テラーノベル
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先日(約2ヶ月前)のフォロワー100人達成記念に募集したリクエストのものです。
今回、3件のリクエストをいただきました!
むに さん、ヨナエール国 さん、からめるぷりそ さん
ご応募いただきありがとうございました!
そして、投稿が遅くなって申し訳ございませんでした。
というわけで、以下お品書きです。
①独日
②ASEAN日(R15)
③加日(R18)
では、どうぞ
①シークレット・エデン(独日)
少しずつ昼が短くなるこの頃
定時過ぎを指す時計の針。オフィスの窓からは薄暗い橙色の光が差し込んでいる
青色光にやられた目に優しいそれは、隣に座る彼のよう
同色の瞳を有する戦友、ドイツさんは画面へ真剣な眼差しを向けていた
二人きりのオフィスに響くタイプ音
僕だけではないと分かる伴奏に癒されて、着々と作業を進めていく
だが、僕にはこれ以上の癒しがあるのだ
キリのいいところまで終わり、呻き声をあげながら伸びをする
同時に訪れる無音
休憩がてらコーヒーでも買いに行こうか。立ち上がろうとしたその時
キュ。逞しく弱々しい手が隣から遠慮がちに袖を掴む
「日本……」
照れで赤らんだ頬、こちらを窺う溶けた飴のような甘く熱い視線
それは、僕らの秘密のサイン
「…ふふ、了解です。じゃ、行きましょうか」
絡めた指に落ちる長い影は”表”の終わりを暗に示していた
繋いだ手を解いて暗い空間に明かりを灯す
質素なベッドが置かれたここは、僕ら専用になりつつある仮眠室
ベットヘッドの近くに腰かける
そして貧相な自身の太ももをぽんぽんと叩いた
「どうぞ」
「ん……」
言われるがままに寝転がる彼
ゆっくりと、頭が太腿に沈む。その重みがなんだか心地いい
こちらを向く彼から眼鏡を外して、ベッドサイドに置いた
指先をそっと、頭へと乗せる。そして、全てを包み込むようにゆっくりと頭を撫でた
「お仕事お疲れ様です」
「いつも頑張ってて、えらいですね」
少し低めの甘い声で伝える労りの言葉は彼のお気に入り
キリッとした目を細めてふにゃりと笑う
「ぅん…」
声にならない、曖昧な返事。その妙な暖かさに満たされるのを感じる
撫でる度、心も体もほぐれるように、”真面目な彼”が解けていく
その隙間から徐々に姿を現す内面は僕しか知らない、”僕だけのドイツさん”だ
事の始まりは忙しいある日
欧州のリーダー的役割であるドイツさんはただでさえ忙しいのに、彼にしかできない仕事が偶々たくさん舞い込んでしまい、疲労困憊だった
今にも倒れそうなのに何故か休もうとしない
そんな彼を心配した僕は何を思ったか仮眠室に連れ込み、無理やり膝枕をしたのだ
そして何気なく、ここでは好きなだけ甘えていいと言った
自分でもなんでこんなことをしたのか分からない
でもそれが彼には効果てきめんだったようで、疲れが一気に取れる、と気に入った彼から、時々こうして求められるようになった
普段真面目でストイックで、皆に頼られる彼が、この時だけはただ静かに、僕に身を委ね、幼子のように甘えてくれる
この姿を知っているのは僕だけ
その事実が言葉に表せないほど嬉しく、優越感を得られる
それに、彼は意外と甘えたなようで、甘やかしてやるとなんとも嬉しそうに笑う
癒される彼に僕も癒されている
互いにとって楽園とも言える、至福の時間なのだ
眉間の力が抜け、目尻が優しく下がってきた頃
のそのそと起き上がった彼が僕を見つめる
