方向へ向いてしまった。
なんという強引さだと内心、わぁ、と声を上げる。
初め、モブ男を割って入ったときとか腰を引かれた時は悲鳴を上げそうになったが、ここまで強引に口説かれたら流石に慣れてしまった。
それよりも何故告白を受け入れたというその思考に至ったのかが気になる。
「…何考えてるんですか?」
上から声がする。
考え事をしていた瞼をそろりと開ければ、柔らかい瞳で眺め問いかけてくる赤葦いた。
『近くない…?』
「それは、❄️さんが俺から目を逸らすから」
『目を逸らしたつもりはないよ』
「次からは俺といる時は目を逸らさないでくださいね」
『だから逸らしてないって…』
かたくなに譲らないなこの後輩は、
頑固親父並みに考えを譲らない。
そんな姿に逆に感心をしてしまいそうになるが、一旦この近距離をどうにかしたい。
今もこう後頭部にある手を退けようと赤葦の腕へ手をやった。
瞬間、唇に感触があった。
熱く柔らかい後輩のそれが重ねられた。
『急に…』
「❄️さんが俺から離れようとした…」
確かに離れようとはしたけど、それだけでキスって。
ていうかこんな短時間にキスするのか。
この後輩はなんて恐ろしいのだろう…。
「離れないで、俺だけを見ててください。」
「ね?」
蕩けてしまいそうなほどに甘ったるく囁かれる。
けれど私を見る瞳は獲物を見詰める眼差しだ。
これからさきどうなってしまうのだろうかと付き合って早々不安を抱くだなんて思ってもみなかった。
『と、とりあえずさ プルルルル
携帯が鳴った。
さっきのセリフ聞いてから電話に出るのは流石に肝が冷える。
赤葦の気に触らないよう、と思って着信が切れるのを待ったが一向に鳴り止む気配がなく、2人だけの空間に着信音だけが響き渡る。
(なんでこんな時に、そんな大事な用事なの?)
あまりにも長く鳴るものだからマイナスな思考が巡る。
『赤葦電話でるから手、離して欲しいな』
「わかりました。」
これだけ長く鳴っているからか赤葦もすんなりと手を離してくれた。
それから、持ってきたカゴバックの中から携帯を出しそっ、と画面へ視線を移す。
「は、」
画面に表示されていたのは【モブ男】という文字だった。
どうやら赤葦にも画面が見えていたのだろう。
さっきとは打って変わって声が冷たく、冷め切った声色に変わり、携帯 を持ってる私の手を勢いよく掴んできた。
「電話、出ないでください…」
『えっ、でもこんなに鳴ってるし、
なにか大事なこととかじゃないのかな?』
「なら俺が出ます、携帯貸してください。」
「貸してください。」とか言いながら相手の返事を待たずに携帯を奪おうとしてくる傲慢さをよく先輩相手にできるなと思う。
『赤葦強引すぎない!?』
「そうですか?価値観の違いですね。」
価値観は人それぞれだからこれはしょうがない。みたいに言っているが、携帯を奪おうと掴み続けている手には強い意思を感じる。
携帯の取り合い中もなお着信音が鳴っていて
途切れたと思ったら再びまた、それが鳴り響く。
「はぁ、、
❄️さん、いい加減諦めてください」
『私のセリフ!赤葦諦めて!』
「無理です。ていうか彼氏より優先する用事なんてありますか?
ありませんよね?
なのでその携帯をおとなしく離し俺に貸してください。あわよくば切ってください。」
何があわよくばだ、と心の中でキレつつも赤葦を説得しようとするがどれも「無理です。」の一点張り。
『赤葦さっき電話でていいって言ってたじゃん!』
「それはさっきまでのことで、今はダメです。
それに、モブ男さんなら尚更ダメです…」
『…なんで、モブ男になんか恨みでもあんの?』
「恨みというか、モブ男さんは❄️さんのことを好きだからです。」
『嘘だぁ』
「嘘じゃないです。同じ男だからわかります。それに同じ人を好きになったんですから嫌でもモブ男さんの貴方への好意は気づいていましたから。」
「だから出ないでください、
今は俺だけに貴方を独占させて…」
何を言われるかと思えばこんなことを言われ、挙げ句の果てにはさっきまで携帯を奪おうとしていた手は、わたしの手と重ね合わせそれを自分の頬に当て甘えてきた。
この後輩は基本猫だが妙に頭が切れるようで甘え方がプロ並みだ。
きっとさっきまでの流れがなければ急なことすぎて理解が追いついていないだろう。
慣れが必要だ。本当
流石に、こんなにも粘っているんだからこの先何をやっても意味がないことくらい予想がついてきた。
らちが開かない。
『…わかったよ、じゃあ今は出れないってLINE送るからまってて?』
「それは後で電話するってことですよね?」
『え?そうだけど』
「なんか複雑ですけど、わかりました…」
「❄️さん、やっぱりモブ男がいいとかなしですからね。」
「俺に捕まった以上絶対に逃げれませんから馬鹿なことは考えないでくださいね」
(なんだろうな、的確にNGワードを積み重ねていってる気がする。
ていうかなんか重くない?)
