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「今日は楽しかったね」
帰り道。
のあさんが微笑む。
「うん、めっちゃ楽しかった!」
ゆあんくんも元気に答える。
「また来たいね」
「今度はもっと人少ないとこがいいな」
軽い会話が続く。
でも——
「……」
どこか、少しだけぎこちない空気。
「……ねぇ」
ぽつりと、ヒロくんが口を開いた。
「うり」
「ん?」
「さっきのことなんですけど」
「……」
うりは少しだけ目を細める。
「何?」
「慣れてますよね」
ストレートな言葉。
「……は?」
「人を止めるのも、空気を変えるのも」
ヒロくんの目は、真っ直ぐだった。
「普通じゃないです」
その一言。
「……」
一瞬、沈黙が落ちる。
「何言ってんだよ」
うりは笑った。
いつもの調子で。
「ただの偶然だって」
軽く流そうとする。
でも。
「じゃあ」
ヒロくんは続ける。
「もふくんも、です」
「……!」
ゆあんくんが息を呑む。
「昨日も今日も」
「異常に冷静すぎる」
「まるで——」
一瞬、言葉を止める。
そして。
「慣れてるみたいに」
静かに言い切った。
「……」
空気が、止まる。
「……違うよ」
先に口を開いたのは、もふくんだった。
優しい声。
いつも通りの、落ち着いたトーン。
「ただ、巻き込まれたくないだけ」
「それだけだよ」
にこっと笑う。
「……」
ヒロくんは、何も言わない。
ただ見ている。
「……そう、ですか」
それ以上は追及しなかった。
でも。
納得したわけじゃない。
「……帰ろ」
うりが軽く言う。
そのまま歩き出す。
自然と、みんなも続く。
―――
シェアハウスに戻って。
「疲れた〜」
「今日は早く寝よ」
それぞれが部屋へ向かう。
でも。
「……」
ゆあんくんは、少しだけ立ち止まった。
「ヒロくん」
小さく声をかける。
「どう思う?」
「……」
少し考えてから。
「隠してますね」
はっきりとした答え。
「やっぱり……」
「ただ」
ヒロくんは続ける。
「悪いものではない気はします」
「え?」
「なんとなく、ですけど」
そう言って、視線を逸らす。
「……でも」
小さく呟く。
「知らないままでいいとは思えない」
その言葉。
「……」
ゆあんくんも、何も言えなかった。
―――
その頃。
「……」
もふくんは、部屋の中で一人座っていた。
静かな空間。
外の音も、ほとんど聞こえない。
「……バレてきたね」
小さな声。
独り言。
「そりゃそうだろ」
後ろから、うりの声。
いつの間にか、ドアにもたれている。
「隠す気なさすぎ」
「……そんなつもりないよ」
もふくんは苦笑する。
「でもさ」
うりは少しだけ真剣な目になる。
「そろそろ来るぞ」
その一言。
「……」
もふくんの表情が、ほんの少しだけ変わる。
「……うん」
静かな返事。
「分かってる」
その目は——
さっきまでとは違っていた。
「……もう関わらないって決めたのに」
小さく呟く。
でも。
「無理だろ」
うりは笑う。
「俺らだし」
「……」
否定しない。
できない。
「……とりあえず」
もふくんは立ち上がる。
「今は、普通に過ごそう」
「はいはい」
軽く答えるうり。
でもその目は——
どこか楽しそうだった。
そして。
その“普通”は。
少しずつ、崩れ始めていた。