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18 ◇脳内は『恋愛中毒』
緩やかな坂道だから、途中で簡単に元の場所に戻れると考えていたが
元の場所に戻ろうと振り返った時、進んできた足跡が長すぎると、ひとっとびに
元の位置には戻れない。
人の心も、周囲の景色も──
離れすぎた場所からは同じように見えていても、徐々にそれらは形を変えていく。
満島まほりと個人的に繋がる前の正義は、よく近くの公園に子供たちを連れて
キャッチボールをしたりサッカーをしたりとマメに子供たちとの触れ合いの
時間を大切にしていた。
息子たちは13才と11才の❧中学生と小学生のふたり。
以前なら、夏休みには映画や弁当を持って水族館などに出掛けたりしていたが、
まほりと恋愛するようになってから家庭サービスは一切なくなっている。
もはや完全に脳内が『恋愛中毒』なのであった。
結婚してくれと懇願してこない、ある意味付き合うのに便利でいいとこどりできる
気楽なまほり。
一度、まほりとの付き合いを止めてほしいと言ってきたものの、その後、離婚してくれ
とも迫ってこない妻。
だから、なんとかこのまま誤魔化し宥めつつ過ごせば何とかなりそうな妻。
正義は妻など手の上で転がせると考えていた。
由香のことを舐めていたのだ。
社会的ステータスを保ちながら、ときめきに満ちた恋愛も楽しめる──そんな
彼女たちとの暮らしは、彼の人たちの気持ちなど忖度することなく
自由気ままに生きる正義にとって、まさに理想であり楽園のような日々だった。
もはやこの頃の正義の目には、妻や息子たちの姿も遠いところから
眺めているような状況で、霞んで見える存在になっていた。
そして家は、ただ寝に帰るだけの場所になっていた。