「ハグ、してもいいか」
「いいですよ」
ゆったりした動作で大きな体が僕を包み込む
僕も、その心做しか小さく見える背中に腕を回した
頭を首元に埋めて、グリグリと擦る
それはまるで、懐いた飼い猫のよう
いつもの彼なら、こんなスキンシップは絶対にしない
無遠慮な愛情表現に愛おしさが溢れる
「んふ、擽ったいです」
スン、と息を吸うと、満足したようでズルズルと太ももへ戻ってくる頭
首を動かして、何かを催促するように体を預ける
また撫でてほしいのかな
再び頭を撫でつけると嬉しそうに擦り寄せる
無邪気に喜ぶその顔は、初めて出会った幼少期のようで、懐かしさと愛おしさに心が震えた
腰に回る温かい手
脱力したそれは、抱きしめるというより腰に添えているのほうが正しい
「眠たそうですね、ここで寝ますか?」
「ん…そうする…」
「…なぁ、にほん」
眠気に引きづられた緩い声が僕の名を呼ぶ
「おれがねるまで…そばにいて、くれ……」
「元よりそのつもりです」
ありがとう、を全て言い終わる前に、とろんと溶けた瞳が、落ちる瞼に隠されていく
そしてまもなく、穏やかな寝息が聞こえた
なんとも幸せそうな、美しい寝顔
ずっと見ていたいが、眠気を伝染されたからか欠伸が漏れ出る
「僕も眠くなってきたな…」
起こさないよう慎重に頭を持ち上げ、枕を挟む
重みを失った太ももに寂しさを感じるが少しの我慢だ
最後の気力を振り絞って布団を掛け、いそいそと彼の腕の中に潜り込み、胸に頭を預ける
安心するゆっくりなリズムを刻む心拍は子守唄のように僕の眠気を誘った
「ん……おやすみ…」
次はいつ、”僕だけのドイツさん”に会えるかな
またすぐに会いたいな
欲深い意識を沈ませ、彼と同じ所へ向かうのだった
真面目なしっかり者が甘える姿っていいですよね。
以下、かっこいいドイツくんが見たかった方へのお口直しSSです。急いで書いたのでクオリティは低め。それでも良いならご査収ください
******
久々に定時帰りする僕こと日本と、同僚のドイツさん。しかし、少し前から急に大雨が降っており、電車やバスが運休していた
今日中は止まないらしい。でも、明日まで会社にいるのは嫌だ
「どうしようかなぁ…」
無意識に出てしまったらしい溜息に、彼はなあ、と声をかける
「今日、俺の家に来ないか」
「ここからなら俺の家の方が近いだろ」
「いえっ!そんな…急にお邪魔するなんて…」
手土産もお礼の品も無いのに…遠慮する僕に彼は優しく笑った
「遠慮するな。俺たちの仲だろ?俺が日本を家にあげたいんだ」
「仲のいい同僚、まして彼氏のお願い。優しい日本なら受け入れてくれるよな」
「…ほんと、僕の扱い方が上手いですね」
全てを見透かされる事が悔しくて、じとりと視線を寄越してみる
だけど彼は余裕そう。何年一緒にいると思ってるんだ、と口角を上げる姿が格好よくて、ずるい
「お言葉に甘えて、一晩お世話になります」
「よし、じゃあ急いで帰るぞ」
着いたのは、二人暮しとは思えない大きな家
彼の家に泊まるのはとても久しぶりでなんだか緊張する
お風呂と服を借りて、濡れたシャツは洗濯してもらった
替えの服は小さめのを選んでくれたらしいが、それでもブカブカで悔しい
お礼にとご飯を作って、一緒に食べる
その後、ソファで寝ようとする僕を止めて彼のベッドに連れ込まれた
「なんで一緒のベッドなんですか!?」
「何言ってんだ。いつも同じベッドで寝てるだろ」
「うっ、そりゃぁそうだけど…」
彼とは、たまに会社で寝ることもある
でも、彼の服を着て、彼のものに溢れた、彼の香りがする部屋で寝るのは違う
