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「……週末。デートの約束、忘れていませんよね?」
「はい。……すごく、楽しみにしています」
私が答えると、凪さんは満足そうに微笑んで、私の手をもう一度強く握りしめた。
幸せな余韻に包まれながら、午後のオフィスに戻る。
デスクに座ると、視界に入るすべてが、昨日までとは違って輝いて見えた。
ふと見ると、キーボードの隣に一通の封筒が置かれていた。
差出人の名前はない。
(……え?)
一瞬、鼓動が速くなる。
けれど、封を開けて中から出てきたのは、想像していたものとは全く違うものだった。
それは、一枚の美しい風景画のポストカード。
そこには、凪さんの端正な字でこう書かれていた。
『お疲れ様。午後の仕事も、あなたのペースで頑張ってください。週末、あなたに一番似合う場所へ案内します。』
カードからは、微かにあのシトラスの香りがした。
私はそれをそっと胸に抱きしめ、誰にも見られないように、小さく微笑んだ。
私の凍りついていたパレットに、今、新しい色が、一滴ずつ、優しく溶け込み始めていた。