テラーノベル
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ドン。
背中が壁につく。
チャンスの腕が壁について、完全に逃げ道がない。
顔、近い。
サングラス越しの視線。
低い声。
「……後悔するぞ」
普通なら。
ここで黙ると思う。
でも。
俺はネクタイをまだ握ってる。
くい。
わざと引く。
チャンスの顔がさらに近くなる。
「エリオット」
警告みたいな声。
でも俺は笑う。
「なに?」
チャンスの手がネクタイに触れる。
離させようとしてる。
でも俺は指に巻き直す。
くい。
「……」
数秒の沈黙。
俺はわざと首を少し傾ける。
「さっきさ」
チャンスが低く返す。
「何だ」
「後悔するって言ったじゃん」
俺は少し笑う。
「でもさ」
またネクタイを引く。
くい。
顔がほとんど触れそう。
「壁ドンしてるのチャンスじゃん」
沈黙。
俺はさらに言う。
「俺、何もしてないけど?」
完全に煽ってる。
チャンスの肩が少し動く。
息が近い。
「……エリオット」
「ん?」
「それ以上言うな」
俺は一瞬だけ考える。
……。
そして笑う。
「なんで?」
わざと。
一番ダメなやつ。
チャンスが低く息を吐く。
その瞬間。
ネクタイをぐっと掴まれる。
今度は俺の方が引かれる。
体が前に引き寄せられる。
距離ゼロ。
声が耳元で落ちる。
「本当に後悔するぞ」
俺はちょっとだけ笑う。
逃げる気ゼロ。
むしろ。
ネクタイをもう一回引く。
くい。
「しないって」
小さく言う。
「だって」
顔がすぐ近く。
「チャンス、まだ本気じゃないじゃん」
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