彼に包み込まれているようで気恥しい
だけど、そんな言い訳を彼が許すはずもなく…
正面から強い力で包み込まれてしまっては、大人しく言うことを聞くしか出来なかった
同じベッドに向かい合って寝る僕たち。視界の大部分を占めるドイツさんの眠そうな顔に昔の記憶が重なる
「なんか、懐かしいですね」
何年前かも忘れてしまった学生時代
僕とドイツさんとイタリアさんの三人で、よく互いの家でお泊まり会をして、色んな話をしたのを覚えている
自由気ままでお調子者のイタリアさんを真面目でしっかり者のドイツさんが叱り、僕がフォローを入れる
社会人になった今もよく目にする光景を思い出して、ふっと笑みが溢れた
「でも、あなたはあんまり変わらない気がします」
あの頃が大人びすぎていただけでしょうか
からかうように笑う僕へ、彼も同じく微笑む
「お前も変わってないな」
「変な奴を無意識に引き寄せる所とか」
「なっ!?僕はそんなことしてないですよ!」
「お前が気づいてないだけだ。周りが変な奴ってことに」
本当に無自覚ってやつはタチが悪い…と呆れのため息を吐く彼
そんな僕と付き合ってるあなたも変な奴ってことになるけどいいのかと言ってやりたい
そんなこと言ったら何されるかわかったものじゃないから言えないけど
グッと文句を飲み込む僕のことなんて露知らず、大きな温もりが頬を包む
「そうだな、変わったことといえば…」
「親友兼護衛から婚約者になったことか」
唇に触れる、優しいキス。でも、離れゆく瞳には何処か大人の色気を感じる
「あの頃じゃ”こんなこと”出来なかっただろ?」
過去の自分たちに向けているのか、勝ち誇るように笑う彼
ただでさえ格好良かったのに、大人の彼は更なる魅力を纏ってしまった
寝ている僕に隠れてキスをしてきた可愛らしいあの頃とは大違いだ
「さ、もう寝よう。明日も早いしな」
「おやすみ、日本」
「おやすみなさい、ドイツさん」
お返し、とキスを一つ
橙と黒の、愛しさに溶ける瞳が互いに映る
暖かな幸せに包まれて共に夢の世界へとトリップした。
②魅惑の猫耳(ASEAN日、R15)
やけにうるさいアラーム音が耳をつんざく朝、いつもの時間にピッタリ目が覚める
目覚めはいいのに頭が重い。物理的に
もしかしてと頭に触れると、擽ったさで大きな三角形がピコンと揺れた
「はぁ…来ちゃったか」
僕は時々、こうして猫耳が引っ込められなくなる日がある
理由はきっと、耳が常時出現している父の遺伝が強いせいだろう。僕はそう思っている
それは置いておいて…今日は会社を休むしかない
だって、イケメンでもない成人男性の猫耳とか誰も見たくないでしょ?僕だって見せたくないし
それに、有給消化を催促されていたからちょうどいい
急な申請だけど社長の国連さんには事情を説明してあるから許してくれるはず
上司に連絡しようとスマホを手に取る
同時に、ピンポンと鳴る玄関チャイム
…なんだか嫌な予感がする
「日本〜開けて〜」
予想に反して、呑気な声で玄関モニターに映るのは、ASEANさん
最近できた僕の彼氏で、長年の親友
なんでこんな時に…とりあえず、モニターの通話をオンにする
この時、なんで居留守を使わなかったのか、僕にも分からない
「すみません今日は体調が悪いので…」
「えっ!?そりゃ大変だ!看病しなきゃ!」
カチャカチャと音がしたかと思うといとも簡単に開いた鍵
僕が玄関扉を開ける隙もなかった。ピッキングするんじゃない、怖いから
「なんだ元気そうじゃん」
平然と扉を開けて僕の姿を見る
