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ちんすこうは一目散に逃げ出した!
「今はまだその時ではない!」(※どの時だよ)
憲兵NPCと戦うのはもっと強くなってからだと言いたいらしい。強くなったら憲兵とも戦うつもりかと内心呆れるサーターアンダギーであった。
さて、町を出るとNPCは襲って来なくなった。あくまでも町の秩序を守るのが彼等の仕事なので町から出ていったおたずね者を追いかけたりはしないのだ。
「ふーやれやれ。それじゃあ早速宇宙船に乗って次の星に向かおー!」
元気よく腕を振り上げ、最初の村に向かうちんすこうだった。
「まだ何かやることある?」
宇宙船は村の外れにあるので襲われないように外から回り込む。その道すがらちんすこうはナビゲーターに確認した。指名手配もされているのでなるべく二度手間のような事はしたくないというわけだ。それなら村に到着する前に聞けばよかったのだが、ここに来るまでその事に気がつかなかった。
「いいえ、やらなくてはいけない事はありませんわ」
(やっておいた方が良いことはありますけど、きっと言っても聞かないでしょうし)
サーターアンダギーは既に諦めの境地に達していた。どうせゲームだし、一回死んでみるのも悪くないだろうなどと、ナビゲーターとしては良からぬ事を考えているのだった。
「ならしゅっぱーつ!」
笑顔で宇宙船に乗り込む。操縦桿といくつかのボタンがあるだけのシンプルなコクピットに座ると、助手席に座ったサーターアンダギーが操作の説明を始めた。
「こちらが離陸ボタンになります。操縦桿を握って、前に引けば船首が上を向き、押し倒せば下を向きます。速度の調整は足もとにあるそのペダルを、横に押すと加速して踏み込むと減速しますわ」
なるべく直感的に操作出来るように簡素化されている。ちんすこうは目を輝かせ、質問した。
「攻撃ボタンはどれ!?」
「言うと思いましたわ。そちらのボタンで使う武器を選び、こちらのボタンでロックオン。操縦桿の上にあるトリガーを引くと発射しますわ」
早速ミサイルを選択し、村の民家をロックオン。
「ストーップ! そこまでですわ」
やるだろうと思っていたサーターアンダギーがすぐにロックオンを外し、止めた。
「えーっ、駄目なの?」
疑問に思うような事ではない。
「当然ですわ。宇宙に出たらいくらでも撃てますから民家に向けて撃つのはやめましょうね」
気を取り直したちんすこうは、躊躇なく離陸ボタンを押した。
「はーい、テイクオフ!」
急加速する事もなく、ゆっくりと浮かび上がる宇宙船に運ばれ、ちんすこうは宇宙空間へと飛び立っていったのだった。
「これで私も宇宙海賊だね」
なぜか感慨深げに言うちんすこうに、そんなに宇宙海賊になりたかったのかと変に納得するサーターアンダギー。
だが、この時のちんすこうは町で出会った道明寺の事を思い出していた。
(やっぱり、夢で見たのと同じ人だった)
サーターアンダギーが半透明である事以外は、夢で見た状況と合致している。ちんすこう、いや赤福はあの夢が予知夢なのだと確信し、何故そうなるのかを知りたいがためにあの夢で得た数少ない情報を元に状況を再現しようとしていたのだった。
(つまり、宇宙海賊になった上で全ての星を回って、星食いのなんたらさんを退治して、宇宙を救う!)
リヴァイアサンである。