コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ジュエリーショップを出て、車に戻る。
車内で彼女の左手を取り、「君に指輪を嵌める時が楽しみですね」その細くしなやかな薬指に唇を寄せた。
指の間に挿し込むようにして手が組み合わされ、「……一臣さん」と、彼女から名前を呼びかけられた。
「私は、こうしてるだけでとても幸せで……だけど、あなたが『私ひとりのものにしたい』と、言ってくれたのも嬉しくて、この上もないくらいに幸せで……」
重ね合わされた掌が、ぎゅっと強く握られる。
互いの手を握り合ったまま、彼女の腰を片腕にぐっと抱き締め、込み上げる想いのままに口づけた──。
……彼女と出会えたこと、愛し合えたことを、
心から、幸せに感じる。
婚約指輪の出来上がりの際には、私から彼女へプロポーズをしたいと……
今のこの幸せが、永遠に続いていくことを願った──。
──やがて半年が過ぎた頃に、指輪が完成して、
初めて二人で出かけたあのラウンジで向かい合い、箱を開けた。
彼女の左手を取り薬指に指輪を嵌めて──
「君と、一生を共に。
私と、結婚してほしい」
告げた台詞に、「はい…」と彼女が頷くと、
その瞳から、一筋の涙が流れた。
胸ポケットからチーフを抜いて、彼女の涙を拭う。
「君にはもう幸せな涙以外は、二度とは流させない……」
父の墓前で伝えた、あの日のように口にして、その顔を抱き寄せると、
最愛の人へ、
生涯の幸せを誓う、口づけを贈った──
end──
この後は、特別編に続きます