しかし、いつもと違う頭上に気づいて、はわわと目を丸くした
「か、カワイイ…!!!ねぇ、その耳って…」
「……ワケを話しますから部屋に入ってください」
見られてしまっては言い逃れできない
諦めた僕は不法侵入者をリビングへ通すことにした
会社に休みの連絡を入れた後、サボり確定の彼にお茶を出す
理由を聞いた彼は湯呑みを置いて、ふぅん…と思考をめぐらせていた
「なるほどね…確かに加盟国達もそんなこと言ってたな」
「父さんの猫耳バレてたんですか」
「うん。怒られたくないから本人には言わなかったみたいだけどね」
父さん、猫耳のことめっちゃ気にしてるからな…指摘したらこっぴどく怒られそう
賢明な判断をしたと心の中で褒め讃える
静かになった室内。その中で、ASEANさんの手がうずうずと僕に近づく
ああ…そういえば彼、動物好きなんだっけ
「ねぇ日本。ちょっとだけ…触ってみてもいい?」
「どうぞ」
大きな手がそっと、耳に触れる。指が柔らかな毛を掻き分けていく感覚が少し擽ったい
「うわぁ…もふもふ…」
マッサージするように柔く揉み、撫でる心地よい温もりに耳が包まれ、心が満たされていく
気持ちいい。猫になった僕の喉はとても正直だった
「ふふ、ゴロゴロ鳴いてる。気持ちいいんだ?」
「だってASEANさん、撫でるの上手なんですもん…」
「そう?あ、尻尾も出てる」
「耳見られたからもういいかなって」
ウエストゴムの隙間から出現させた尻尾
左右にゆらゆら揺れるそれは、喉と同じく僕の心情が分かりやすく示していて恥ずかしい
付け根から撫であげる手に巻き付くモフモフに気を良くしたのか、愛おしさに溢れた笑みを浮かべる
「白くて細長くて、日本によく似合ってる」
楽しそうな、嬉しそうな。僕の好きな表情を向けられ照れてしまった僕は、ただ彼から与えられる悦に身を委ねることにした
それからというものの、猫カフェにでも来たように存分に撫で、写真を撮り、稲穂の翼で戯れる
久々に猫らしい事をしたからか、この時僕は完全に油断しきっていた
「そうだ!」
「猫になってるなら、これも好き?」
どこからか取り出したのはマタタビ
なんでそんなもの…考える前に目の前へと突き出され、香りが口内へ広がっていく
だめ、近づけちゃ…
「ふにぁ…♡」
「これにも反応するんだ。本当に猫じゃん」
酒に酔ったような、思考が溶ける感覚。獣の本能が彼を求めて指を伸ばす
「あせあん、さんっ…」
上擦った猫撫で声
発情期の猫のような声を自分が出したのかと耳を疑うが、理性を感じない色欲を孕んだそれは紛れもない自分のもの
初めての出来事に頭が混乱する
「っ……♡可愛すぎ…」
どうやら、獣になったのは僕だけじゃななかったらしい
指を絡め取り勢いのままに後ろへ倒された体
黄金色のしなやかな翼が、逃がさないとばかりにベッドを覆う
向かい合わせに密着するせいで、彼の緩く勃った滾りが僕のに擦り付けられ、興奮が止まらない
「ごめん、我慢できない」
「もっとキモチヨクしてあげるから…楽しもうね♡」
タフトを揺らす、熱の篭った甘い音
理性を壊す揺らぎに、僕は本能に飲み込まれた
おまけ
次の日の朝、いつもなら朝食を作りに起床している時間
しかし、今日の僕はまだベッドの中
「い゛でぇ…」
勢いに負け、ニャンニャンしてしまったせいで身体中が痛い。特に喉と尻
こんなになるまでするなんて……待てのできない駄犬かよ
「ね、ねぇ…食べれそうなものある…?」
ベッドのそばで正座する元凶、ASEANさん。眉尻を下げ機嫌を窺う様子は叱られた子犬のようで調子が狂う