すこし気になるも、LINEのメッセージを送ろうと携帯を開きモブ男に連絡を入れた。
即既読になり【わかった、かけ直せる時言って】と返信が来た。
その返信に安堵する。
「あ、言い忘れていましたけど俺めちゃくちゃ束縛しますね。男がいる遊びとか絶対に無理ですし、学校のグループ活動でも男がいるなら普通に地雷なので極力裂けてください。」
(え?)
『重っ!いや重すぎない!?
束縛って何するのかなって思えばこんなに可愛くないものなの!?』
「そうですか?けどまぁそんな可愛くない俺でも❄️さんは受け入れてくれますよね?」
そんなこと言われるくらいなら意地でも諦めなければよかった。
今猛烈に後悔をしている。まさか赤葦がこんなにも重かっただなんて…
「俺、超絶嫉妬魔なので覚悟してくださいね」
(この先どうなるのだろうか…)
付き合って早々不安を抱くことになるとは思っても見なかった。
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後日談
赤葦と付き合ってから週が明けた月曜日。
隣の席の木葉に土曜日にあったことを話した。
「うっわ、ついに表に出したんだなあいつ」
『え、なにそれ知ってたの?』
「いや、見てればわかるだろ普通。
お前のこと好きですオーラやばかったぞ。いつ かあいつ道を外すんじゃないかって見てるこっちがヒヤヒヤしたわ」
「まぁ、そういうことだから絶対に喧嘩すんなよ。赤葦が木兎放置してチームがカオスになる未来が目に見えてんだよ。」
絶対に喧嘩するなと口を酸っぱくしていう木葉
に今までなら笑って流していたがあの一件以降赤葦ならやりかねないと思ってしまうのだから恐ろしいところだ。
「とにかく何があっても俺を巻き込むな。
あいつお前のことになるとおっかねぇんだよ」
『薄情なやつ、何かあったら木葉に頼るから』
「やめろやめろ、俺が死ぬ」
『じゃあわたしは誰に頼れば…』
「だから、その「何かを」作るな、平和に仲良くしてろ」
『はーい』
「ていうか、モブ男はどうなったんだ?」
『あーそれならあのあと大丈夫かってことだったよ、生存確認的な』
「生存確認って、まぁモブ男はご愁傷様だよな、相手が悪かった。
赤葦に勝てる奴なんてごく数人くらいじゃないか?」
『赤葦は策士だもんね』
「アイツは策士だな、まぁ本当お前ら仲良くしろよ、な…
言葉が途切れ、彼は私の後ろの何かを見ていた。
『え、木葉どしたの…』
この流れ、もしかしたらと思い
そっと木葉が見ている後ろを振り返った。
案の定、予感は的中した。
そこにいたのはさっきらずっと話題の彼だった。
「様子を見にきましたけど、木葉さん、俺たちのこと応援してくれてたんですか?ありがとうございます。ですが少々距離が近いので離れていただけませんか?」
赤葦は木葉に視線を落とした。その視線は冷たく笑ってはいるが目は笑っていないと言った表情だった。
「うっす…」
「❄️さん、木葉さんと仲がいいのはいいことですけど俺のことも忘れないでください。」
そういうと赤葦は優しく私の頭を撫でジュースをくれた。
『えっと、これ』
「❄️さんが好きそうなやつでしたので、
もしかして嫌でしたか?」
『いや、そんなことはないんだけどよく私の好みのやつしってるね』
「あ、それなら相談受けていた時に飲んでいたものを覚えていたので」
「なんとなくその味が好きなのかなと」
『そうなんだぁ』
彼はよく自分のことを見てくれていたのだなと感じさせられる行動に不意にもドキドキしてしまう。
腹の中に抱えているものは全く可愛げのないものだけど赤葦京治は顔がいい。
それプラス、さりげない気遣いはまさに理想の彼氏なのだから。
赤葦はスパダリだ。
「では、俺先生に頼まれていたものがあるので行きますね」
『あ、うん分かった!ジュースありがとう』
「いえ、❄️さんの笑顔見れてよかったです」
こんなベタなセリフを言ってクソダサくならない人なんているんだなと思った。
もらったジュースを机に置き、隣で赤葦と話している間終始無言だった木葉に視線を向ける。
「まじでアイツ怖すぎる!!本当に俺を巻き込むな!」
『なんか可哀想に思えたから巻き込まないように頑張るね』
「本当そうしてくれ…寿命縮む」
学校でのこの件がきっかけにさっきの話を聞いていた人から広まっていき、赤葦京治は激重束縛彼氏という噂が広がったという…
happy end!
コメント
3件
コメント失礼します!今回も神作でした!愛が重い人が大好きなので凄く嬉しかったです