テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
家に戻ると、涼ちゃんは玄関で靴を脱ぐのもゆっくりだった。
元貴はすぐにスマホを取り出し、監督に連絡を入れる。
「涼架、今日の撮影は休ませます」
「病院でしっかり処置を受けました」
そう報告すると、監督は理解を示し、
「無理はさせないで」と言ってくれた。
涼ちゃんは、その間、少しだけ部屋の隅で横になっていた。
布団を引き寄せ、ほっと息を吐く。
しばらくして、若井が手にゲーム機を持って現れる。
「……暇だろ?これで気を紛らわせろ」
元貴も笑って、ソファに座る。
三人でゲームを始めると、
笑い声や小さな勝ち負けの声が、部屋に広がった。
画面を覗き込みながら、
涼ちゃんはいつもの“頑張る自分”じゃなくて、
ただ笑ったり、悔しがったりするだけでよかった。
熱も、体のだるさも、
ゲームの間は少しだけ忘れられた。
おやつをつまむこともあった。
ゼリーを一口。
若井に勧められたお茶を少し飲む。
元貴は、「ゆっくりでいい」と笑った。
三人で時間を過ごすうちに、
少しずつ日常の感覚が戻ってくる。
ベッドで横になることも、
ソファに寄りかかることも、
もう恥ずかしくなかった。
今日は撮影も、減量も、考えなくていい。
ただ、三人で過ごす時間。
その安心感だけで、
涼ちゃんは静かに目を閉じる。
外の世界の喧騒も、
役や体重のことも、
一瞬、遠くに感じられた。