「…辛くないのなら」
「わかった!ちょっと待っててね!」
急いでキッチンに向かった十数分後、食欲をそそる香りとともに帰ってくる
手に持ったお椀から一口分掬って口元へと運んでくれた
「ど、どうぞ…」
「ありがとうございます」
適度に暖かいそれを口に含む
舌に触れる鳥の旨みが染み込んだ米が、じんわりと疲れた体に活力を与えてくれる
「美味しい…」
作ってくれたのは、ブブールアヤム
本来のものよりトッピングが少なく、味付けもマイルドになっていて、日本のお粥に近い感じ
これなら傷んだ喉でも飲み込めそうだ
「…ごめんね。つい夢中になっちゃって」
しゅんとしょげる彼
なぜだか幻覚の犬耳と尻尾が見える…やっぱり彼も犬なんじゃないだろうか
こうも素直に謝られると痛みなど忘れて許してしまいたくなる
…まあ、本能に負けてしまった僕にも、非があるかもしれないな。うん
「仕方ないですね…」
「一日、甘やかしてくれるなら…ゆるします」
尻すぼみな言葉に、俯いたくらい顔がバッと上がり、晴れやかになっていく
「…っ!ありがと〜っ!!!」
「言っときますけど!今回だけですからね!」
彼の腕の中で、意味の無いだろう念押しをする
彼の笑顔に絆されてしまう僕のことだ、きっと毎回こんなやり取りをして最後には同じことを言う
さて、”今回だけ”を僕はあと何回言ってしまうのだろうな
…これじゃ、甘やかしているのは僕の方じゃないか
枯れた声で、呆れるように一人笑う
そんな僕を彼は、チェシャ猫でも見たような、腑抜けた表情で見つめていた。
補足:ASEANさんは明るくて優しいけど時々話が通じなくなるタイプ。日本とは長い付き合いで周年記念で専用のロゴ作っちゃうくらい仲良しだそうなので、日本くんが素の塩対応をしている(素を出せるくらい仲がいい)。
ASEANの黄色のマークは稲穂だそうなので収穫期のような黄金色の翼(マークを90°回転させたみたいなやつ)を生やしてみました。
③僕を満たして(加日、R18)
最近、なんだか変だ
お昼休憩中の賑やかなオフィス
目線の先には、兄と楽しそうに笑う日本
笑いすぎたのか、涙が浮かんでいる
グゥと鳴る腹の虫。でも、ご飯は先程食べたばかり
何故だろう。日本をみると、無性にお腹が減る
メレンゲのような純白の肌、黒糖のような濃茶の瞳、シロップのような透明の涙
日本を構成する全てが美味しそうに見える
君は一体、どんな味がするんだろう
舐めて、齧って、咀嚼して
君の味を確かめてみたくなる
静かに暴走する視床下部
口内に溜まる唾液を嚥下する
知らないうちに湧き出た欲望は、もう止められない程に膨れ上がっていた
「日本、ちょっといいかな」
兄と別れ、一人になったタイミング。振り向いた彼はなんだか嬉しそう
カナダさん!と名を呼ばれると、何故かキュンと胸が疼いた
「今日の夜僕の家に来てくれない?」
「君にしか頼めないことがあるんだ」
お願いだよ、と可愛らしく手を握る
「っ!…ふふ、いいですよ。仕事が終わり次第ロビーに向かいますね」
一瞬驚きで赤くなって、すぐに柔らかな笑みを湛える
内容も聞かず二つ返事とは…お人好しすぎて怖い
けど、そのおかげで捕まえることができた
「ありがとう!じゃ、また後でね!」
急いで背を向け走り去る僕に手を振る
最後まで僕は”いつもの僕”みたいに笑えていただろうか
…なんだか、僕が僕じゃないみたいだ
口端が歪な弧を描く
もう逃げられない。君も、僕も
「お邪魔しまーす」
「どうぞ、そこのベッドに座ってて」
