視界に映るのは、鮮やかな桜ではなく、車の窓に描かれた雨粒の模様。
絵に描かれたような入学式とはかけ離れた雰囲気がそこにはあった。
新しい制服に身を包みどんな青春が待っているのだろうと胸を踊らせている私、花沢夢月
。
小さい頃から少女漫画を読んで育った私は、彼氏という存在に大きな憧れを抱いている。
友達からは「モテるでしょ?」と言われるが、それは全て世辞だ。
彼氏がいたことも、告白されたことすらない。
高校ではいい恋愛ができるかなーなんてことを考えながら玄関へ 向かう。
玄関にはクラス名簿が張り出されていた。
クラスは全部で六クラスあり、一組から順に目を通した。
二組に仲の良い男子が1人。五組に親友が2人。そして、6組に私の名前があった。
中学が同じだった子は多かったが、あまり関わったことのない子が多く、友達と呼べる子はこの三人ぐらいしかいない。
再度確認し、私はしばらくその名簿を眺めていた。
すると、不思議な感覚に襲われた。
「松岡、、信介、、」
知り合いに“松岡信介“という人はいないが、知っているような感覚があった。
いくら考えても知り合いにはいなかった。
考えていても埒が明かないので、 不安とこの感覚を抱きつつも 自分の教室へ向かう。
案の定クラスには知ってる顔はほとんんど無かった。
居心地の悪さを感じながら式典が始まるのを待つのかと思ったが、 時間があり、座っているのも暇なのでお手洗いに行こうと教室をでる。
お手洗いは新入生が集まり混んでいた。
「あっちにもありますよー!」
と先生が誘導していたので、私はそっちへ行くことにした。
前にはショートカットとロングヘアーとポニーテールの 3人女の子が歩いていた。
そのうちのショートカットの子が後ろを向き目があった。
「一緒に行く?」と声をかけてくれた。
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます…]
ショートカットの子は飯田夏希 。ロングヘアーの子は浜名夕姫。ポニーテールの子は木嶋聖名。と教えてもらった。
「クラスはー?」
と気さくに夏希が話を切り出す。
「6組だよ。3人は?」
「うちと夏希は6組だよ。」
「同じなんだ!よろしくね!」
「うわーーーうちだけ5組。」
聖名が嘆いた。
私の方はまさかのクラスメイトを発見し、嬉しくなった。
3人でお手洗いを済ませ、再び教室へ向かった。
数分が経ち、私たちは体育館へ移動した。
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