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語り手:ニウ
どれくらい前かは覚えてないけど、天羽と一緒に海に行った時の話。海に入る前に大人達から海の向こうにはセイレーンという怖いものがいて、きれいな歌声でおびき寄せようとするから海側から歌が聞こえてきたら、絶対に砂浜に戻ってきなさいと言われたけど、そんなことを忘れかけながら海で遊んでた。そしたら本当に遠くから歌が聞こえてきて、急いで天羽を引っ張って海から出た。でも海をよく見ても何も居なくて、天羽に「せっかく楽しんでたのに」って怒られちゃった。聞く感じ歌は海の近くの大きな洞穴ら辺から聞こえてきていたことはわかるけど、全然海に近くなかったんだよね。てんうが洞穴に気付いたらすぐ走ってっちゃって、怖かったけど向かったの。
中を覗いたら、とてもキレイな人魚が、天羽の前で歌を歌っていた。話を聞いてみたら、海で何かに襲われて怪我をして、セイレーンが歌って人を遠ざけていたから、真似していただけらしいの。人魚は私達に自分から取れた鱗をくれて、お礼を言った。仲良くなれそうと…そう思ったその時だった。
後ろからモリが飛んできて、人魚を刺したの。そのまま他の大人もやって来て、どんどん人魚はバラされていった。皆、笑ってた。これで自分は不老不死になれるって、笑いながら人魚を殺したの。それがとても、怖くて恐ろしくて、私はただ天羽を連れて離れることしか出来なかった。人魚の肉を食べれば不老不死になれるっていうでしょ?それを大人達は本当に信じてたみたいなの。あの光景は脳裏に焼き付いて、その日はもう、何も食べる事が出来なかったな。
語り手:リト
いつだったかな。知り合いの家に行った時少し古びたぬいぐるみが1つだけ置いてあった。他は新品当然だったし、一つだけ異質で目に入ったんだよ。その子曰く、自分の嫌な思い出を全て受け止めてくれているらしい。嫌なことがあってもそのぬいぐるみに話して寝ると、嫌なことがあったということしか覚えていないんだって。「まるで嫌なものを全て持って行ってくれる。私の可愛くて従順なぬいぐるみ」とか笑ってて、若干引いた。正直、その子は少しだけ被害妄想があるから、寝て起きたらそれが大したことじゃないと気づくのかもしれない。その後は特に何もなく、たまにそれを横目に見ながら過ごしたんだけどそのぬいぐるみがほつれている箇所を見つけた。報告すると裁縫セットを取ってくると部屋から出ていったんだ。私は何を思ったのか、そのぬいぐるみを手にとって中を覗いてみた。
綿は、なかった。あるのはどす黒いヘドロみたいな液体とも個体とも言えないやつ。ゆっくりと脈打っていて、それが自身の心臓とリンクしているようで怖くなって気付かれないように元の場所に戻したんだ。大切なものへの繊細な作業を邪魔したら悪いからと言い訳をして帰った。その後かな、その子が見違えるように中身が変わった。大人しくて少し被害妄想があった性格が活発でポジティブなものに変わってさ、皆と付き合いやすくなったから人気者になったけど、なんだか不気味だった。まるで中身が入れ替わったような、そんな風になったその子のぬいぐるみはまだほつれてて、覗くと少し赤くて脳のようなぐちゃぐちゃしたものが蠢いていた。
語り手:フミト
宗教勧誘ってあるだろ?神を信じますかってやつ。俺もそれに捕まってさ、めんどくさかったから適当にあしらってたんだけど中々ひかなくって。困ってたらたまたま先生がいて助けてくれたんだ。先生は元々宗教一家だけど、勧誘者の話を一通り聞いてついてっちゃったんだよ。巻き込んだ手前、罪悪感で俺もついてった。正直説教とかよくわかんなかったわ。終わってくたくたになってたら家に帰って勉強しなさいって言われたんだけどさすがに気になっちゃって、先生は宗教に入ってるのに何で来たんですかって。そしたら先生笑ってさ「私の宗教はしつこい他宗教に関係するんです」って言ってた。他の宗教を調査して信者を引き抜くのか、賢いなって感じたよ。
後日先生から呼び止められて、俺のお陰で先生の宗教が上手くいったとかなんかでカニをお裾分けしてもいいか聞かれた。カニはテンションあがったけど、何故か薄気味悪く感じて、直感で断った。勧誘してきた奴と違って先生はちょっとだけ残念そうな顔したけど、それっきり何も言わなかった。
その後さ。先生捕まったんだよ、宗教ごと。なんでも人肉を食ってたみたいで死体なんとか罪で逮捕されてた。なんかわかりづらかったけど、「自分達は罪の子で、その罪は報われはしないが健全者を脅かす同胞を取り込むことで罪は凝縮され周りの人を罪から守ることが出来る」っていう宗教らしい。細かくは違うかもしれねぇが知るかそんなん。
…少し話変わるけどさ、人が人を食べることってカニバリズムって言うよな。