来てしまった夜、自分の部屋には僕と日本だけ
うるさい兄は珍しく帰ってこないらしい
運がいいのか悪いのか…
どちらにしろ僕にとっては非常に都合が良かった
ドアが閉まって、後ろ手に鍵をかける
ちょこんと僕のベッドに腰掛ける日本
手を前に組んで、部屋を物色するように視線を巡らせている
緩やかに近づいた僕は、そんな彼の手首を一纏めに掴んでシーツへ縫いつけた
「か、カナダさん…?なにを…」
驚く顔に不安と戸惑いが滲む
まるで、追い詰められた小動物のような愛おしさ
ゾクゾクと奮い立つ本能が、早く喰らえと催促し欲を増幅させていく
「…ごめんね」
最後の理性で絞り出した言葉
でも、それには謝罪の意は無く、あるのは”我慢できるよう努力はする”というお気持ち程度の意志のみ
酷く眩しい琥珀色の輝きが、恐怖に震える瞳を喰らうよう覆い照らしていた
無防備に晒される細い首。頭上から聞こえる制止の声を無視し、その首筋に沿って舌を這わせる
「ひゃっ!?」
「甘い…」
思った通りだ。この味を例えるなら…そう、綿菓子
ふわふわで甘くて、口に含むとあっという間に溶けてしまう儚さがある
けれど、心をも包み込むようにじんわりと広がる優しい甘さは何度でも味わいたくなって、夢中で食いついてしまう
もう一口、また一口、と舌の動きが止まらない。いや、止められない
空いた手でシャツのボタンを外し、素肌を外気に晒す
ほんのり赤くなった肌はルビーチョコレートを思わせて、とても美味しそう
「ね、だめです…ぬがしちゃ…」
「ちょっと静かにしてて」
「んぅ!」
薄ピンクの肌の凹凸をなぞるよう滑る舌
上品な甘さを堪能しているとズボンの中でゴトリと揺れる固い感触
そうだ!メープルをかけてみたらどうだろう
美味しいものと美味しいものを合わせたら美味しいに決まってる。甘さが増して僕好みになりそうだ
ポケットに常備している、メープルシロップの小瓶
蓋を開け、控えめに主張する頂にトロりとかける
敏感な所を襲う未知の感覚に驚いたのだろう
背が仰け反って、見せつけるような姿勢になっていた
「ひっ!!な…なにして…っ!?」
目の前にはてらてらと妖しく輝く赤い果実
暴力的なほど魅力をもつその誘惑に我慢できず、ぱくりと一口に咥える
「んひゃッ!!?」
舌で転がす度硬度を増す小さな粒
それは飴玉を舐めているような感覚で、熱心に溶かしていると、糖の代わりに甘い啼き声が溶け出る
切なく疼くもう片方を摘んでやると、喜びを感じる甲高い声が部屋を埋めた
メープルシロップの味が無くなって尚舐め続ける
…そろそろ舌が疲れてきた
一旦口を離して上に視線を向ける
すると、花の蜜のような発情の香りが鼻腔を吹き抜けた
「はぅ…あ、かな…かなださ…♡」
僕を見つめる、甘く熱い、愛おしい赤ら顔
僕だけを映す日本。心を射抜かれる鋭い感覚
その時、僕はようやく衝動の正体を知った
ああ。僕、日本のことが好きだったんだ
好きだから、可愛いくて仕方ないから、”食べたい”と思ってしまうんだ
知ってしまえば、ストンと腑に落ちる恋心
反対に、新たな事実を踏まえて現実を見た僕はハッと息を飲んだ
……待って。だとしたら…僕、天才かもしれない
日本とメープルシロップの相性は最高
しかも舐めとったあとはトロトロに熟した日本も食べれる。なんて素晴らしいデザートを考えついてしまったんだろう
理性などとうに捨て去った今、恋のステップなんて考えることは出来ない
頭を埋めるのは目の前にある極上のデザートを味わうことばかりだ
じわり、じわりと下へ欲望の輪郭線を描く
汗と蜜でしっとり湿る彼はどこもかしこも美味しくて、胸を高鳴らせる
甘い、美味しい、可愛い、好き
肌に愛を滴らせる度、色んな感情が湧き上がっては混ざっていく
同時に、遅効性の毒のような彼の甘味は、段々と理性を蝕んで思考を鈍らせる
愛情という名の食欲に支配された今の僕はまさに、飢えた獣だ
「っはは。ねぇ、日本」
「僕、お腹が空いてしょうがないんだ。だからお願い、君を食べさせて。君で僕を満たして」
返事も聞かず吐き出した息ごと唇を喰らう
僕の舌に残ったメープルが二人の唾液に混ざる
春の朝、古い神社の境内に漂う桜のような、ノルスタジックで甘い香り
自然を感じる深い甘みと儚げな香りが合わさった繊細な味わいに、舌鼓を打つ
夢中になって貪っていると、彼の細い脚が力無く僕の太腿を叩く
もう限界か。僕らを繋ぐ銀の熱が細く垂れて、プツリと切れる
トロンと潤む瞳を見て、抵抗する力はもうないと判断した僕は手首の拘束を解き、体を下腹部へと寄せた
果物の皮を剥くようにズボンと下着を脱がし、現れたペニス
腹につきそうなほど湾曲したそれは先走りに濡れ、ナパージュを塗った果物のよう
なんの躊躇いもなく亀頭を口に収めるとビクリと震え、甘みが鋭くなった
溢れる塩っぱい雫を舐め取り、裏筋を撫で、竿を優しく扱く
搾り取るよう的確に弱い部分を刺激する動きは彼にとって過剰な快楽だったらしい
数分も持たず華奢な体が大きく跳ねたかと思うと、粘っこい液体が口内に吐き出された
舌を覆う、甘すぎる水飴みたいな、不思議な苦味
飲み込むと喉の奥から甘味がじんわりと広がる。ビターチョコレートのようで、悪くない
「っは…美味しかった」
満腹感にようやく戻ってきた僅かな理性
涙と汗と唾液に塗れた桜色の体に少しの罪悪感を抱く
「ご馳走様。体汚しちゃってごめんね。綺麗にしておくから休んで…」
「……ずるい」
起き上がろうとした腰に巻き付くしなやかな脚
首に緩くかかる腕に引き戻される
一寸もない距離に近づく僕たちの顔
視界を占領するカラメル色の瞳が妖艶に誘惑した
「あなたばっかり、ずるい」
「僕だっておなかが減りました。今度はあなたが、くれる番でしょ?」
「食い逃げは許しませんよ」
奥底で揺らぐ紅の炎
彼を焦がすそれは引火して僕の情欲をもフランベのように焚き付ける
ああ、そう来なくっちゃ♡
「いいよ。君の隅々まで満たすほど注いであげる。最後まで残さず食べてね」
前言撤回。理性が戻ってきたなんて、嘘だ
程々に解かしてねじ込んだ僕の熱
痛いほどに張りつめて、今にも暴発しそうになっているが、いつの間にこんなになったのか、自分でも分からない
ただ一つ言えるのは、ジーパンから取り出した時の勢いの良さは過去一だったことだ
腸液とメープルシロップでいっぱいの、ふわふわトロトロの蜜壷
ぷっくりと姿を現した凝りを亀頭で強く押し潰してやると、ナカがぎゅっと強く締め付ける
早く早くとオネダリされてるみたいでとっても可愛い
「はぁッ♡はぁ……ぅあぁあ!!?」
「ふっ…っはは♡日本、気持ちいい?」
「ん……♡んぉッ!きもちぃ、れすぅ♡ぁあんっ♡」
「そりゃあ、よかった」
僕の腕の中で、僕の手で、あの日本が乱れて僕を求めている
僕の欲望が具現化したような現実に、ここは夢なんじゃないかと錯覚する
「かなださ…ッ、すき、すきッ、れす♡」
そんな僕に、夢じゃないと教えてくれた日本の言葉
回らない口で必死に、懸命に伝えてくれる愛。ブワッと湧き上がる熱に口角が上がる
ほんとに…?日本も僕のこと好きなの?
「っ!!…僕も、日本のこと、好きだよ」
「えへへ…♡りょうおもいだぁ♡」
心底嬉しそうな、最上級に甘い笑み
ハートマークが見えそうな瞳に刻まれた僕も同じ表情をしていて、心がトプトプと暖かいものに満たされていく
こんなに甘い幸せ、日本以外とは絶対味わえないだろうな
「ね、もぅいっかい…きす、して」
「仰せのままに」
再び口腔で繋がる銀の熱
上から下から発せられる淫猥な水音。吐息と肌のぶつかる音と、部屋中に響く激しく甘い揺らぎに脳髄まで犯されているよう
「んあっ♡おくッ♡きもちぃ♡」
「んふふ、トロットロになっちゃって、かぁわいい♡」
動きに合わせて、溝を流れ落ちる汗
塩キャラメルのように甘塩っぱくて、クセになる
ナカを穿ちながら甘味を堪能していると、突如搾り取るよううねりだす壁
強い刺激に、腹に何かが渦巻く感覚がする
「っく、出そう…」
「いいッ、ですよ♡ここに、ぃっぱい、出して…♡」
形の浮き出ている薄い腹を擦る。その光景があまりに煽情的でもう限界だ
腰を鷲掴んで最奥へ叩きつける
瞬間、肉壁へ打ち出される熱い精
同じくして、日本もまた、自身の腹へ精を飛ばした
荒い息が静かな部屋に木霊する
大きな瞳に浮かぶ涙を舐めると甘ったるい味がする
萎えることの無い僕のように、首に回す腕を解かない日本
僕たち、考えてる事は一緒みたい
「こんなもんじゃ、たりないです…」
「…君も大概食いしん坊だね」
「あなたほどじゃないですよ」
彼から触れる二人の唇
脳が溶けるような、背徳の味がした
補足
・砂糖は○麻のように脳内麻薬の分泌に関わるためマイルドドラッグと言われている。依存度や症状が弱いが依存すると大変なことになる。
・”甘味”は強すぎると逆に”苦味”として認識されるらしい。チョコレートを用いて実験していたためカカオマスの苦味が関係している可能性があるが、一説として強い甘みに舌or脳が誤作動して苦味のセンサーまで働いてしまっている、というのがある。
・描写に用いたお菓子は全部砂糖菓子(コンフィズリー)で統一している。日本くんをわたあめで例えたので砂糖に関連するものがいいかなという、ちょっとしたこだわり。
ここで少しお知らせです。
前回(第15話)の陸海空×日の、陸海空サイドのお話と補足解説を追記しました。よければそちらも見に行ってみてください。
コメント
8件
スイマセン見るの遅れましたm(__)m💦 やっぱマイナーなカプはいいですねASEANが犬っぽいのが凄い印象に残りました 書いてくださりありがとうございます🙏 これからもゆったりと頑張ってください
読むのが遅れてしまいました……書いてくれてありがとうございます!😖💕 独さんの大人な感じが私目線新鮮で大好きです✨️✨️ これからもぼちぼち投稿応援してます💪💪🔥
いやあああああ 😭😭😭😭 ここは天国👼🌈💐✨ 十分すぎる甘さすぎて 口の中 乾いちゃったです 🥹🫶🏻️💓 やっぱり 🇨🇦🇯🇵は でろでろ あまあまじゃないとね ‼️ 本当に美味しかった ‼️ ご馳走様でした ‼️